想像魔法で異世界制覇 -この世界では想像で魔法を打てるらしいです-

@arinoyounitiisaiutsuwa

第1話 焼死

 「嵐ー!もう朝よー!起きなさーい!」


 もう朝か、って、後五分で家出ないと遅れるじゃねえか。

 俺はベッドから身体を起こし、床に足をつける。


 制服に着替え、急いで支度をする。


 急ごう、もうすぐ出ないと高校に遅れる。

 タッタッタッタッタッタッタッタ!


 「嵐!ご飯食べなさI…」バタンっ!


 急ぎの余りご飯を食べるのを忘れてしまった。腹は減っていたんだが、高校に遅れて成績が下がる方がよっぽど怖い。


 とりあえず、駅に着いた。

 駅、つまり俺の家は高校から遠い、10キロだ。

 だがこれだけ遠い高校に行くのにも利点があるからだ。

 その利点とは、電車で寝れるからだ。


 電車に乗り、周りを確認する。

 座席空いてるー!ラッキー!

 即座に座り、目を閉じて意識がなくなってい、く.........



 「やばいよねぇー!それ!」

 「それなー!」


 ったく、うるせぇなぁ。俺はさっき起きて、このJK達のせいでろくに寝れない。

 大切な睡眠時間を奪われるのは最悪だ。


 『ちょっと静かにしてくれ。』みたいな事を言えば静かになるだろうか。

 でも俺にそんな勇気はないのだ。


 じゃあやる事はひとつ、あと五分くらいだし、ここは我慢強く、耐えよう。


 「てか知ってる?最近ここら辺に放火魔いるらしいよー?なんでも、一軒一軒、毎日燃やしていくとか。」

 「何それ知らなかったぁ!怖ぁ...」


 放火魔、か。世の中も物騒だなぁ。

 何が目的でそんなことをしているだろうか。


 次はー、◯◯ー。〇〇でございます。


 着いた。あとは走って間に合うかだ。

 俺は全速力で駅を出て走る。

 スマホで時間を確認する。


 8時29分56秒

 

 あと4、3、2、1。


 間に合えええええ!


 「嵐君、毎回毎回危ないよ、そろそろ余裕を持って行動したらどうだい。」

 『はい、すみません。』


 怒られてはしまったものの、間に合った。これで成績が下がると言うことからは逃れられた。


 俺は階段を上り、教室に入る。

 ガラガラガラガラ...


 「嵐また遅刻かよー!」

 『遅刻じゃねぇよ。』


 とりあえず荷物を置いて授業の準備をしよう。早く来ればこの準備の時間も長くなるんだろうな。


 次は、化学か。


 「じゃあ授業始めるぞー。」


 今日はここの範囲を−−−−−キーンコーンカーンコーン


 よし、一限目は終わった。とてつもない睡魔のせいでろくに話も聞けなかったが何とか寝ずに済んだ。


 「おい嵐ー!俺この課題終わってなくてさ、見せてくんね!?」

 『まったくカズヤは、毎回毎回宿題を忘れてくるし。』

 「ごめんって、じゃあ、見ていいか?」


 『勝手にしろ。』

 「サンキュー!昼休みには返す!」


 昼休みって、貸してもらってるんだからもっと早く返せよな。


 と、そんな感じで一限目に続き、二限目、三限目と、次々に授業を終えた。


 キーンコーンカーンコーン

「えーじゃあ明日までにやっておくように。」


 はぁ、疲れた、帰ろう。

 「嵐!一緒に帰ろうぜ!」

 『はいはい。』


 こいつは唯一の幼馴染だ。小学校、中学校、高校につづき、こいつはずっと一緒だ。

そのため家の位置も近い。


 そうして俺たちは学校を出る。


 「なあなあ嵐、最近俺らの家の近くで放火魔が暴れてるらしいぜ?」

 『知ってる。』


 「嵐はそういうの、怖くねぇのか?」

 『怖いけど、現に足掻きようがないしな。』


 「まあ、確かにな。」

 『ってかお前、宿題見せてやっただろ。あのプリントまだ返してもらってねぇんだけど...』


 「あっ!すまん忘れてた!明日返すわ!」


 まったく、こいつって奴は。


 それから30分後、俺たちは家の分かれ道に着いた。


 「じゃあな!嵐!」

 『おお、早くプリント返せよー?』


 はぁ、今日の晩飯は何かな。

 ハンバーグとかだったらテンション上がるけどなぁ。


 そんな事を考えていると、俺の視界にある光景が映る。

 『...嘘、だよな。』


 自分の家が燃えていた。


 『あの、これって。』

 「例の放火魔だよ。今回は酷い、なんでもまだ中に人がのこっているんだからねぇ。私たちゃこうやって見守ることしかできない。」


 『人、まさか、母さん、父さんッ!』


 俺は炎が勢いを増す中、家に飛び込んだ。

 家には今もなお焼けている家具、もう焦げている俺の椅子。


 俺は涙を堪えつつ、家族を探す。

 『母さん、父さん!』


 俺は熱い、不安、恨みの三つの感情を心に込めながら家中を探し回った。


 『いた。』


 そこには怯えて二人で逃げ出すこともできない父さんと母さんがいた。


 俺は家族を前に、涙を流しながら、焼死した。

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