第37話 ギルド職員のなやみごと
「ここが商業ギルドですよ」
「ほぇ〜……凄い洗練さた造りの建物ですね。窓が少にゃいのは、侵入にゃどの防犯設計?壁が白いのは、にゃにかの塗料?」
建材は煉瓦だが、白く塗られている。周りの建物は赤煉瓦や木材だから、すごく目立っている。窓に嵌められているのは曇りガラス。一応、明かり取りの要素が含まれてるんだろうな。
「建物にそんな意識を向けたことがないので気づきませんでした。ですが言われてみれば、他と違う外観は不思議ですね。まるで孤立しているみたいに見えます」
ララさんと二人、ギルドの建物を並んで眺める。商業がすべて集まる場所だけに、防犯意識が高い建物にしていると思う。白く目立つのはその為。
「ララさんは、そうやって感じるんですにぇ。それにしても、馬車が多くないですか?」
「確かに多いですね。街道にまで溢れてしまっています」
門の近くだし、近くに
「とにかく入りましょうか」
「はい!……こんにちわ〜」
時刻は三時過ぎ。エイルさんに伴われ、私は商業ギルドの扉を潜った。
スゥイングドアではなく、正規の木製の扉だ。私は二度目のギルドということもあり、意気揚々と馳せ参じた……なのに。扉を開けた瞬間に、騒々しさが私を襲う!
ガヤガヤガヤ!
ワイワイワイ!
「………騒々しさが痛い」
(なにを戯けた……と言いたいが、これは確かに騒々しいな)
そう言いながら、耳を伏せるジョウ。え!?耳を伏せれるタイプなの?……は?我輩は神の見習い。なんでもあり?さいですか。
私は耳を塞ぎ、エイルさんの足元にくっつき、マントに包まる。
「大丈夫ですか?ミオ」
「大丈夫です。ありがとうございます、エイルさん」
私は布越しにモゴモゴと返事をする。布は吸音と遮音効果があるからね。相変わらず煩いが、さっきよりマシである。
「王都や他の街から来た商隊の到着と鉢合わせたみたいですね。情報収集も兼ねて、ギルドに集まっているみたいです」
馬車が多い原因はそれだったか。しかし、馬車止めに止められず溢れた馬車は、苦情の原因になっちゃうぞ☆
「そうにゃんですにぇ。なら、商業ギルドの人も忙しいですよにぇ?私は、商業ギルドの登録は明日でも構いませんよ?」
暗に帰ろ?と促すけれど、エイルさんはスマイルで華麗なスルー。ちぇっ。
「大丈夫ですよ。必要なら、私の
「おっき過ぎて引きずるから良いです」
汚しそうで怖い。肌触り抜群なんだもん。きっと高級品に違いない!
「なら、私が動きにくいですからね。一度、抱っこしますよ」
「はい」
エイルさんに縦抱きで抱っこしてもらいます。ジョウじゃないけど、頭隠して尻隠さず。前開きのテントだから、私の背中は丸見えです、いやん。
「……あそこに知り合いがいますね。彼にしましょう。ビクター!」
「え?」
すい〜っと吸い込まれる様に、受付カウンターとは
だってまっすぐ行けば受付カウンターよ?右側に旋回すれば、もれなく商談スペースでござい(多分だけど、ソファーセットが三つくらい並んでたんだ)。
「……エイル!?珍しいな、お前がここに来るなんて。なんの…よ…うだ?」
あぁ、背中に視線をビシビシ感じるぅ。
「今日は、この子のギルド登録をお願いしようと思ってやってきたんですが……騒がしいのが苦手みたいで、こうやって外套に包まって難を凌いでいるんですよ。受付カウンターが一杯なんですが、ビクターは暇ですよね?」
「………お前、俺がいつも暇人だと思うなよ?職員同士で席を囲んでるのが見えねえのかよ?」
「やだなぁ。私の目はいいんですよ?見えてるに決まってるじゃないですか!では、登録の間だけお借りしてもよろしいですか?」
「駄目に決まってんだろ」
そうだよ。駄目に決まってるよ。エイルさん、大人しく受付に並ぼう?
「仕方ありませんねぇ」
肩を竦めつつ、わざとらしく息を吐くエイルさんに、ビクターさんの苛立ちの声が聴こえる。
「なにが仕方ねぇだよ?こっちはギルマスから無理難題吹っ掛けられて参ってるってのによ。お前はいつも優雅だねぇ」
そして、ビクターさんも負けじとエイルさんを皮肉る。しかし、上司からの無理難題!それはパワハラだ!
「おや?賢者たる私が相談に乗りましょうか?きっと即時か『業務内容を話すわけねぇだろ?』…そうですか」
皮肉は超スルー!それどころか、ぶっ込んでいった!ビクターさんが最もな事を言うが、それに食いつく女性がいる。
「ちょっとビクター!業務内容とかカッコつけてる場合!?ただの祭りの出し物のアイディア会議じゃないの!この際、誰でも良いから知恵を拝借したかったの!それが、賢者様にご享受願えるなんて!きっとすぐに問題は解決するわ!……これで残業せずに済むっ!」
最後に本音が出たけど、めっちゃ期待してる。これは責任重大だぞぉ?でも祭りってどんなんだろ?いつ、行われるんだろ?私も、ジョウと見て回りたいかも。
「祭りというと、秋の収穫祭ですか。商業ギルドは、毎年ステージで司会・進行を担当していませんでしたか?」
「それがな……去年からのまつり改革で、遂に
声のトーンががっくりと落ちた。きっとビクターさんが貧乏くじを引いて、くじ引きをやらされたところ、
長くなったので、分けます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます