第36話 薬師ギルド〜経由〜商業ギルド着!

 試験の結果発表、パフパフ〜! 

 パフパフラッパが火を吹くぜ!


 さて、結論から申し上げましょう。合格しました〜!どんどんパフパフ〜!


「それでは、申請書類と提出資料身元証明書等にお間違いはございませんか?」

「はい、間違いありません」

「かしこまりました。では、ギルドランクの判定に入ります。決定後、ギルド員情報登録を行い、カードを発行致します。所要時間は……十五分ほどです」


 エイルさんをちらっと見て時間を言ったということは、説明が必要か否かを確かめたな?ということは、この世界の大部分は鐘で時間を測っているんだな。


 扉から入って正面には受付カウンター。右手の壁八割を占めるのは、時を刻む大きな時計。これだけ大きければ、ゼンマイやネジの音がかなり響くと思うのだが、至って静かだ。これは、魔道具に決まりである。


(鑑定!)

【魔時計…月の形が繰り返されていることに目をつけた精霊学者ドゥニー・ムーウェンは、魔道具界の第一人者ゲオハルト・バランに【鐘時計】の話を持ちかけ、共同で開発に着手した。これは魔時計と呼ばれる一定の時を刻み続ける魔道具。月の形が繰り返される新月〜下弦を一月と定め、莫大な時を掛けて割り出した時間の刻みが、今の刻み続けるリズムを生んだ。特に、精霊学者のドゥニー・ムーウェンは、時間の刻みの研究に晩年を要したと言われている。鐘時計は、その刻みの技術を応用して作成された魔道具だ。一時間に一回鐘が鳴り、人々に刻を知らせる役割を果たしている。これにより、教会の仕事が一つ減った】


(ということは?私は科学とか理科は詳しくないけど、この時計は初めから二十四時間の概念で作られたわけじゃなく、一カ月の時を三十日で割って、更に時を割ってって研究をしていたの?………大変だぁ〜〜!?日時計とか思いつかなかったのかな!?科学を執念で超えたのは恐ろしいけど、とっても尊敬する!)


 なんか色々考えてたら、もはやなにがなにか分からなくなっちゃった(要するに飽きた)。

 私はララさんの隣で大人しく待つことに徹しよう。ちなみにララさんは、私の試験中はホールで待機していました。


(しかし試験の結果が出てるのに、ランクの判定など必要か?前もって定められた数値に沿えばいいだけではないのか?)

(確かに、そうかも。十五分は長いよね)

「エイルさん。薬師ギルドのランク規定って、どうにゃってるんですか?」

「それは、実力・実積・人脈の三種類さね!」


 疑問に思った私は、エイルさんに質問してみたけど、それに答えてくれたのは女性の声だった。


「ジョハンナ……やっと降りてきましたか」

「アポを取らないお前さんが悪いんだろう、小童。こちらには、なんの落ち度もないよ!」


 杖を着いたお婆さんだが、とても威勢がいい。彼女が、薬師ギルドの会長なのかな?緑の髪を後ろで一つに結い、お団子にしている。

 好奇心や悪戯の色が濃い瞳は、ジョハンナさんの性格を表していそう。目は口ほどに物を言うっていうじゃない?


「さて……ミオというのはお前さんかい?」

「はい。ミオと申します。はじめまして」


 挨拶は、社会の基本!丁寧に。


「おや。小童の弟子だと言うから、実力はさておき、憎たらしいガキかと想像していたが……長生きはこれだからやめられないよ。私はジョハンナ。薬師ギルドアターキル支部のトップなんぞを任されてる。しかし、ミオの瞳も捨てがたいが、そっちの犬っころがより魅惑的な香りがプンプンするねぇ」

「ひぇっ!?」


 あっという間に距離を詰められ、ズイッと顔を近づけてきた。


(縮地!?瞬歩!?)

(大丈夫か?ミオ)

(だいじょばない)


 あまりの速さに私の脳内は軽いパニック。ジョウの心配の声にも、涙声だ。

 実際に存在する技法だが、かの仙人l壺公ここうの故事にも登場した仙術とも言われている。

 それに839歳のエイルさんを小童呼ばわりするジョハンナさんは、見かけよりずっと齢を重ねられているのだろうか?


「遂に耄碌しましたか?」


 エイルさんは、少し厳しい表情だ。なにをそんなに警戒しているのかな。

 私の瞳から、神様関係の関与が露呈することは、もう仕方ないよね。振り払う火の粉は払うつもりだけど、ジョウが万が一を心配しているのは申し訳ない。

 魔法紙の確保は出来たし(エイルさんからお譲り頂きます)、明日にでも加護の創造を使うつもり。


「ふんっ!なにを言うさね!?私はまだまだ正気だよ!……だが本気で気をつけな。お前さんの庇護下だからまだマシだろうが、徒党を組んだ輩は厄介さね」

「貴方に言われずとも……そんなことで、ミオを驚かせないで下さい」

「ひゃひゃひゃ!そりゃ悪かったね」

(全くだ!悪意がなかったから放っておいたが、ミオが涙目ではないか!)

(それはジョウの怠慢)

(なっ!?) 


 ジョハンナさんに向け、ガウガウ吠えるジョウを私は突き放した。ジョウは呆然自失だが、自業自得だ。

 しかし、いつまでバレバレの内緒話をしてるおつもりですか?お二人さん。ランク規定について教えてくれないの?


「ミオ様〜」

「はい!」


 ほら!呼ばれちゃったじゃん!こうなれば、受付の人に聞くしかない。それか取説みたいな冊子があるのかな?



 あれから薬師ギルドに登録が終わり、無事にギルドカードを手に入れた。そして、ギルドお馴染みの冊子も手に入れた。


「薬師ギルドのランクは、FからSまで存在します。初心者のF、ミオの現ランクの見習いのE、そして修行中のD、一人前のC、名人のB、達人のA、国宝のSがあります」

「へぇ〜、そうにゃんですね」


 今は薬師ギルドから少しだけ離れた場所にある商業ギルドまで、馬車で移動中だ。薬師ギルドは真ん中にあったのに、商業ギルドは西門近くにギルドを構えているらしい。

 王都と繋がる街道が西門だという理由の他に、売買品を収納する倉庫がたくさん必要になる商業ギルドは、広い土地を必要とした。

 

「まもなく商業ギルドです」  

「もうすぐですか、楽しみです!」


 ララさんのお知らせに、私の心は浮き立つ。薬師ギルドは試験で大変だったけど、商業ギルドは純粋に楽しめそう。

 ララさんは、私を見て微笑んでる。私も微笑み返しておこう。


「商業ギルドでは試験はありませんが、ランクの規定や仕組みも違うので、受付カウンターで聞いてみましょう」

「はい!」


 ラノベだと月会費の他に年会費。これは商業ランクにより差別化されていたり。ランクが上位になれば年会費は勿論お高いが、ギルドから受ける恩恵も段違いである……と色々な特色がラノベでよりけりだが、この世界はどうだろう。

 似た部分もあるだろうけど、違う部分が楽しみである。

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