第20話ー幕間②ー
――クソクソクソクソッ!
――どいつもこいつもふざけやがって!
とある若い男性が苛立ちを隠そうともせず、肩を切るように夜闇の街中を歩いていた。
あまりの怒気に、すれ違う人々は絡まれない様にと距離を置いた。
そんなことにも、怒り心頭な若者は気付かない。
先ほどのこと、それに釣られてあの日のことを思い返すと、今でも
事実を言っただけじゃないか!
この学校に、アイツらみたいな不良は必要ない!
真面目に通う人達に迷惑になるから俺がわざわざ言ってあげたって言うだけのに!
『そんなことをお前が言う必要はない、さらに言えばそう言うお前の決めつけの方が迷惑だ。二度とするな。そして反省しろ』
だと?
あのアーマー種の野郎……!
上から目線で物を言いやがって!
アーマー種持ちだからって調子に乗ってんじゃねーぞ!
学校に雇われてるからっていい気になって好き放題よくも言ってくれたな!
「……ゆるさねぇ」
ボソリ、と男から声が漏れる。
まるで怨嗟のような、怨み骨髄徹するような、怨念の篭った声だった。
学校の教育者もだ!
ちょっと文句を言ってやったら俺をまるで腫物を見るかのように扱いやがって!
本来なら特待生は俺のはずだったんだ!
それをあの土下座野郎が俺から掠め取ったんだ!
男は地面に八つ当たりするように、ドタドタと地面を踏み締めるように歩く。
あの不良3人があの土下座野郎をこき下ろしたおかげで、やっとあの偽特待生の化けの皮が剥がれたと思ったのに!
せっかくいる価値はあると思ってやったというのに!
それを掌返しのようなアレはなんだ!?
友達みたいに仲良くなりやがった!
本当にダサい!俺だったら恥ずかしくて表を歩けないね!群れていなきゃ何も出来ないクソ雑魚だ!
弱いもの同士寄り添ってれば良い!
そう思っていた。
そう確信していた。
昼間の授業を見るまでは。
あの光景、周囲の反応を思い出すと、一瞬で頭に血が昇るのがわかる。
あの程度……!
あの程度、俺にだって出来る!
確かに、まぁまぁだったのは認めてやる。
思った以上には活躍していたが、それまでだ。
俺なら確実に逃げ切れた!絶対にだ!
なんせ俺のパートナーは幻想種のグリフォン!
アーマー種程ではないが、背に乗れて、空も飛べてさらに攻撃まで可能な最強レベルの魔石生物!
やはり特待生に選ばれるべきは俺だったんだ!
「見返してやる……!」
学校も講師も生徒も全員1人残らずだ!
俺の存在を、俺の強さを認めさせてやる……!
本当に強い奴は誰だったのかって言うのを教えてやる!
男は歩みを止め、口元をニヤリと歪ませる。
男は高笑いをしたまま、夜闇の中に消えていった。
_________________________________
『魔石怪物』
敵性魔石怪物、通称“魔物”。
シンボルエリアにおいて人間に襲いかかってくる魔石生物を分類して魔石怪物と呼ぶ。
彼らは正しく怪物だ。
人類を見れば襲ってくるし、容赦をしない。
故に怪物。
魔石生物と魔石怪物は違う。
魔石生物は我々の味方だ。
新しい人類の友だ。
しかし魔石怪物は敵だ。
新しい人類の敵だ。
しかしそんな敵も、仲間にする事が出来る。
あなたのピンと来る人間がいたら、それは逃してはいけない。
敵ではあるが、怪物ではあるが、我ら人間を理解してくれる個体も必ず存在する。
手段は千差万別。
屈服か、餌付けか、時間をかけるか。
どう手懐けるかは、己で考えて答えを出すことだ。
本書が出来ることは、種別の特性と、性格を教えられる程度のことしか出来ない。
新しい仲間を探すのは、出会うのは君達だ。
その旅路の先に、良き縁を祈る。
参考文献
魔石怪物の特徴及びテイムの手段
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます