バズるを意識しない執筆の心得
星咲 紗和(ほしざき さわ)
本編
執筆を続けるうえで、「バズる」という言葉が気になる瞬間があるかもしれません。大勢の人に読まれ、反響を呼ぶことは、どんな作家にとっても喜ばしいことです。しかし、SNSなどを利用していない場合であっても、「どうすれば多くの人に読んでもらえるか」と考えることは避けがたいかもしれません。これは、承認欲求の一環であり、誰もが少なからず抱く自然な感情です。
しかし、私が思うに、執筆活動において「バズる」ことを最初から目標にしてしまうと、本質的に大切な部分が見えなくなるリスクがあります。書き手としての一番の目的は、自分の言葉や考えを表現し、伝えたいことをしっかりと伝えることではないでしょうか。そのプロセスの中で、読者が共感し、広く読まれることが結果としてついてくるものです。だからこそ、「バズる」ことを意識しすぎない姿勢が大切だと考えます。
承認欲求と執筆のジレンマ
承認欲求とは、他者に認められたい、評価されたいという感情です。この感情が強くなると、自分の書く内容やスタイルが「読者にどう思われるか」に過剰に左右されるようになります。たとえば、批判されるのが怖くなり、無難なテーマを選んだり、読み手に媚びたような文章を書いたりしてしまうことがあります。
私自身、何度もこのジレンマに直面しました。特に、自分の作品があまり読まれなかったり、期待していたほどの反応が得られなかったりすると、「もっとウケを狙った方がいいのだろうか」と考えたことがあります。しかし、そのたびに感じたのは、作品が自分自身にとって満足いくものでなければ、たとえ読まれても意味がないということです。
「バズるかどうか」はコントロールできない
実際のところ、どの作品が注目されるかは予測が難しく、半分は運に左右される部分が大きいと感じています。これは、SNSを利用していなくても同じことです。自分が自信を持って書いた作品が思ったほど読まれなかったり、逆にあまり期待していなかったものが多くの読者に響いたりすることがあります。ですから、あまり「バズるかどうか」を意識せず、まずは書きたいものに集中することが重要です。
「バズる」ことにこだわりすぎると、書き手は自由な発想を失いがちです。自分の書きたいテーマやスタイルを優先するよりも、「このテーマは読者にウケるだろうか」とか「批判されるかもしれない」という不安にとらわれ、結果として本来の自分の表現が抑え込まれることがあります。それでは、長期的に見てクリエイティブなエネルギーが枯渇してしまうでしょう。
書くことで自己を探る
では、「バズる」を意識せずに、どのように執筆に向き合うべきでしょうか?私はまず、自分が本当に書きたいテーマを見つけることが大切だと考えます。それは、読者にどう思われるかよりも、自分自身が何を表現したいのか、どのような考えを伝えたいのかを優先することです。書くことは、自分の内面を掘り下げ、考えを整理する作業でもあります。そのプロセスで、自然と読者に響く内容が生まれることが多いのです。
また、継続的に学び、知識を蓄えることも重要です。新しい知識や視点が加わることで、書ける内容や表現の幅が広がります。多くの情報をインプットしつつも、書く際にはそれを自分なりの視点で消化し、自分らしい言葉で表現することが必要です。このように、自分自身と向き合いながら書くことで、文章に深みや独自性が生まれます。
執筆は長期戦
執筆活動は短期的な結果を求めるのではなく、長期的な視点で取り組むべきものです。一度に多くの読者に読まれなかったとしても、それが今後の作品の成長や、より良いものを生み出すためのステップになることがあります。文章を書くことで少しずつスキルを磨き、より豊かな表現力を身につけていくことが大切です。
また、自分の作品に対して誠実であり続けることが、最終的には読者に評価される要素になるでしょう。表面的なウケ狙いではなく、深く考え抜かれた内容や、真摯な姿勢が感じられる文章は、長い目で見れば必ず評価されます。自分が納得できる文章を積み重ねていくことで、少しずつ読者との信頼関係が築かれるのです。
結論
執筆活動において、バズることを過度に意識する必要はありません。もちろん、多くの人に読んでもらいたいという気持ちは理解できますが、それよりも大切なのは、自分が書きたいことに正直であることです。「バズるかどうか」は予測できないものですし、それをコントロールすることもできません。それならば、書くことそのものを楽しみ、常に自分自身と向き合い、表現の幅を広げていくことに集中すべきです。そうしてこそ、真に価値ある作品が生まれ、結果として多くの人に届くのではないでしょうか。
バズるを意識しない執筆の心得 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92
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