第9話 拠点

 ん? いやぁ……住めって言ってるのか? それで魔獣の討伐を依頼というかお願いする気なのか? 良いんだけどさ……。アリアの方を確認をしようと振り向くと、目を輝かせて嬉しそうにしている。俺と目が合うと嬉しそうに何度も頷いていた。何をそんなに嬉しそうにしてるんだろ?


 

「どうしたの? 嬉しそうだけど??」


「わたし達の拠点♪ 拠点だよぉ♪」

 


 あっ。それカッコいい! 冒険者は、何種類かに分かれている。


 旅をしてダンジョンや宝探しをする冒険者は、拠点や家を持たずに宿屋や野営をして暮らす。

 村や町の討伐依頼を受けたり、護衛や警備を受け家や拠点を持つ冒険者パーティだ。


 それでアリアが目を輝かせていたのか〜。納得だよ、うん。


 

「それは嬉しいですね。遠慮なく頂きますね」


「それと報酬の代わりにはならないと思いますが……野菜や食料をお出し致します」


「それも有り難いです」


「では、村の方へご案内を致しますので……」


 

 まぁ〜あまり期待しないでおかないと、ショックを受けると思う。多分、木を組んで雨風をしのげるくらいの家というか休める場所の提供だろうな……。ただで差し出す家だし、アリアがショックを受けないか心配だなぁ……期待をしているみたいだし。


 森の奥深くに、大勢の村の人と一緒に移動してきた……。 あれ? 俺達の村よりキレイで普通の家じゃん? 獣人だからと見下していたかも……。依頼を受けた村から貰えた家は、雨風を防げるだけの休める場所では無くて、ブロック作りの暮らしていける立派な家だった。しかも村から少し離れた場所で広い庭付きだった。


 

「村の中心部から離れていますが、空いていて立派な家がこの家しか無いのです。村の中心部にも空き家は、あるのですが……小さな家で少し、いや大分傷んでいまして」


「ここが良いです。庭に倉庫を立てても問題ないですか?」


「ええ。この土地は、お譲りした土地なのでご自由にお使いください」


 

 お。土地も貰えるんだ? 倉庫と薬草を育てられるかな? 森に近い場所に植えてみようかな。その他は野菜かな?


 

「ありがとうございます」


「ありがと〜♪」


 

 こんなに、すんなりと村に入れちゃって良いのか? 結界で寄せ付けないようにしていた人間だけど?


 

「あの〜俺達は人間なんですけど? すんなりと信じちゃって良いんですか?」


「儂には、害意のある者。ない者。が分かるスキルがありますので問題ないです。同じスキルを持っている者も同じ意見でした」


 

 やっぱりそうか……じゃなきゃ、得体のしれない危険な者がいるかも知れない場所に、子供を連れて来るわけがないか。


 

「討伐は、明日からでも良いですか?」


「ええ。問題ないです。この森は広大で殲滅は不可能なので、定期的に討伐を行ってくだされば助かります」


 

 あぁ〜そういう事ね……。だから食料と家付きなのか。納得できた……。 実際、上空から確認したけど広大な森だったしなぁ。討伐も程々で良いかな……? 殲滅も不可能じゃないけど依頼主が不可能と言うし。定期的に、のんびりと討伐をしていくか。


 村、森への出入りは自由。獣人の村の事は話さない。他の人間を連れてこない。討伐は最低1ヶ月に1回は行う。村に滞在中は食料の提供をする。とお互いに約束を交わし、長老が話を終えると深々とお辞儀をして帰っていった。


 

「なぁ〜アリア……あれ?」


 

 アリアが居た方を見ると、すでに姿が消えていて家のドアが開いていた。この家が、そうとう気に入ってるな…… 俺も部屋を見てみるか。


 

「ゆうしゃさま。これ、たべてください!」


「あー、これも食べてください」


 

 大人達が帰ったのに、まだ残っていた6人ほどの可愛いネコ耳の子供たちが話しをかけてきた。


 

「ん? 勇者? 俺が??」


 

 俺の事を、勇者様と目をキラキラさせて呼んでくる。俺の前世の記憶では、魔物や強敵を倒していく主人公だよな……それ、すごく恥ずかしいんですけど……。魔物や魔獣を討伐をする依頼は受けたけどさ。


 

「はい。お父さんがいってました」

 

「うちの、おとうさんもいってたぁー」

 

「ゆうしゃさま、つよいっていってたー」


 

 初めて見る顔の銀髪で肩くらいの長さで、10歳くらいの感じの女の子がボロボロの服を着て通り掛かると、こちらを睨んでいた。


 

 敵意というか警戒されているのか、そんな感情を向けられていたので、気になって子供たちに聞いてみた。


 

「あの女の子は?」

 

「えーっとねぇ…… 少し前にね、魔獣に襲われてお父さんとお母さんが、殺されちゃったんだよ。多分……もっと早く、勇者様が来てくれればって思ってるんじゃないかなぁ……」


 最年長っぽい10歳くらいの女の子が答えてくれた。そんな事を言われてもムリだろ……。前に来た時は、何も気付かなかったし、誰にも会わなかったんだし。そんな気になるような魔獣や魔物の気配も感じなくて、いつも通りの魔物が現れる普通の森って感じだったしな。って、事は孤児なのか……? まぁ両親が亡くなって、誰かが面倒を見てるんだろうけどツライだろうなぁ。よく聞く話だけど……


 子供たちと少しだけ遊び、遊びが終わると子供たちは満足して帰っていった。家に入ると、アリアが楽しそうに掃除をしていた。


「あ、悪い……。外で子供たちと遊んでた」

 

「ううん。大丈夫だよ。村の人と仲良くしなきゃだし。この家ね、色々と家具も揃ってるんだよ〜♪」


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