第16話 模擬戦④

「何でそんなのやらなきゃいけないの?ワケ分からないんだけど」


 模擬戦。


 いきなりそんなことを言ってきたアイリスに、わたしはそう聞いた。

「お前の腕がどれくらいか見てやるってんだよ。噂のエース様のよ」

「イヤ。お断り」

 アイリスの言葉に、わたしは、即座にそう答えた。

『何でそんなのやらきゃいけないのよ。演習とかじゃあるまいし』

 どう考えても、模擬戦なんて、彼女が勝手に言い出してることだ。正式な許可があるとか、そんなのじゃない。絶対。

『そんな模擬戦なんてやる意味ない。何より』


 目的が叶わないようなこと、やる意味なんて全然ない。


 すると。

「アイリス、ちょっと早すぎない?」

 レイナ少尉がそう言うと。

「別にいいだろ?どうせやることになるんだろうし」

 アイリスがそう言ってきた。まぁ、訓練とか演習とかでやることになるよね。

『…そういう時ならやるけどね。わたしも…』

「…確かにそうだけどさ…」

「もういい?…わたし、宿舎を見て回りたいんだけど…」

 わたしがそう言うと。

「んだよ。逃げんのかよ?」

 ピクッ。


 逃げる?逃げる?


「…そんなんじゃないわよ…」

 わたしは、少し強めな声でそう言った。

『…これは大丈夫。さっきのよりはマシだから…』


 …だけど…。


『やっぱり何かイラッとする。彼女の口調聞いてると』


「とにかく。わたしはそんなのやらない。演習とか訓練で、いくらでもやれるんだし」

 わたしがそう言うと。

「ケッ!!やっぱビビってんじゃねえのか?おい!!」

「…そんなんじゃないって言ってるでしょ…」


 すると。


「それとも何か?男にチラホラされるみたいなヤツじゃないとやれねぇってのかよ?ええっ!?」


 ドクンッ!!


「やっぱお前、エースって呼ばれていい気になってんだろ?そうやって何人、男垂らし込んで来たんだよ?ああっ?」


 ドクンッ!!ドクンッ!!


「エースって呼ばれてるのを良いことに、顔がいいだけの男と遊んできたんだろ。そうだろっ!!」


 ドクンッ!!ドクンッ!!ドクンッ!!


「ちょっと顔が可愛いからって、いい気になってんじゃねぇぞ!!このビッチ!!」


 カッ!!!


「…ちょっとアイリス…」


「……分かった……。……やる……」


 わたしは、ぐっと手を握りしめると、さっきまでとは違う、強い声でそう言った。

 そして。

「やってやるわよ!!模擬戦!!やってやるわよ!!!」

 わたしは、アイリスを睨みつけて、大声を上げてそう言った。


















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