第8話 メテオ・ビースト①
ブーン。
今、わたしが座ってるのは輸送機のシート。
そして輸送機には、わたしのライオット一機が積まれている。
この輸送機が向かっている先は、次の転属先。
特別遊撃部隊。メテオ・ビーストの本部だ。
転属命令が出た、その翌日。
わたしは荷造りを済ませると、宿舎を出て、滑走路に向かった。
既に滑走路には、輸送機が用意され、それにわたしのライオットの詰め込み作業が行われていた。そしてそれが、この輸送機だ。
輸送機に乗り込む際、遠目でわたしを見ている隊長の姿が合った。当然その隊長は、わたしのいた小隊の隊長だ。
こっちも遠目だったけど、隊長はどこか不機嫌な顔をしていた。
『自分が打診して、こうしたんじゃないわけ?何であんな顔してるんだろ?』
そう思ったけど、どうでもいいことだ。こっちとしても、あんな隊長の下にはいたくない。わたしの予想通りのヤツなら。
そんなヤツのところで、目的が叶うなんて御免だ。絶対。
わたしは、その隊長に見えるように、隊長に敬礼した。別に意味なんてない。ちょっとした嫌みみたいなものだ。
そしてわたしが輸送機に乗り込んで、ライオットの詰め込み作業が終わると、輸送機は滑走路から離陸。空へと飛び立った。
で、わたしは今、こうしてるわけだ。
「准尉」
シートに座って、窓から外を眺めていたわたしに、輸送機のパイロットが話しかけてきた。
「何です?」
「聞いたんですけど、准尉って何度も転属を繰り返してるらしいですね。何度目です?」
パイロットが、わたしにそう聞いてきた。
「さぁ、そんなの数えたことありません。まぁ、転属命令が下る日数は更新しましたね」
窓を眺めながら、わたしはパイロットにそう答えた。
「しっかし准尉って、HWMの撃破数凄いんでしょ。皆も言ってましたよ。エースだって」
「そんなの言われても嬉しくないです」
わたしがそう答えると
「だけど凄いですよ。そんな若さで。おいくつなんです?」
「十八です」
「ますます驚きですよ。そんな歳でエースなんて呼ばれるなんて」
「やめてください」
エースなんて呼ばれても、全然嬉しくない。そうなりたくなくて、そうなったわけじゃないんだから。
『…十八歳…。…日本にいたら、大学受験してるかな…』
…いいや…。どっちみっち、日本にいたって、わたしは……。
『…わたしはもう日本には戻らない。戻れない。戻っちゃいけない…』
…だってわたしは、全てを失ったんだから。全てを捨てたんだから…。
すると。
「まぁ、あそこの部隊の人達も凄いらしいですよ。よくは知りませんけどね」
パイロットが、わたしにそう言ってきた。
「そうなんですか?」
「私も噂でしか知りませんけどね。とにかく凄い人達ばかりって話ですよ。だけどあんまり良い噂は聞きませんね。『もうあんな連中とは一緒に戦いたくない』って言われてるらしいですよ」
一緒に戦いたくない?どういうこと?
『味方からそんなこと言われるなんて。何でも屋なんて言われてる理由に、何か関係あるの?』
そして。
「見えてきましたよ。准尉」
そう言われたわたしは、窓から前の方を見た。
『あそこか。わたしの新しい転属先』
そこから見える基地を見て、わたしはそう思った。
独立遊撃部隊。
通称『何でも屋』
メテオ・ビースト。
『あそこでは叶うかな。わたしの目的』
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