第10話 メテオ・ビースト③

「こちらです」

わたしを案内していた兵士が、一つのドアの前に立ってそう言ってきた。

『ここが司令室か』

「上坂瑞穂准尉をお連れしました。指令」

兵士がそう言うと。

スゥー。

静かにドアが開いた。

すると。

「通せ」

中から声が聞こえた。

『この声。女の人?』

「どうぞ。准尉」

そう言われたわたしは、そのまま司令室に入った。

「では。自分はこれで」

そう言って兵士は敬礼すると、その場を去っていった。

そしてそれを確認したのか、ピシャッとドアが閉まった。

わたしは、そこから移動すると、司令官とおぼしき女性が座っている席の前に移動した。

『やっぱり女の人。初めてだな。女の司令官なんて。今までは男の人ばっかりだったし』

わたしが、横に荷物を置くと。

トントン。

「それは外しても構わん。私と貴官の二人だけだしな」

そう言って、その司令官は、自分の耳の穴を指で叩いた。

『もしかして、翻訳機のこと?それにこの人、よく見たら、翻訳機着けてない』

「よろしいんですか?」

「ああ。語学は堪能でな。日本語は理解出来るし、喋れもする。まぁ、よく分からないと判断したら着ける。その時は、貴官も着けてもらうと助かる」

わたしの問いに、司令官はそう答えた。

「では。お言葉に甘えて」

そう言うとわたしは、耳に着けてある翻訳機を外して、ポケットに仕舞った。

『こんなこと言ってきた人って初めてだな』

まぁいい。そんなの気にしたって仕方ない。

そして。

「初めまして。本日からこちらに配属になりました、上坂瑞穂准尉です。これからよろしくお願いいたします」

そう言うとわたしは、司令官に敬礼した。

すると。

「ああ。メテオ・ビーストにようこそ。"少尉"」

女性司令官は、わたしにそう言ってきた。この人、ホントに日本語話してる。それに何か上手だ。

『んっ?少尉?』

「あの。司令官」

「何だ?」

「少尉とは、どういうことでしょうか?」

後ろ手に手を組みながら、わたしは司令官にそう聞いた。

「本日付けでだ。既にこれは決定事項だ。貴官が、前にいた部隊の司令官にも伝えてある。こちらに配属され次第、貴官を少尉に昇進させると」

司令官は、わたしにそう答えてきた。

『…そんなの全然聞かされてないんだけど…』

もしかしてあの時、わたしがいた小隊の隊長が、不機嫌な顔してたのって、それが理由?

「嬉しくはないのか?」

「はい。昇進とかには興味がありませんので」

司令官の問いに、わたしは、ハッキリとそう答えた。


『昇進なんかに興味ない。全然』


だってわたしにとって、一番大事なことは。


わたしの目的が叶うこと。


ただそれだけなんだから。


「随分とハッキリと言いきったな。それも遠慮もなしに。仮にも、私は司令官だぞ?」

「翻訳機無しで、日本語を聞いたものですので、つい。申し訳ありません」

わたしがそう言うと

「構わん。それくらいでないと、ここではやっていけんしな」

司令官は、笑みを浮かべてそう言ってきた。

「それはどういう意味でしょうか?」

「すぐに分かるさ。否応なしにな」

否応なしに分かる?ホント、どういう意味?

そして。

「私の名前をまだ名乗っていなかったな。私は特別遊撃部隊。メテオ・ビースト司令官。アルテミア・ディアナ大佐だ」







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