第4章 救助隊員大活躍

第11話 イジメ相談掲示板スタート!

「え? 救助大作戦って何?」

 ぽかんとつぶやいたぼくに、となりの席から瑠子が教えてくれた。

「イジメ相談掲示板。わたしたちが相談にのるの」

「そっか! そうだった!」


 ぼくたちはイジメ救助隊員としてスカウトされたんだった!

 真名子先生がうなずいた。

「ああ。IT得意な保健の先生に掲示板を作ってもらってたんだよ。その間に、こっちの準備もできたからな。ところでみんな、分かってると思うが、インターネットでは名前や個人情報は出しちゃダメだ。ということで掲示板では例の」

 先生がニヤリと笑う。

「コードネームを使ってもらう!」


 詩季が「ださ」と横を向く。ぼくは瑠子にたずねた。

「コードネームって何?」

 瑠子が、腕のワッペンを指さす。

「わたしは青レンジャー」

 後ろの美遊が自分のピンクのワッペンを見せびらかす。

「わたしはピンクレンジャーよ」

「おれはパーポゥレンジャー」

 帰国子女の空は無駄に発音がいい。

「ぼくはみどレンジャー」

 力のワッペンは緑だ。ということは……。

「ぼくは……赤レン」

 言いかけて、詩季の「ダサレンジャー!」という声にさえぎられた。


 真名子先生が詩季のワッペンに目を向けた。

「黄色がいやなのか? おれの白と交換するか?」

「ヤダ! あたしはデザインがダサいのが気に入らないの」

「じゃあ、詩季。カッコイイパンダを描いてくれよ。掲示板のアイコンにするから」

 先生の言葉に、詩季の目がキラリと光った。


 とりあえずその日はみんなで、イジメサバイバル掲示板のレンジャー紹介ページを作った。

 レンジャーは名前も写真も出せないから、年齢だけ。

 先生がノートパソコンの画面を指さした。

「画面の向こうにいるのが、自分たちと同じ子どもなんだってことが伝わるのは、相談者にとって、とっても大事なことだからな。あとは一言紹介をそれぞれ考えてくれ」

「一言紹介? どんな?」

 詩季がたずねる。

「そうだなあ、趣味とか好きな食べ物とか」

「先生は何?」

「猫の写真を撮ることだ」

「筋トレじゃないの?」

「筋トレは趣味じゃなく、毎日のルーティンだからな」

「じゃ、好きな食べ物は?」

「ゆで卵」

 きゃはは、と詩季が笑う。

 得意技や救助隊員としての思いはそれぞれ自分たちで考えた。


━青レンジャー 11才得意技は六法全書切り。趣味は読書。

━ピンクレンジャー 11才得意技はフラワーシャボン。好物は桃。

━紫レンジャー 11才必殺技はトルネードボンバー。趣味は写真。

━緑レンジャー 12才得意技は宇宙最速爆裂斬。好物はキュウリ。

━黄レンジャー 11才必殺技は絶対音感キック。好物はバナナ。

━赤レンジャー 11才絶対全員を助ける。好物はトマト。


 ぼくはノートパソコンの画面を指さした。

「瑠子さんは、医学書切りじゃなくていいの?」

「六法全書のほうが分厚くて重いから、威力があるの。それより、力君の技、強そうね」

 力が、はにかんだ笑顔を見せた。そういえばみんな6年生のはずだけれど、力君だけが12才だ。

「力君、もう誕生日過ぎてたんだね!」

「あ、うん、4月2日」

「はやっ! 誕生日も最速!」

 そう言って詩季が誕生日の歌を歌い始めた。


 照れる力君をかこんで、みんなで歌う。歌い終わってから、美遊が、小さくつぶやいた。

「あたし来年なんだけど。あたしの誕生日のときもみんな、歌ってくれるかな」

「もちろん、だって、友達だから」

 自然に友達って言葉が出ていた。

「あたしたち、友達だね」


 嬉しそうな美遊を見ながら、ぼくは優斗のことを思い出していた。優斗はぼくの誕生日を知っていたのに、ぼくは優斗の誕生日を知らない。どうして聞かなかったんだろう。

 優斗を助けてあげるつもりでいたのに。

 ぼくはぐっと拳をにぎりしめた。

 こんどこそ、イジメに苦しんでいる人を助けるんだ。イジメ救助隊員の仲間達と一緒に。


 翌日、詩季は、ヘルメットをかぶったクールなパンダのイラストを描いて持ってきた。

「か、かっけー!」

 思わずこぼれたぼくの言葉に、詩季は、パッと笑顔になった。詩季の笑った顔を初めて見たかもしれない。

 レンジャー紹介ページにクールなイラストが入った。

 こうして最強レンジャーたちが待機する、イジメ相談掲示板がスタートした。

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