第6話 初の常時依頼を行った。

 いつもの場所だと、シャルが探しに来るかもしれないし……せっかくの冒険者になっての初の仕事だし、邪魔をされたくない。


 

「俺は何度か、そこに行ってみたけど人は居ないから気にせずに魔法が使えるし。目当ての薬草も手つかずでいっぱいあったよ」

 

「うぅ〜ん……ユウくんが、そう言うなら……行ってみようかなぁ……」


 

 あれ……俺が無茶な事を言ってるかも? 大丈夫だよな? 無茶じゃないよな? アリアの困ってる表情を見て心配になった。でも、ちゃんと下見もして安全の確認、薬草の種類まで調べたしな。


 

「危険だと思ったら直ぐに帰ってこような。アリアも危険だと思ったら声を掛けてな」

 

「うん。わかったぁ」


 

 普通は歩いて、徐々に行動範囲を広げつつ色々な情報を集めていくんだけど。そんな事をしていたら、自分達の情報を隠しておけなくなるし、窮屈で気を使う。


 なので転移で、目的地まで移動してきた。


 

「わぁ〜ホントだぁ〜薬草がいっぱい♪」

 

「そうそう……これ使ってよ」


 

 レベルが急激に上って、色々なスキルを覚えていた。便利な異空間魔法も覚えていて、それを利用をしたバッグを制作した。バッグに魔石を飾りの様に付け、魔道具の異空間アイテム収納バッグだ。

 このバッグの収納の能力はかなりのもので、猛獣を倒して入れても収納先は異空間なので、重さはバッグの重さしかない。

 難点は制作工程が複雑で、たくさんの職人手を変える為に人件費が膨大なり、さらに材料費が掛かり高価になる。普通の冒険者は中ランク冒険者になってから、お金を貯めてやっと購入ができる程の超高級品だ。


 

「え? 可愛い〜どうしたの? わたしへのプレゼント? ちゃんと薬草を入れるバッグは持ってきてるよ?」

 

「それ異空間アイテム収納バッグだよ」

 

「え? えぇー!? そんな高価な物……貰えないよっ! ダメだよ」


 

 アリアの顔が引き攣っていた。異空間アイテム収納バッグの高価だという事を知っている子供は少ないと思う。


 

「あはは……これ俺の手作りだし、バッグは俺が昔に使ってたヤツだよ。それに魔石は魔物を討伐したヤツだし、お金は掛かって無いよ」

 

「え? あのさ……えっと……って事は……異空間魔法と付与スキルを持ってるの?」


 

 あ……そうだ。アリアも魔術士だし、異空間魔法の難しさを知ってるんだった。異空間魔法は高ランクの魔術士でも使える人は少ないんだった。さらに付与スキルを持っていたら魔道具を作って売れば、わざわざ危険な冒険者をやらなくても良いほど儲かる。はぁ……自分からバラしてるし……


 

「えっと……まぁ……秘密でお願いね?」

 

「……ありがと♪ 勿論、秘密にしておくよ。バレちゃったらせっかくパーティを組んだのに、他のパーティの勧誘とか魔道具職人さんの誘いが来ちゃいそうだし……わたしが困るぅ〜」


 

アリアも俺と同じで結構、秘密を隠している。というか余計な事を言わない感じか。


 

「……このバッグを作るのに、夜遅くまで作業をしてたんだね……それで寝坊しちゃったんだね……。ありがとぉ♪」


 

 アリアが呟いて頬を赤くさせてバッグを抱きしめていた。まぁ……夜に作ってたのは事実だけど、魔石を付けて魔法を魔石に付与させてお終いで、15分くらいの作業時間だったんだけど。

 本当はバッグを作る職人さんは、魔石を加工する職人さん、装飾をする職人さん、魔法を付与する魔術士と付与士のが作成するので数日も掛かり大勢の職人さん作業に携わり作業をするらしい。


 

「面倒かもしれないけど、売りに行く時は持ってきたバッグに詰め替えてくれるかな」

 

「うん。わかったぁ」

 

「バッグに入り切らなくても、異空間バッグに入れてれば劣化はしないから、小分けにして売りに行けるよ」

 

「すご〜い♪ 便利だね〜」


 

 嬉しそうに早速バッグに積んだ薬草を入れていた。


 

「俺はアリアの後ろに居るから、薬草採集に集中してていいよ」

 

「え? ユウくんは、魔物とか魔獣の討伐をするんじゃないの?」

 

「するけど……薬草を採集してる時に襲われる事が多いらしいぞ」

 

「わたしも戦えるし、大丈夫だよぉ?」

 

「良いから薬草を採りなよ」

 

「ううぅ……ありがとぉ♪」


 

 アリアに抱き着かれてお礼を言われた。


 

「ユウくん、優しすぎぃ〜好きぃー♡」

 

「あ、ありがと……」


 

 昔からアリアには、良く言われていて馴れてるハズなんだけど。最近は、一緒に行動していて可愛く思えていて、ドキッとして恥ずかしくて照れる。


 

「わぁ〜ユウくん顔赤いよぉ〜? えへへ……」

 

「アリア、からかうなよ。アリアも顔赤いし! 早く薬草を採りなよ」

 

「えー? わたしも顔が赤い? そうかなぁ? えへへ……はぁ〜い♪」



 アリアが頬に両手を当てて、恥ずかしそうに俺を見つめ可愛く首を傾げニコッと微笑み返事をした。その仕草が可愛い。

  

 途中で魔獣や猛獣が現れ、いつも通りに討伐をした。魔獣から魔石と素材を収納をして、食べれそうな獣は丸ごと昼食用と販売用に収納をした。普段通りに何も気にせずに低級魔法を、パシュ! パシュ!と放ち、猛獣を討伐をしていると。


 

「ユウくん……それ中級の魔獣だよ」

 

「え? あ……そうなんだ」

 

「気をつけてねー」


 

 もう倒してるし「気をつけてね」の意味は、素材や魔石を売る時にって事だよな。

 自分より高ランクの魔物、魔獣の討伐をすると魔石と素材の販売は出来るけれどポイントは付かない。


 まぁ……レベルが高くても駆け出しの冒険者も居るし。レベルが低くても、魔獣の死体を見つけて魔石や素材を回収をして売れるから、討伐をしても、討伐をせずに魔石や素材の販売は問題ないんだけどね。

 討伐をしたらタグに記録はされてるらしい。なのでアリアの気を付けては……本当に気を付けないとタグに討伐の記録が残っているので、タグの確認をされたら面倒になる。通常は討伐ポイントは自己申告制で確認はされるけど、販売のみの場合はタグは確認はされないんだけどねぇ……

 俺が色々と隠してるのに気付いて注意をしてくれたんだろうな。っていうか、アリアは頭が良いので、俺より魔物や魔獣のランクまで記憶していて詳しいので助かる。


 

「アリアって頭が良いよな〜」

 

「ユウくん程じゃないよ。ユウくんは、わたしより色々な魔法を多く使えるし、真似できないよぉ〜うふふ……♪ほんとスゴイっ。わたしの自慢のパーティだよ♪」


 

 そう言って、アリアが薬草を摘みながら頬を赤くしている。その背後で周囲の警戒をしている俺をチラッチラッと見てくる。チラチラと見てくる視線に俺が気付き、意識をしてしまい恥ずかしくてアリアの方を見れなかった。

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