第6話 転属命令①
あの戦いから数日。わたしは本部の司令官に呼び出され、司令室に向かっていた。
あの後、敵の襲撃はなく、敵の本陣のあった場所、及び周辺は、完全にこちらの制圧下に収まった。
今の時代で起こってる戦争は、どちらかといえば、大昔の日本の戦国時代のような感じだ。
だけど世界を我が物にしようとか、世界の頂点に君臨しようとか、そんな理由で起こってるわけじゃない。でもあえて言えば、後者の側に近い理由で、戦争が起こって、そして戦いになっている。
経済の発展。それによって起こる国家の発展。そして、それによる各国の経済格差。
大きくなった国家は、他の国を自分たちの傘下、属国に加えるという行動を起こすようになった。
企業に例えると、企業を買収、子会社化。あるいは吸収合併するような感じで、それが行われている。それが国という形に置き換わった。そんな感じだ。
だけどそれに応じる国もあれば、応じない国もある。それによる武力衝突。そして戦争が起こる。それが国と企業との、決定的な違いだ。これが企業だったら、戦争なんか起きない。
だけどそれで、世界大戦に発展するとか、そんなことが起きる様子はない。国にとって重要なのは、国家の発展。どこかの国が、変な欲を出さなければ起きることはない。国がどこかの国の属国になる際の契約事項に、そういったことを禁止する事項が存在する。それは国際条約でも決められていて、それに違反する行為をすれば、国際的に処罰される。そんなことになったら、元も子もない。発展どころか衰退することに繋がりかねないんだから。
前回の戦闘の理由は、属国になることに抵抗していた国との戦闘。だけどあの戦いで、あっちもそれを受け入れるだろう。
元々属国になることには、国民はあまり反対の様子ではなかったそうだ。かなり経済が切迫してたらしいし。反発してたのは偉い人たち。自分たちの利権が失うのを嫌がったのが理由らしい。
『…自分の立場…。そんなのに拘って何になるんだろ。…そんなのに拘ったら…』
わたしは司令室の前に立つと。
コンコン
「上坂瑞穂准尉。参りました」
そう言ってわたしが、司令室のドアを叩くと
「入りたまえ」
その声と同時に、ドアが開いた。
「失礼します」
わたしはそう言って司令室に入ると、司令官が座る席の前に立ち、司令官に敬礼した。
そして、後ろ手に手を組むと。
「配属早々の出撃ご苦労と言いたいところだが、いきなり隊長の許可も得ずに単独行動とは。話に聞いていた通りだな」
司令官が、わたしにそう言ってきた。隊長の時とは違って、冷静な口振りだ。だけど内心は違うだろう。『何をしでかしてくれたんだ』とか思ってるような気がする。
「それで、ご用件は何でしょうか?司令官」
わたしがそう聞くと。
「転属命令だ。貴官には別の隊に移ってもらう」
司令官が、そう答えてきた。
『転属?早すぎない?』
わたしはそう思った。まだここに配属になって、まだそんなに経ってない。しかもあの時のが、ここでの初任務。
『確かに単独行動やらを問題視されて、転属を繰り返してきたけど』
これは早すぎる。今までの最短記録を更新した。
『…あの隊長が言ってきたんだな。きっと。こんなに早くあっさりとそれが通るってことは士官学校出身で、親も相当な家柄ってトコかな…』
…親が偉いから自分も偉い。そう思ってるんだろうな…。
『そういう人なら、こっちからお願いしたい。そんなヤツの下で戦いたくない』
…そんなヤツの下で、目的が叶って欲しくない。絶対。
「で、転属先は?」
わたしは、司令官にそう聞いた。今一番問題なのは転属先だ。最前線に出られないようなところに転属されるのだけは御免だ。その場合は、断固として反対する。
『そんなところに飛ばされたら、それこそ目的が叶わない』
すると。
「メテオ・ビーストだ」
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