第6話(③ー2)予言の再来、ポジラーとアムの運命

「ポジラー様、ポジラー様……アリステロス! ポジラー様は、こんなに血を吹いて、シリアス様に殴られた場所が悪かったのでしょうか?」


 と、アムはアリステロスの判断を仰ぐ。


 アリステロスは呆れたような顔をして言った。


「こ奴は、ただのスケベ―なのでありますよ」


 すると、アムが真剣な顔をしてアリステロスをたしなめるように言った。


「これ、アリステロス。この方は、ハルデン家の始祖しそポジラー様の生まれ変わりなのです。あなたも見たように、我が家に伝わる預言書よげんしょのとおり、『ある日、突然とつぜんあらわれて、ハルデン家の娘のくちびるうばう』とあるように、まさにそのまま現れました。それに、ポジラー様に瓜二つ、これは、偶然ぐうぜんではありません」


 アリステロスは、冷静に、まゆをよせ、「しかしですな、預言書は尊重そんちょうしますが、現在いま、我がハルデン家は、いち地方領主ちほうりょうしゅ、先代のお父上・グレゴール様、奥方のセシリア様を同時に失い支配力しはいりょくがおとろえ、領内にはゴブリンが侵入してくる現状を考えますと、大国たいこくストロンガー家の妾腹めかけばらとはいえ嫡男ちゃくなんのシリアスとその騎士団きしだんの力をかりて防備ぼうびかためられた方が……」


 アムは、アリステロスに顔をつき出してにらんだ。


「アリステロス、あなたは、私がシリアス様みたいなキザで陰気いんきな性格の男はきらいなの知ってるでしょう!」


「しかしですな、ここまで進んだ縁談えんだん反故ほごにするのは、ダークスきょうの怒りを買うやもしれませぬ」」


 アムは、「モーッ!」と口をとがらせて腕をピンと伸ばして、「なによ、領主りょうしゅの私の決定に何か文句もんくでもあるの!」


 と、言ったとき、アムの体が一瞬いっしゅん、光を放ったように見えた。アリステロスは何かにおびえたようにアムの機嫌きげんをとって、「いいえ、私は、何もそのようなことは……、はっはは、それでは私は、ポジラー様が次のお目覚めまで下がらせていただきます」


 と、部屋を逃げるように出て行った。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る