第9話(④ー2)魔法と雷アムとアリステロスの戦い

 ズーン!


 デリカシーがまったくいヴァルダーの言葉に、シリアスは、うつむいてそでで目をかくした。


「ヴァルダーそれを言うな! シクシク……」




 シリアスとヴァルダーの主従しゅじゅう尻目しりめに、ハルデン家の主従は自論じろんをぶつけて真向まっこう対立して、一触いっしょく即発そくはつしそうだ。


 ビリビリ、ビリビリビリ!


「アリステロス、許さぬぞ!」


 アムは、アリステロスの景男への発言にいか心頭しんとうだ。


 バハハハハハハーーーー!


 腕を掴まれた景男はすっかりアムの電流で、感電し、口を開けて小刻こきざみにふるえながら硬直こうちょくして気絶きぜつしている。


 アリステロスは、アムの電流と怒りに、一歩も引く素振そぶりをみせない。それどころか、長い白髭しろひげをなでながら、余裕よゆうたっぷりに、魔法使まほうつかいのローブのふところから、小振こぶりな杖を取り出した。




 ヴァルダーは、ワクワクとたのしそうに「若様、タンクホルムさんひと評判ひょうばんのアリステロスと、雷神らいじん家系かけいで、かみなりの力を嫁御よめごとの喧嘩けんかは、見ものにございますな」といくさでも見るように楽しんでいる。


 シリアスは、「シクシク……、シクシク……」うつむいて泣いている。




 アムは、後ろがみかれるように、感電した景男を床にかして、「ポジラー様、あなたとの愛をつらくため、私は一歩いっぽも引きません!」


 アリステロスは、余裕よゆうで、ローブの足元を動きやすいようにはらって、「姫様のおさな時分じぶんを思い出しますなあ」とおもいをめぐらす。


 ビリッ! ビリビリッ!


「アリステロス、覚悟かくごなさい‼」


 アリステロスは、余裕よゆうで、ちゅうに文字でも書くように、片手で杖を走らせて、「姫様、おいでなさい!」と稽古けいこでもつけるように、顎髭あごひげをなでる。


 ビビビビビッ!


 いきなり、アムの指先ゆびさきから、電撃でんげきはなたれた。


 むかつアリステロスは、電撃が走りくる宙に、杖でクルンとまるを書いた。すると、空間くうかん魔法陣まほうじんたてあらわれて、アムの電撃を無効化むこうかする。




 ヴァルダーが、シリアスに語りかける。


「若様、アリステロスの魔法をよく見ておくのですぞ、私が若い頃、戦場せんじょうでアヤツの魔法になんども苦しめられました。それが、今や我らの味方をしてくれておりますぞ」


 シリアスは……、「シクシク……、シクシク……」先のヴァルダーの言葉を引きずっている。



 アムと家宰かさいのアリステロスが喧嘩けんかしていると、ハルデン家のもう一人の重臣じゅうしんマックスの元に、若い騎士が息を荒らしてけ込んできた。


「マックス様、タンクホルムとうげに……」


 マックスは、報せに目を見開みひらいた。「姫様、アリステロス様、急報きゅうほうにございます。タンクホルム山を越え、教会あたりで、ホブ・ゴブリンの群れが押し寄せ、現在げんざい、シリアス様の幻影げんえい騎士団きしだんと交戦中でございます」



 つづく
























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