第2話 転生
俺、死んだのか。
家族を前にして俺は死んでしまった。
『母さんたちは生き残れたのかな。』
「嵐、お主、嵐だな?」
『誰ですか?今話したい気分ではなくて…』
「私は神だ、君の死に様も、これまでの行いも、ずっと見ていたさ。」
『そうですか、で、神が僕に何の用で?』
「君を見ていて、少しかわいそうだと思ったのだよ。だから転生させることにした。」
『転生って、馬鹿馬鹿しい、アニメが好きだからって俺をからかっているのk…』
な、何だこれ、身体中の力が抜けて、視界が真っ白に…
『う…うぁぁ。』
(何だこの感覚、自分では喋っているはずなのに喋れない。)
「おー!立派な子が生まれたぞー!」
「この顔だし、名前はロイドね!」
「お!この子にぴったりな名前だな!」
周りを見渡してみる。だが、見えるのは木の壁。
何なんだ、この壁は、この形状といい、赤ちゃんを乗せるのにぴったりな形だ。
まさか…ゆりかご!?
そう、ここはゆりかごだったのだ。
俺は異世界ファンタジーを好んでよく見ていたため、大体の状況は把握できた。
予測だが、俺は転生して、今頃赤ん坊なのだろう。短い手足、出ない声、どれも赤ん坊と捉えれば辻褄が合う。
さて、ここからどうしたものか。
正直親の言うことに従うなんて嫌だ。普通の赤ん坊ならその選択を選ぶだろう。
だけど俺の思考は17歳のまま、そんな面倒なことはしたくない。
とは言っても、自分一人じゃ歩けない様なこんな体じゃ、従うしかないよな…
それから一週間が経ち、赤ん坊の姿に慣れてきて、地面を這うくらいなら出来るようになった。
普通の人からすると、地面を這うなんて進展でも何でもないと感じるかもしれない。
だが、数日前までゆりかごの中でお母さんの世話を待っていた身としては、地面を這うことは立派な進展なのである。
『う、うぁ。』
なお、言葉はまだ喋れない。
「あら、ロイドちゃん、ミルクかしら。」
俺は知能は高校生レベルなため、この様にジェスチャーでご飯を食べたいと伝えることができる。
正直、前世の家族がいなくなったのは悲しいが、これはこれで楽なので、アリかもしれないと思ってきつつある。
「はい、ロイドちゃんミルクよ〜。」
ゴクッゴクッ
やけに美味い。多分味覚も赤ん坊と同じになっているのだろう。
はぁ、美味かったぁ。
こんな赤ん坊ライフを満喫している俺だが、正直不満に思っていることもある。
それは…
「魔法が打てないこと」だ!
俺はこの世に生まれて一週間、魔法の一つも見たことがない。父は大工、母は家事で、魔法どころか剣すらも見たことが無い。
そこが俺が不満に感じていることだ。
もしかするとこの世界には魔法や剣がないのかもしれない。
異世界といっても、武器や魔法があるとは限らない。
ここが大工と家事だけの世界だってことも大いにあり得るだろう。
何だろう、もっとかっこよく、
(サンダーボルト!)とかいってみたI…
ゴローーーーーーン!!!!
ん?何だ?ずっと空は晴れだと言うのに今雷が降ってきたような…
まさか、魔法に成功したのか?
ま、そんなわけないんだがな。
はぁ、今日も暇だ、いつも家の中を散歩するか、ゆりかごの中に居ながら寝るくらいしかない。
そうだ、今日はいっそ、抜け出して外に出てみよう。
これまでは「外は危ないから絶対に行っちゃだめ」って言われてきた。
でもこんなクソ暇環境を与えられて一体何が出来ると言うんだ。
と言うことで、今日は外に出てみようと思う。
俺は地面を這い、ドアの前まで移動する。
(ラッキー!ドアちょっと空いてんじゃねえか!)
ドアと壁の隙間を通り抜けてっと!
俺は無事、外に出ることができた。
すごい新鮮なシャバの空気だ。
広がっている平原、奥に見える村、とても異世界らしい。
ここら一体を見渡す限り、多分この家は一軒家だ。
周りに少しだけ家はあるものの、村と言えるほどでもない。
俺はここで少し疑問に感じることがあった。
母が言っていた、外は危ないとはどう言うことなのだろう。
やっぱり赤ちゃんだから高いところに登ったりしたら危ないと言う意味なのだろうか。
てっきり魔物とかがいるのかと思っていた。
「ゴウォァ、ゴウォァ。」
ん?一体何の声だ?
「ゴウォァ、ゴウォァ。」
近づいてきている。
「ゴウォァァァァァァァ!!!!!」
俺は確信した。これが外が危ない理由だ。
俺は咄嗟に家の中に入る。
あの緑色の肌、人型のモンスター、多分あれは…「ゴブリン」だ。
ーーー続くーーー
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