第56話 久々の女神、ウルシア登場!

「エイルさん、少しお聞きしたいんですけどいいですか?」

「……なんでしょう?」


 膝上にあるナプキンで口を拭い、声を発するエイルさん。


「ここのお屋敷って、ウルシア様の礼拝堂ってありますか?」

「ありますが…なにかありましたか?」

「はい。今日、商業ギルドのサミーさんが帰国されたんですよ」


 エイルさんならば、皆まで言わずとも察するだろう。現に今、眉が少し動いた。


「そうですか。サミュエルはやっと帰還しましたか。まぁ、娘さんの……あぁ。これはこちらの話です。気にしないでください」


 いやぁ、そこまで話して気にするなって……私の性格が分かっててやってるのかな?


(ミオは、ドのつくお人好しだからな。顔でなにを考えているか分かるし、誘導尋問は無用だな)

(シャラップ!)


「サミーさんの娘さんについては、後ほど。それより、聖国の薬師ギルド本部が大変な騒動になっているとか……」

「あぁ。薬師ギルド本部事態が、聖国とズブズブですからね。もはやまともな上層部は、数えた方が早いでしょう」


 少数派か。周りが敵だらけで身動き取れないんだろうな。

 ガイア様は、教会などの限られた場所で再会できると言っていた。ならば教会でなくても、同じ意味を持つ場所なら!


「お昼ご飯の後に、礼拝堂に行きたいんですけど」

「それならば、私も付き合いましょう」 

「え?でも、お忙しいんじゃ……」


 遠慮する私に、エイルさんは優しく微笑んだ。 

「私も聞きたいことがありますし、そんなに時間がかかるものでもないでしょう」

「ありがとうございます」


 本当は、少し不安だったのだ。本当に、ウルシア様に会えるのかなって?でも、加護を○モラった者同志、一緒なら怖くない。よし!初の神の会合に行こうじゃありませんか!



「ここが……礼拝堂」

「そうですよ。とりあえず、一通りの主要な神の像は揃えています」


 扉を開けてくれたゼフさんに軽く礼をして、手を繋いでいるエイルさんと扉を潜る。

 壁にある窓から入る光は、色ガラスステンドグラスからの採光で、優しい雰囲気がある。エイルさんの言う通り、ウルシア様の他にも像がある。だけどそれらは、ウルシア様の一歩後ろに配置されていた。


「ウルシア様の後ろに配置された神様たちは、誰ですか?」

「彼らは、豊穣の神、学の神、芸の神、職の神など司るものの種類にも違いはありますが、ウルシア様を支える柱神ですよ」

「へぇ。薬の神様もいますか?」

「薬ではありませんが、罰とを司る神なら、ウルシア様の隣に瓶を抱えた女神像があるでしょう?」

「はい」


 ウルシア様が持つ柄杓の水を瓶に受け入れるように跪く女神像だ。本当に水が流れているわけではないが、その様な彫像に見えるほど鮮明な出来だ。


「とても腕の良い彫刻家なんですねぇ。今にも動き出しそうです」 


 私が感激してそう言うと、エイルさんはにこやかに微笑み、「教会の像は、これより凄く大きいですよ?」と教えてくれる。それは圧倒されるだろうが、今はここで十分である。


「ここの雰囲気はとても気持ちよくて、清々しいです。レイラとキュウちゃんも呼んでいいですか?」


 ウルシア様に紹介するために、エイルさんの許可を得る為に尋ねたが、彼はもちろんと言う風に一つ頷いた。


「キュウちゃん、レイラ、出ておいで〜」

『は〜い!』

「きゅう!」


 呼ばれて飛び出てじゃじゃじ〜ん!(若い世代は分かるかな?)と、影から元気よく飛び出した。


「では、役者は揃いましたね。ゼフ、私たちは今から神に会いに行ってきます。私はその間こちらでは意識がないかも知れませんので、よろしくお願いしますね」

「……畏まりました」


 ゼフにすれば、なにをよろしくすれば良いのか悩むところだが、前代未聞の出来事だ。とりあえず、見守ることに決めたのだった。



「さぁ、祈りましょう」

「はい」


 私たち五人(?)は、ウルシア様の前に膝を付いて手を組んだ。


(ウルシア様、会いに来ましたよ)


 ミオが頭でそういえば、辺りは真っ白な空間に包まれた。いや、ミオの意識が神界に飛んだのか?


「これは……長生きはするものですね。期待していなかったわけではないですが、このような現象に立ち会えるなど……」

「エイルさん」


 私は二度目だから、そんなに感傷に浸ることはないけど、初めての彼には色々と衝撃なんだろうな。


「お久しぶりですね、ミオ」


 そんな時に聞こえたウルシア様の声。私は声がした方に振り返る。そこには、ウルシア様ともう一人、あの瓶を持った女神様が側にいたのだ。


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