雲量4 買い物デート?

2人きりって、何話せばいいかわかんねぇな……。これって俺から話し始めた方がいいやつなのか?この無言の時間に耐えられるほど、俺の気は長くないぞ……。


「さっきから神妙な面持ちだね。どうしたの?」


「いや、2人きりって何話せばいいんだろうなぁって」


「キモっ! 私の事1人の女子としてみてるってこと!? 私ははゆのこと信じてたのに……」


「なんでそうなるんだよ……。だってしょうがねえだろ? 俺女子とショッピングとか以前にショッピング自体あんま行かねえもん」


「はぁ……これだから陰キャは……。あっ! 新作コスメじゃん! ほら、早く行くよ!」


「俺は陰キャじゃな..….え? ちょっと待てよ!」


 俺は梨花に連れられて、2階の化粧品フロアへと向かった。そこは俺とは別世界の空間だった。


「これめっちゃ可愛い〜! 買っちゃおうかな〜! はゆ、これどう思う?」


「知らねえよ、まずコスメってなんだよ。ま、まぁ可愛いとは思うけど……」


「キモイから恥ずかしがるなって!」


「いやだから酷くね? あまりにも言い過ぎてる気がするんだが」


 こうやって軽口を叩いている間に、時刻はもう6時を過ぎていた。こんなに時間が過ぎるのが早いのは、人生で初めてかもしれない。


「え、もうこんな時間? 時間は過ぎるのがあっという間だな〜。せっかくだし、ご飯でも食べる?」


「俺はいいけど、お前の親御さん心配しないか?」


「平気平気! 親帰ってくるの遅いから!」


「なら良かった、じゃあ行こうか」


「じゃあ行こう! 近くのファミレスでいいでしょ?」


「ああ、もちろん」

――――――――――――――――――――――

「気になってたんだが、中村のことはいつ好きになったんだ?」


「振られたばっかの女の子にそれ聞く? 普通」


「あっ悪い……。まぁでも俺も今日振られたし」


「おっと、食い下がるか。てか、どういう理論?」


「いいだろ、俺も教えるからさ」


「しょうがないなぁ、中学2年の夏だよ」


 中学2年の夏。その頃にはもう俺は春華を好きだった。今でも鮮明に、彼女との思い出がよみがえってくる。


「で、はゆはいつ恋をしたの?」


「恋をしたの? って言い方……なんかキモイな。そうだな、俺は中1の冬くらいだ」


「私よりちょっと早いね。先輩だ」


 そこから俺らは、恋バナで盛り上がった。さっきは梨花が大号泣だったからまともな話が出来なかったが、今は違う。どうやら彼女は「恋」というものが大好きらしい。よく分からない。そういう2人の過去のこともたくさん話した。


「今日はありがとう、楽しかったよ! またなんかあったら相談させて貰うよ〜」


「ああ、俺も楽しかったよ。こんな楽しかったの人生で初めてかもしれないな」


「え? なに? 告白?」


「耳腐ってんのか?」


「あはは、冗談冗談!」


「じゃあ、気をつけて帰れよ。また学校でな」


「またね〜!」


 帰路に着いている途中、俺は気付かぬうちにあいつのことについて考えていた。内心、結構面白いやつだと思っていたのだろうか。明日もまたあいつと話せると考えると、楽しみでワクワクしてきた。

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