第15話『逃げられない運命:強運⁈ ポジラー』
ポンポコポン、ポンポコリン!
ポンポコポン、ポンポコリン!
ハルデン家の屋敷を中心とするモルデールの町は、景男を長老ゴブリンの
町の人々は、騒ぎを聞きつけて、夜だというのに、窓を開け、ドアを開き、およそ300匹ほどのホグゴブリンが、景男を
景男が、怒り狂ったホブゴブリンを手なずけたのは、モルデールの住民すべてが知ることとなった。
「ポジラー様、よくやってくれた!」
屋敷からアムが飛び出してきて、景男に飛びつく。
飛びつかれた景男は、両腕をギプスとアームホルダーで固定されている。そのまま、
グギッ!
景男の左足が、ヘンな方向に曲がった。
「痛いーーーーー!」
「ポジラー様、どうやってホブゴブリンを手なずけなさったのですか?」
アムは、痛がる景男をおかまいなしに、猫が大好きなご主人に
景男は、おそらく
アムは、景男の両肩を
「この世界ではそうかも」
「それは、いい!」
と、言ってアムは景男の顔に胸を押し当てるように抱きついた。
ムニュ!
景男は、現世での自分の
グキッ!
ただ、
オッホン!
アムに抱き着かれ、鼻の下を伸ばす景男をたしなめるようにアムにつづいて屋敷から出てきたアリステロスが
「アム様、町の者も見ております。ポジラーとあまり親しくするのはいかがなものかと思いまする」
「なんじゃ、アリステロス、そなたの出した
と、アムは、景男を突き飛ばして、
「痛たたたたーーー!」
アムは、左足を九の字にして痛がる景男に
アリステロスは、アムの
「アム様、先に、ポジラーの
そう言うと、ローブの懐から小さな杖をとりだして、景男のステータスを空間にカードを開くみたいに表示した。
HP(ヒットポイント)30
MP(マジックポイント)0
攻撃力3
守備力3
素早さ100
……運の良さ999。
アリステロスは、
「逃げ足と、運の良さを
アムは、驚いて、「バカを申すな、私のポジラー様が、そんな
アムは、景男のステータスを見て、
「ポジラー様のレベルは、シリアスの1/99ではないか……しかし、シリアスにはない素早さと強運がある。まだ、望みはある!」
アリステロスは、あご
アムは、
アリステロスはあご髭をなでながら、何やら目算して、「シリアス様が
アムは、折れた左足を引きずりながら、ほふく
ビリッ!
景男は、引きつった顔で、振り返って、「いいや、ちょっと、そこまで散歩に……あはは……」
アムは、目は真剣で、口元だけで笑って、「そうですか、それならば、後で領内を案内したいので、怪我を直して一緒に参りましょう……と、その前に、アリステロス、ヒーリング魔法の前に、あの金の輪っかを先に出してちょうだい」
アリステロスは、「ほう、姫様、堅実な判断です。ポジラーの逃げ足を考えるといつ逃げ出すやもしれませんからな、それは、よいお考えです。それでは、「サルサル、ソンゴクウ、サル、ウン!」と、
アムは、金の輪っかを掴むと、景男の頭に
「これで、よし! アリステロス、ポジラー様をヒーリングの呪文で怪我を治して差し上げよ」
「わかりました姫様。タイタイ、イタイノ飛んで行け―!」とアリステロスが呪文を唱えると、あら不思議、景男の九の字に曲がった左足も、両腕のギプスもきれいさっぱり元通り、怪我はすべて治った。
怪我の治った景男は、その場で飛び跳ねたり、腕を回したり、体のコンディションを確かめると、いきなり森へ向かって駆け出した。
アムがすかさず、
「ウワキハダメヨ、ヨソミナイナイ!」
と、アムが呪文を唱えると、突然、景男が頭に被せられた金の輪っかを掴んで地面に転がり出した。
アムは、景男にゆっくり近づいて、満面の笑顔で言った。
「ポジラー様、私からは、もう、逃げられません♡」
つづく
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