ex2 偽り

 なんで涙が流れたのかはわからない。


 すれ違う彼の目を見て、こちらに関心がないのがわかった。


 私は確かに、それを望んだはずなのに。


 薄汚い保身に走った私は、何故かその事実がどうしようもなく耐えられなかった。


 罪悪感、羞恥感。言葉にできない感情多数。

 何が主であったか、私にはわからなかった。


 そして、今私を苛む一番大きな感情は後悔だ。


 きっと舞華も変に思ったことだろう。何せ、本当に急に泣き出したように見えただろうから。


 どういうふうに思われてるだろうか。


 理由を言わない、正しくは言えない私を、彼女は見限らないだろうか。愛想をつかされないだろうか。突き放されたりはしないだろうか。


 嫌な想像は、止まることを知らない。


 私は胸中を渦巻くこの感情を知っている。


 恐怖だ。


 自分で言うのもなんだが、私は中学の頃からだいぶ変わった。

 主に、容姿的な意味で。もちろん、性格も。


 努力した。他人に受け入れられるように。

 身構えた。二度と輪を外されないように。

 同化した。もう、独りにならないように。


 あの日から、何度も自分を偽った。



 もう私は引き返せない。




 それが自分への言い訳だと気づいていたとしても。

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