第三部②マリーナの葛藤
第33話『揺れる王妃の心』
ヴァルガーデン王宮の東側広場には王立劇場と、南側には大聖堂がある。
劇場を出た
ダークスは、マリーナを見ると、抑圧するように、「レオはヴァルガーデンの総大将としてモルデールへ出陣が決まった」
マリーナは、キッと見返して、「レオはまだ17歳、
ダークスは、眉をハの字に
マリーナは、燃えるような目で、「私はあなたの妻になった時に、シリアス様への思いは捨てました。今の私は、このヴァルガーデンの
ダークスは、目の奥に本心を内に秘め、マリーナの修道服の
「マリーナ、お前の申すことが本心ならば、なぜ、ワシという夫がありながら、修道女の真似をする!」
ハラリとマリーナの美しい黒髪と小麦色の肌が、頭巾の中からこぼれた。
「私は、王に仕える
と、頭を下げた。
ダークスは、目を
一歩、二歩、ダークスが王宮へ進むと、足を止め何か思いついたように振り返った。
「そうだ、今、お前の父・海シャチの
マリーナがキッと顔を上げた。
「父は、ヴァルガーデンへの
ダークスは、嬉しそうに抜けた歯を見せて、「これは、
マリーナは、一瞬、目を強く
王宮から真っすぐ埠頭につながる道を馬車に揺られ思いつめたように暗い顔を浮かべるマリーナが、山と海の物流が集まるバレタニアからモルデールへつづくパラシオ街道を抜け、そのまた南の大河マルサネス川が流れる
埠頭には、バレタニアからのガレオン級の
マリーナが、心苦しい面持ちで、馬車を下りると、ちょうどガレオン船から日に焼けて
「おお、マリーナではないか、めずらしいな出迎えか」
オルカンは、海の
「父上、話があります。荷を置いたらすぐに町屋敷までお越しください」
オルカンは、あっけらかんと、「なんだ、ここでは話せないことなのか?」と荷を足元に置いて、後から来た
――タイドン屋敷。
ドンッ!
マリーナの話を聞くなり、オルカンは、いきなりテーブルを叩いた。
「なんだと! ダークス卿は、私にレオの
マリーナは、悔しそうに
「はい、父上……」
オルカンは、マリーナの目をしっかり見て、「ダークス卿は、まだ、レオの
マリーナは、悲しそうに、俯いて首を横に振る。
「ダークス様のお気持ちはわかりません。ですが、レオは……」
と、マリーナが言いかけた時、オルカンが言葉を打ち消すように
「それ以上、言うなマリーナ! ここはタイドン家の町屋敷とは言え、使用人の中にダークス卿の耳として働く者もおるやも知れぬ」
マリーナは、オルカンにすがるように、「ですが父上、レオは……」
「マリーナ!」
オルカンは、マリーナの両肩に手を置いて、教え諭すように見つめて言った。
「いいか、マリーナ。レオはダークス卿の息子だ。例え、お前の許嫁がかつてはシリアス様であったとしてもだ!」
マリーナは、
「父上!」
「マリーナ‼」
オルカンは、マリーナの口を
「マリーナ、真実は重要ではない。それはお前の心の中に
マリーナは、オルカンに
「マリーナ、この世で生きるのに神など信じるな。信じられるのは強い力と
「だからこそ……」
「マリーナよく聞け、真実はお前しか知らぬ。例え、真の父親がシリアス様だったとしてもだ!」
「私は、母として、息子が父を殺すのに
オルカンは、
オルカンは、決心を固めたようにそう言って、
「
と、マリーナは、オルカンが銛を掴んだ手に自分の手を添えた。
つづく
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