第5話 シャルの思い。

 思い出したように、怯えた表情をして話してきた。話し終わる頃に、表情が変わり顔を赤くさせた。


 まあ……あれは恐かったと思うけど。シャルは、パーティだと思っていたのに何の相談も無しなのか? 会いにも来なくて、他の男子と仲良く遊んでいて、今更やり直そうってムリだろ。


「冒険者になりたいなら、他の男子とパーティ組めば良いじゃん。仲良さそうだったろ? 俺は、アリアとパーティ組んでるし」

 

「うん……知ってるよ。わたしも一緒に……わたし前衛だしさ……力になれるよ。絶対!」


 

 残念ながら前衛は、必要ないんだよな……。むしろ邪魔になると思う。シャルが入るとなると、支援魔法に回復魔法、治癒魔法を掛けないとだろ? 今の所、アリアと魔物の討伐をしてて支援魔法、回復魔法は、1度も使ったことがない。それどころか1度も、攻撃を受けた事が無い優秀なパーティなんだよな。まだ、低級の魔物の討伐だけど。


 

「必要ないって。他で頑張ってよ……。一緒に遊んでた男子も、冒険者を目指してるんだろ?」

 

「え? そんなぁ……。別に、あの友達は暇つぶしで遊んでただけで……。ユウくんみたいに仲は、良く無いよ。一緒のパーティに、なろうとも思わないし……そこまで信頼は出来ないしさぁ」

 

「いきなり何も言わずに消えたと思ったら、他の男子と仲良く遊んでるし。俺が上手くいきだしたら、やっぱり一緒にって無理だって。友達としては良いけどな。まぁ……来年には、この村を出ていくけどね」

 

「いやっ。置いてかないで……ユウくんと、ずっと一緒に居たい!」


 

 隣に座る俺に珍しく抱きついてきて顔を上げて目を潤ませて見つめてきた。昔なら喜んで居たと思うけどな……


 

「俺に粘ってもムリだよ。それなら、仲の良い男子とパーティを組む事を考えた方が良いよ。それか他のパーティを探しなよ」

 

「……ゴメンってば。許してくれないかなぁ……お願い。ね?」


 

 抱きしめながらお願いをされると、昔なら許してたけど……。今は、面倒にしか思わないし。早くこの話が終わらないかとさえ思っていた。


 

「今更、パーティを変更するのはムリ……」

 

「は? えっと……アリアの事が……好きなの?」

 

「好きだぞ。可愛いし、優しいし、素直で魔法も強いしな」

 

「……え? わたしは……?」


 シャルが泣きそうな表情をして聞いてきた。ん? パーティを断った時よりショックな表情をしてるけど。質問の意味がわからないんだけど? 好きかって事か?


 

「は? シャルの事が好きかって事か?」

 

「……うん」

 

「まぁ……毎日、会ってたくらいだし好きだったな……」



 正直、昔は好きだったけど……今は、と聞かれると普通の友達か、それより少しは仲の良い友達って感じだよな。


  

「じゃあ……今は?」

 

「嫌いじゃない。好きでも無くなったかな……少し前は他の男子と仲良く遊んでるのを見てヤキモチを妬いてイラッとしたくらいだけどな」

 

「な、なんで? 何で変わっちゃったの? ねぇ」


 

 なんで? 何でだろ……? 会わなくなったから? アリアとパーティを組んで気がラクになったからかもな。シャルと一緒に居ると疲れてたかもな。シャルは、統率力が高すぎで、俺は必死で付いていく感じだったし……。今は、解放された気分になったな。これは言えないけど。


 

「何でって……。捨てられて裏切られた感じがしてたな。シャルが来なくて心配をしていたら、それが他の男子と仲良く楽しそうに遊んでたしな。最悪な気分だったな」

 

「ごめん……そんなつもりじゃ。そうだね……わたしもアリアとユウくんが一緒に居るのを見てヤキモチを妬いたかも……今もだけどさぁ……」


 

 これじゃ恋人の別れ話をしてるみたいじゃんかよ。付き合っても居なかったし……。もう、良いだろ。話が終わらない気がする。


 

「な〜、日が暮れってきたから帰れって」

 

「まだ大丈夫……家近いし」

 

「話し合っても変わらないぞ?」

 

「ねー。おねがいっ!」

 

「無理だって」

 

「約束をしてたのに、ヒドイっ! もう良いよっ! 勝手にすれば……!? もう知らないっ!」


日が暮れるまで、同じ様な話をしてシャルが怒って帰っていった。



翌朝……


 朝食を食べおわり、出掛ける準備が出来た。ドアを開けると、シャルが家の前の道を彷徨いていた。


 うわぁ。昨日は、怒って帰ったのに、待っているって事は……付いてくる気だよな? 帯剣をしているし……


 開けたトアを閉め、転移でアリアとの待ち合わせ場所へやってきた。


「わぁっ! ゆ、ユウくん……珍しいね……? 転移で来たの?」

 

「寝坊しちゃってさ」

 

「えぇ〜!? ユウくんが寝坊? それも珍しいねっ」

 

「冒険者になったから嬉しくて中々、寝られなくてさ」

 

「そうなんだ〜? わたしも嬉しかったけど直ぐ寝ちゃってたぁ〜」


 

 アリアは、俺とは良く話をするけど、他の人とはあまり話してるのを見たことが無いんだよな。そこも可愛いと思えるんだけど。なんだかアリアにとって、俺は特別な存在なのかなって思えるし……

 


「昨日ギルドで、地図を買って見てたんだけど。良さそうな場所を見つけたんだけど、これから行ってみない?」

 

「えぇ〜。初めて行く場所で、薬草採りは難しいよぉ〜。それに危ないと思うよ」


 

 本当は、地図なんか買っていなくて、上空に転移をして上空から村の周りを把握をしていた。さらに徐々に範囲を広げて、人の来なさそうな場所を見つけていた。

 それから何度か通って、魔物や魔獣の把握と薬草の群生している場所を調べて把握をしていた。下調べ済みで、安全で薬草も採れるのも調査済みだ。

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