第35話『再熱するシリアスとマリーナの胸の内』
マルサネス川を源流のタンクホルム山へ
レオが率いるヴァルガーデンの『
ヌルリ!
川底のぬめりでプレートアーマーで固めた『白鷹騎士団』団員が、足を
オルカンが、「だから、水辺には鉄は不向きだと言ったであろう。これだから都の人間はダメなのだ」と呆れ顔で
若いレオは、生れてはじめての戦で、総大将の任についている。しかも、母と
「母上と
レオがバケツに水を入れたように重いプレートアーマーで自力で起き上がれず、溺れる団員に近づいて、
「レオ様、何ということを!」
血相を変えてアランが、団員を抱き起し、「すぐに手当てを!」
駆けつけた救護班がヒーリングの魔法をかけるが、傷口が
アランが、
「なんだ、ホワイトホーク、総大将の私のすることに文句でもあるのか!」
と、切れ長の一重で
パチンッ!
そこへ、マリーナが進み出て、いきなり、レオの
「レオ、あなたはヴァルガーデンの
レオは、ダークスのような
「マリーナ!」
父・オルカンが、レオに張り飛ばされ、川に倒れ込んだマリーナを抱き起し、レオを睨みつける。
レオは、悪びれもせず、さも当たり前のように「私は未来のヴァルガーデンの王になる人間だ。その高貴な人間に手を挙げるとは母と言えども
オルカンは、マリーナの背中を抱き、「マリーナ大丈夫か!」と孫の
マリーナは、あたたかい父の言葉に、手を借りて立ち上がる。
「大丈夫です。父上、やはり、この戦に私もついてきて
と、オルカンに頷く。
オルカンは心配そうに娘を見て、「『バレタニア師団』は海の民だ。皆、
マリーナは、
オルカンは、胸の前で自分の
マリーナは、オルカンの目を見つめて、黙ったまま首を横に振る。
オルカンは、本音とは言え、娘の心を代弁しすぎたと、「口が過ぎた」と
マリーナは、部下をレオに殺されたアランの元に駆け寄って、
「アラン、私の息子があなたの大切な部下の命を奪いました。なんと
と、事切れている部下の顔を
「王妃様、もったいないお言葉、この者にとってせめてもの救い。痛み入ります」
そう言うとアランは立ち上がって、「これも戦の1つです。我らの目的はモルデールを落とすこと、泣いてはおれません。先を急がねば」とレオを追いかける。
オルカンが、マリーナの元に近づいて、「アラン・ホワイトホークは心強い真の忠臣だな」と背中を抱く。
マリーナは、救護班に、事切れた団員の亡骸を預けて、「父上、レオが間違いを犯さぬため、私たちも進まねばなりません」と立ち上がった。
――モルデールの町の要所要所に
絵手紙は、女文字で書かれている。裏には若かりしころのマリーナが描かれている。
と、そこに、住民の避難を終えて報告にヴァルダーがやって来た。
ヴァルダーがシリアスに並びかけて、ヒョイと絵手紙を覗き込んだ。
「若様、まだ、マリーナ様のことが忘れられぬのですか、男らしくない!」
と、
シリアスは、絵手紙を慌てて、胸元に
ヴァルダーは、腕を組み身を反り返らせ、「某ならば、ダークス卿と決闘いたしましたな」
……シクシク。……シクシク。
「私は、ヴァルダーお前と違って、繊細なのだ。難しい判断を簡単に言うな」
ヴァルダーは、首を
ブヒヒーン!
モルデールの四方に配置した物見の『幻影騎士団』団員が、騎馬を乗りつぶす勢いで戻って来た。
「シリアス様、南、1kmのマルサネス川より、『白鷹騎士団』の旗と、海シャチ『バレタニア』の旗が並んでやってきます。
ヴァルダーが団員に厳しい目を向ける。
「大将は誰だ?」
「おそらくはレオ様!」
ヴァルダーは眉をしかめて、「皇太子殿下だと⁈」
「はい、さらに、海シャチには王妃様と
ヴァルダーは、ゆっくりシリアスに振り返って、「若様……」
シリアスは、胸に手を当てて、静かに頷いた。
つづく
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