第44話『光と闇に彷徨う二人の王子』
モルデールの町は朝を迎えた。朝から町は、ホグゴブリンたちは太鼓を叩き、タンクホルムに
ハルデン家の二階の窓から顔を出し領民に顔を見せた二人を町の住人と共存するホブゴブリンは、
住人にモルデールの勝利を伝えたアムと景男は、窓を閉めると二人顔を見合わせた。
「ポジラー様、本当にこの勝利を喜んでいいのでしょうか?」
景男は、隣の部屋の扉を見て、「敵も味方もアリステロスさんの復活の呪文で、シリアスさんを除いて、皆、生き返った。でも、シリアスさんは出血多量で生死の
「でも、ポジラー様、この度の戦は、ヴァルガーデンの
と、そもそもシリアスとの
「そうかもしれないけど、アムちゃん。僕らは、モルデールの盾になってくれたシリアスさんの回復を願おう」
隣室で、青い顔してベット寝かされているシリアスを、
部屋の隅に陣取るヴァルダーが、レオン、セリーヌ、アランの騎士団長に不満を漏らす。
「お前たち、モルデールの女領主アムと、ヴァルガーデンの王子シリアス様の婿入りは、すべての
侵略軍の
「ヴァルダー様申し訳ない。我らは誰も
ヴァルダーは、アランを
アランは、口を真一文字に
黙って聞いていたセリーヌが、「ヴァルダー様、この度の戦は”王の槍”様もご
ヴァルダーの眉が
「トリスタンも承知しただと! あいつは”王の槍!の役目をどのように
セリーヌは、
「トリスタン様ももちろんダークス卿に
ヴァルダーは、
窓から陽射がシリアスを照らした。
マリーナは、わずかなシリアスの表情の変化に気がついて、眠るシリアスの胸元の手を力強く握った。
「シリアス様! シリアス様! お気を確かに!」
シリアスは、
「若様が、お気を取り戻されたか!」
ヴァルダーが、3人の騎士団長を押しのけて、シリアスの傍らに駆けつける。
シリアスは、まだ
シリアスは、声にもならない
マリーナは、今にもあふれ出しそうな涙を堪えて、シリアスの手を強く握る。
「シリアス様……」
シリアスは、今にも意識を失いそうな弱さながら、指先を少し動かしてマリーナの手を握り返す。
ヴァルダーは、大きく頷いて、「若様、よくお戻りになられました」と、二人の握った手を強い力でしっかりと包み込んだ。
その頃、ハルデン屋敷の地下にある薄暗い
「残りの金は、後日、お前がモルデールのド
牢番は、ブラックが隠し持っていた金貨を
ブラックは、牢番の腰から短刀を引き抜くと、そのままグサリと牢番の背中を刺し殺した。
「人間は、
と、背中を刺された牢番を暗い足元に押し飛ばした。
「おい、その声は、ブラックではないか? 私だヴァルガーデンの正統なる皇太子のレオだ。すぐに助けてくれ!」
ブラックは、牢番の死体の腰から
そこには、目隠しされ、後ろ手で
「これは、これは、偉大なヴァルガーデンの皇太子レオ様ではございませんか。このような所でまさか再会するとは夢にも思いませなんだ」
「ブラック、頼むオレを助けてくれ!」
ブラックは、少し間をもって、「もちろんです」と答えたが、牢番から得た鍵をジャラジャラ鳴らすだけで、一向にレオを助け出す素振りを見せない。
レオは、あらぬ方向を見て、「ブラック。私を助けたら好きなだけ金をやろう」
ブラックは、返事をせず鍵をジャラジャラ鳴らす。
レオはまた違う方向を見て、「そうか、ブラック、お前はセリーヌに想いを寄せていたな。よし、金とセリーヌをくれてやろう」
ブラックは、鍵を鳴らす手を止めて、「レオ様、ヴァルガーデンへ共に戻りましたら、この
レオは、目隠しのままブラックの声のする方を向いて答えた。
「ああ、ブラック、お前は今からヴァルガーデンの皇太子レオ・ストロンガーの”王の槍”だ。好きなだけ、金も女もくれてやろう」
と白い歯を見せた。
「このブラック・シャドウリーフ、この日よりレオ様を主と仰ぎ忠誠を誓います」
そう言って、レオが囚われている牢屋をガチャリと開けた。
つづく
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