第12話 師匠のステータス

「さぁ、座ってくださいね」

 私たちは師匠に勧められるままに、ソファへ腰掛ける。ソファのふわふわ感に私が虜になっていると、ゼフさんが流れるようにサーブしていた。すげぇ。プロフェッショナルな動きだけど、アレをモノにするのになん年かかるやら。


「さて、私のステータスでしたよね?ちょっと他言無用な場所は隠しますが、許して下さいね。その代わり、最大限譲歩した内容をお見せしますよ」

「全然です!私にょわがままを聞いてくれただけで、有り難いです!」

 私が頭と手をブンブン振れば、彼は目を瞬いてから笑った。誰だって生きていれば、秘密は出来る。それを明かすか明かさないかは、個々の自由である。


「では、行きますよ。ステータスオープン!」


 さぁ、お楽しみ箱の扉が開くぞ!


【名前 エイル・リュタ・ラ・マグワイア

年齢 839 歳

種族 ダークネスエルフダークエルフとハイエルフの混血児

魔力量 14000000

属性 風 土 

スキル 精霊魔法 短剣 弓矢 細剣レイピア 鑑定 抽出 乾燥 造形 修繕 強化 付与 固定 復元

ユニークスキル アイテムボックス 転移

称号 賢者 ガイアの加護 】


「……839歳?若いにょ?」


 若いのか老いてるのか、エルフの指標が分からず師匠を見上げる私。師匠は、なんとも言えない表情で私を見つめる。


「普通なら、若い部類ですよ?ただ私は、前例がない種族なので、なんとも言えないんです。魔力の多さでは、寿命は三千年くらいだろうとは言われてますけどね」

「三千年……凄っ!」

(気にするところはそこか!?)

(なによ!?)

 ジョウに怒鳴られた理由が分からず、反射的に語気が強くなる私。

(エイルはミオが、初の種族ダークネスエルフダークエルフとハイエルフの混血児を知って嫌われやしないかと、ハラハラしているんだ。それなのに、なにを呑気に年齢などに注目しているんだ!)

(え〜?それこそ、そんなことだよ?だって師匠は師匠だし?ガイア様が推薦するぐらい善人なんだから、種族なんて今更でしょ?それに種族で最初の人って、始祖っていうんでしょ?凄いじゃん!)


 そう。種族で言えば、私の周りは獣神見習いに、謎の生命体きゅうちゃんと好事家の垂涎集団だ。今更、エルフの新種がいたとして、なんだというのだ。私が胸を張ってそう言えば、ジョウは前脚で頭を覆い、正に“絶望”になっていた。なんで?


「ジョウ、なにしてるにょ?」

がぅ〜、がぅがぅ!くぅ〜ん……我輩は、お前を普通の物差しで見てはいけないのを忘れていた!我輩は情けない……

「ジョウはなんと?」

 師匠も、ジョウが毅然とした態度を崩したのが気になったみたい。少しだけそわそわしながら、声をかけてきた。


「にゃんて答えたらいいの?」

がぅがぅっありのままに答えたらよかろう!?」

「あっ、投げやりだ。にゃんで頭抱えてるにょさ?」

きゅきゅ〜ん。きゅきゅ〜ん護衛はありとあらゆる観点から、物事を視る必要があるのだきゅう……きゃうん!きゅわぅん!それを我輩は……全然駄目なのだ!獣神見習いが、聞いて呆れるわ!

 そうげきながら、背中を丸め閉じこもるジョウ。なにをそんなに嘆いているんだか。


「はぁ……ジョウが言えって言ったにょで喋りますが、私は責任を持ちませんからにぇ?」

「はい、大丈夫ですよ」

 頷きながら了承の意を返す師匠に、私は深く息を吸い言葉を紡いだ。


「我輩は、お前を普通にょ物差しで見てはいけないにょを忘れていた!我輩は情けにゃい……と嘆いています」

「何故、そんな事態に?」

「にゃんででしょうにぇ?私もさっぱり!」

 頭に疑問符を浮かべる師匠に、私は肩を竦めた。

「ジョウがこうなる前に、ミオはなんと言ったか聞かせて頂けますか?」


 師匠は、何故こうなったか興味があるみたい。チラッとジョウを見れば、いまだ頭を抱えて蹲っている。尻尾が緩く揺れているから、OKということだろうか?しかし、その姿勢はなんとかならんのか?頭隠して尻隠さずを体現化しているではないか。


「えっと、師匠さんは師匠だし?ガイア様が推薦するぐらい善人にゃんだから、種族がにゃんでも気にしないし?それに種族で最初にょ人って、始祖っていうんでしょ?凄いじゃん!って私が言った後に、ジョウがあぁにゃりました」

「そ…うですか」

 と言葉を出したが、それが小さくぐもっている。どうしたんだろう?


「どうしたんですか?師匠」


 まさか私が、嫌がるとでも思ったのかな?

 この世界で、ダークエルフがどう扱われてるかお察しだけど、私が師匠にそんな事を思うはずないじゃん。ガイア様のお墨付きもあるんだよ?(←これ重要)

 師匠の日頃の行いが良かったから、ガイア様の目にも止まったし、加護を得る切っ掛けにもなった。


「いえ、なんでもありません。そうですね、ミオはミオですものね」

「ふふっ、にゃんですか?それ」


 可笑しそうに笑う私を見て、師匠はクシャッと表情を崩し、私を優しく抱きしめた。


 む?モヤシかと思ったけど、意外に鍛えてらっしゃる!?私はそれを確かめるために、背中に手を回すのだった。

 

 ミオにとっては、感動の場面も形無しだった。


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