第38話『ミラクル・ポジラー』
アイアンウルフ峠の関所で、景男の濡らした
レオンに剣の柄を差し出された景男は、「ジャスト・ア・モーメント!」とレオンを落ち着かせるように、
レオンは、一騎打ちの舞台が整う段にいたっても、
「お前が何者かは関係ない。今、大事な仲間を全員失った。この自分の
仲間を失ったレオンの心はもはや
景男は、仕方なくレオンの差し出す剣を掴んだ。が、「ちょっと、待って!」と剣を振るってみるが、現代に生きる景男は、何かの間違いで異世界に来ただけで、
その後は、就職に失敗し、実家でニート暮らしだ。20代前半は、母親が晩御飯を作ってくれていたが、後半になると顔を合わすと将来を心配して「
ここに来て景男は思った。
景男は、
「あれ?」
気がつくと景男は並みだがあふれていた。
レオンが、景男の涙に何か思いいたる物を感じて問うた。
「お前、国に愛する者でも残して来たのか?」
景男は、涙を流しながらレオンの優しさに訴えた。
「オレは、このモルデールに来て、たまたま、戦いに
と、
レオンは、大人になっても子供のような
レオンは、景男に
景男の死んだような顔に花が咲いた。
「えっ、えっ、ホントに見逃してくれるの?」
レオンは、静かに頷いた。
「ああ、オレにも愛する女がいる。愛する女に愛を伝えず死ぬことの切なさまで殺せやしない」
景男は、レオンに最敬礼して、その場を去ろうと、2、3
「ガビーーーン!」
ここは、人一人が
見張り台で様子をうかがう、アムとマックスとサンチョに、門を開けるよう訴えてみたが、返事は、モルデールの細い
「……やっぱり、戦うしかないのね……」
仕方なく、景男は細い長剣を取りレオンに
キーンッ!
レオンは、いきなり抜刀すると、一撃で景男の細い長剣を弾き飛ばした。
「オレの同情も無駄になったようだな。命を奪う前に、名前だけ
景男は、がっくり肩を落とし、「オレは、
その名を聞いてレオンの顔色が明らかに変わった。まるで、
「今、名をポジラーと申したか?」
「うん、モルデールの人はみんなオレをポジラーと呼びます」
すると、レオンは両腰の剣を
「私のレッドウルフ家、同僚のセリーナのブルースカイ家、別動隊で、モルデールの町に進軍するホワイトホーク家の三家は、ヴァルガーデンのストロング家に仕える以前、古き伝説によれば、三家は皆、先祖がポジラーに命と領土を救われた
と、そこに、馬上で巧みに矢をつがえたセリーヌが、美しい白い顔を
「おのれ、よくもレオンを!」
セリーヌが、景を目掛けて、矢を放つ。
グサリッ!
矢は景男の胸に命中し、あっけなく
「レオン、無事だったか」
セリーヌは、景男に跪くレオンを見つけ、何やら自分の
「セリーヌ、何ということを、この方は、我らの先祖が命を救われた伝説の冒険者ポジラー様だぞ、今すぐ我らはモルデールに降伏して、恩返しをせねばならない」
セリーヌは、レオンの言葉が信じられないと言った表情で問い返した。
「まことに、こやつはポジラーなのか」
レオンは、セリーヌに頷き、確かめてみようと、関所の前まで行って、見張り台で見守るアムたちに問いかけた。
「モルデールの者よ。こいつは真にポジラーなのか?」
アムが、胸に矢が刺さって仰向けに倒れた景男をすぐにでも助けに行きたい表情で答えた。
「その方は、ハルデン屋敷にある先祖、ポジラー様と
アムの言葉を聞いたレオンは、セリーヌに確認するように頷いた。
セリーヌは、先祖の恩人を
「こやつが、真の伝説の男”ポジラー”であれば、私の矢などで射殺すことなどできまい。その証拠に、
ムクリ!
景男が、ゾンビのように上半身を起こした。
「危ない所だった。用心のために胸に薪を一本隠し持っていて助かった」
セリーヌは、目を大きく見開き、レオンを見た。レオンも目を見開いて大きく頷いた。
「この強運は、正しく伝説のポジラーの物。我らは、奇跡を目の当たりにした。今こそ、先祖の借りを返す時だ」
と、レオンとセリーヌは、景男の前に跪いた。
景男は、何のことか、イマイチよく理解していないが、レオンとセリーヌの様子から、判断し言葉を次いだ。
「レオンさん、あなたの騎士団は敵だから罠に
レオンは、景男に言葉に
「よし、これで、ここの話はついた。シリアスさんに任せたモルデールが心配だ。すぐに、みんなで町に戻ろう!」
つづく
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