第8話 周りを囲まれた!

そりゃそうか……話してみるか?


 

「なぁ……どうしよ? 話してみる?」

 

「え? ん〜ちっちゃな子も居るし、戦闘って感じじゃ無さそうだし……話してみても良いよ」

 

「敵意を感じたら直ぐに転移な」

 

「はぁ〜い」


 

 緊張しつつ自分達にバリアを張り、周りの結界を解除して叢から出て獣人に歩み寄った。


 

「そう言えばさ、今更なんだけど……獣人と話し通じるのかな……?」

 

「え? わかんないよ〜どうしよ??」


 

 アリアでも知らないか……。言葉が通じなかったらジェスチャーか? 俺達が歩いて向かうと、獣人達の中から代表者っぽい獣人の長老のような村長を先頭に、3人を従え近付いてきて長老が話しを掛けてきた。


 

「これは、驚いた。人間の方ですか……?」


 

おっ! 言葉が分かるぞ。それに敵対心も無さそうだな……良かった。


 

「どうしたのですか? 大勢で集まっているみたいですが……」

 

「ええ。それが我々の住む森に結界を張ってあったのですが。その森に侵入者が入ったと連絡を受けまして、確認に来たのですが……。更に強い結界が張られていたので……その対策を協議していたところです」


 

 え? あ……そう言えば、この森に転移をしてくる時に変な違和感を感じたのは、結界を抜けた感じだったのか。という事は、転移で結界も突破が出来るって事か。

 


「すみません。結界が張ってあったのに気付かなくて入ってしまいました。ですが、森を荒らしたり危害を加えるつもりは無いですので、安心してください」

 

「ええ。その様な害意を感じませんでしたので、こうして話をしいるのです」


 

 どうやら結界に守られていて、平和に暮らしている獣人の縄張りに入り込んでしまったらしい。だけど結界は見えないし仕方ないよなぁ。


 

「結界があれば、平和に暮らせますね」

 

「いえ。この結界は、遥か昔のご先祖様が魔法を使える者を数十人集め、やっとの思いで結界をお張りになられたと言い伝えられております。その目的は、この森に人間が気付かれない様にと、侵入が出来ないようにと結界を張っております。ですので魔獣や魔物には効果は無いのです……」


 

 そうか……だからキレイな森なのに人が居なくて、手付かずのままのキレイな森だったのか。あれ? でも、魔獣や魔物除けで使うのが一般的だけど……? 人間除けなんだ? まぁ……昔は大量に獣人を奴隷にしたりしてたのかもな。

 


「直ぐに立ち去るのでお許しください」

 

「いえいえ……。森に現れる魔獣を討伐をして頂き助かり感謝をしております。我々だけでは、魔獣の討伐が難しく……村にも被害が出ていたのです。あれだけの結界を張れるようなお方ですので、是非うちの村に現れる魔獣の討伐にご協力をして頂けないでしょうか……」


 

 村長らしき老人が頭を下げてお願いをしてきた。


 この獣人達は、結界の中で平和に暮らしすぎているのか……? 人間に対して無警戒過ぎじゃないか? 何の為に、結界が張られたかを理解してないんじゃないのかな?  まぁ俺とアリアには、敵意は無いけどさ。それとも害意、敵意を感じるスキルでもあるのかな?


アリアと顔を見合わせて悩み小声で話した。


 

「わたしは良いけど……」

 

「俺も良いけど。じゃあ、待遇を決めてもらうかな」



 せっかくだしお願いを聞くだけじゃ勿体ない。どうせなら依頼として受けた方が良いよな。冒険者になったんだしさ。

 

 

「え? あ〜依頼として受けるんだね」

 

「そうそう……ギルドを通さない直接契約ってヤツだな。手数料を引かれてないから報酬は大きいけど……トラブルが起きてもギルドは関係ないから自分達で解決をしないといけなくなるんだよな。アリアにも手伝ってもらうよ」

 

「そうなんだぁ。わぁ〜じゃあ、わたしも参加できるね〜ギルドの依頼の時も参加するつもりだけど……」


 

 アリアが、いたずらっぽくニコリと笑った。ん? めずらしく積極的と言うか……気を使ってる感じじゃないな。


 

「参加は良いけど……いつものアリアじゃないね? 魔物や魔獣の討伐に参加をしてくれるのは助かるけどさ」

 

「だって……せっかくユウくんと同じパーティになったのに別々に討伐とか、薬草を採集って寂しいもんっ」

 

「うん。一緒に討伐に行っても問題ないでしょ……冒険者になる前に低級の魔物を沢山討伐して攻撃も受けなかったし、魔力切れにもならなかったしなぁ」

 

「うん。ありがと♪」


 

 心配そうに見つめる長老たちの方をに向き直り依頼として受けると話した。


 

「俺達は冒険者で、魔物と魔獣の討伐依頼として引き受けようと思います」

 

「そうですか。では報酬という事ですね……」


 

 長老の顔色が悪くなり、後ろに付いてきていた者もオロオロとして二人で顔を見合わせて困った表情になっていた。まぁ……元々は勝手に2人で魔物の討伐をして帰るつもりだったので、報酬は元々無かったわけだし。でも魔獣討伐を無報酬で頼むつもりだったんだ?


 

「まあ、そうですね。でも……その感じは、支払いが難しいみたいですね」

 

「すみません。小さな村でして擬態スキルを持っている者が人間に擬態して野菜や金物を近くの人間の村まで売りに行って人間のお金を得て調味料や雑貨、薬を買って余ったお金を貯めてあるだけでして」

 

「そうですか。まぁ……報酬は必要ないので、ちょこちょことここに遊びに来て薬草を採集したり、村へ遊びに行っても良いですか?勿論、村の事は他言しません」

 

「それは勿論、歓迎しますが……そんな事で良いのですか? それでしたら村にある空き家を差し上げますのでご自由にお使いください」



 ん!? 貸し出すの間違いじゃ? 差し上げる??

 

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