第38話 祭りの盛り上げ役、それは

「なるほど?それで、まんまと出し物担当を引き当てた…と。ですが、何故そこまで悩む必要が?いつもの興行をすれば、問題ないのでは?」

「それが、じじ……んんっ!?去年から年配者たちが、毎年同じようなつまらん祭りには寄付をせん!とか言い出したらしくて……」


 今、じじぃって言おうとしたな?このギルドは、口悪いのが多いな。


「で、祭りの実行委員から『出し物は去年同様に、興行以外でお願いしますよ』って言われちまってよ。去年は懺悔告白大会で盛り上がったし。皆それ以上を期待してるし。だけど、そう簡単にアイディアが浮かぶはずないだろ?準備期間もあまりないし、皆で頭を悩ませてた所なんだよ」

「なるほど。確かに、去年の住民による懺悔大会は盛り上がりましたねぇ。多少の犠牲は出ましたが、身から出た錆ですしね。今までは、吟遊詩人に旅一座の歌や観劇、踊り子の舞踊でしたが。去年は一風変わった出し物だなと思っていましたが、なるほど。年配者たちの反乱が理由ですか。祭りの実行委員会としては、寄付が無ければ資金繰りに厳しいでしょうし、住民の意見には従わざるを得ないでしょうね」


 エイルさんは、さもありなんと言わんばかりの反応だ。確かに、つまらないお祭りに出資するより、家族で外食に出かけたりした遊興費に当てる方が楽しいもんね。

 

「頭を悩ませているのは俺らも一緒だよ。第一、俺らは今年も司会進行のつもりだったのに、急に方針を変えたのは実行委員会だぜ?だから準備の人員も、四人しかいないしよ。祭りまでは二ヶ月しかないし」

「そうよ!早く決めて準備に取り掛からないと、残業が増えるばかりだわ!真新しい企画発案とか、無理無理無理ぃ〜!」


 かなり追い詰められてるな。お姉さんの拒絶が激しい。だけどそうだよねぇ。仕事と同時進行は大変だよね。いくら地域のお付き合いとはいえ、大変なものは大変だよ。


 ギルドに来てから少し時間が経ったせいか、人が減った。喧騒もさっきよりだいぶマシだ。私がゴソゴソと動けば、エイルさんが外套から出してくれた。


「初めまして、ミオです!」

 

 外套から出た瞬間に目が合ったので、挨拶せずにはおれまい。


「去年の懺悔告白大会って、住民参加ですよね?」

「えぇ、そうですよ」


 私がエイルさんに尋ねれば、彼は眩い笑顔を振りまいてくれる。

 彼は、私が転生者であることを知っているから、なにか期待をしているのかもしれない。普段の似非笑いとは異なる、サービス旺盛の笑顔だ。


「それにゃら今年も、住民参加型の出し物の方向で考えればよくにゃいですか?」

「そうですねぇ。なにかありますか?ミオ」

「……やっぱり、最初から私を当てにしてましたね?」

「ふふっ!」


 エイルさんに、笑って誤魔化せ!を地でやられると苛つくな。どうしてだろ。


「司会進行はどこでするんですか?」

「それなら、ステージの横にテントを張るから、運営本部はそこよ。他に三カ所の本部支所を構えるけど、本部はステージ横の一箇所ね!」

「にゃるほど」

「それがどうしたの?」

「景品とかを管理する場所を確認していました」

「景品?」

「準備はちょっと大変かもしれないだけど、住民参加型ゲームとかしたら皆楽しめると思って……」


 呟いた私の言葉に、この場にいる皆・・・・・・・が、ぐりんとこちらを向く。


「ぴゃ!?」


 流石に、ホール全体はホラーやで。猫じゃないけど、全身の毛が逆立つよ。

 私は慌てて、エイルさんの外套に避難した。ただいま、外套。


(皆、お耳だんぼだったんだね)

(そりゃ、国を代表すり賢者が謎の子供を連れているんだ。気になるだろうよ)


 気付いていないのはお前だけだ…というジョウに、私は非難の目を向ける。だが、痛くもかゆくもないジョウは、更に話を続ける。


(しかし、ゲームと言ってもたくさんあるぞ。なにを提案するつもりだ?)

(そんなの決まってるっしょ。祭りやパーティーの盛り上げ役と言ったら、ビンゴっしょ!?)


 ふふんっと調子よく発表すれば、至極当然の意見が飛び出した。


(ビンゴ大会か。こちら仕様でやるとなると、なかなか難しいかもしれんぞ?)

(それをなんとかするのは、エイルさんの役目では?私はアイディアを聞かれただけで、その他については、なにも頼まれておりません)

(要するに、頼まれればやるんだな?)

(乗りかかった船だし?面白そうじゃん!でも、ただはいや。なぁなぁだと後から揉めそうだし。そこはちゃんと区別しなきゃ!)

(安いのか安くないのか……)


 呆れた眼差しのジョウだけど、これからの生活は私たちだけという自覚はあるのかね?稼げる時に稼ぐ!これ常識ね!

 

 というか、私のギルド登録は?

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