第31話 エイルの希望
【創世神ガイアの加護…ユーザフェースを創造した神・ガイアの加護。
効果は、加護を授かった者の守護者を創造(チャンスは一度のみ)
やり方:魔法紙に姿形を描き、能力の詳細を書いて、「クリエイション」と唱えれば、加護は発動する】
「これは、ホムンクルスの神族版?」と呟いたのぐらいに豪華版だったはず。生物・能力共に制御事項なし。
(お待たせ、ジョウ。念の為に鑑定してみたけど、そんな記載は無かったよ)
(そうか。ならば、ガイア様に甘えて取っておきの要塞を創ろうとしよう)
(取っておきの要塞?)
なんか嫌な予感がする。歩く要塞御一行になるじゃん。地味に嫌なんだけど?
(諦めるんだな。これから訪れる我輩の心労を思えば、可愛いものだ)
またもや、私の表情から考えを読み取ったらしいジョウは、フッと軽く笑う。だが、ジョウに心労がやってくるとは?……はて、そんな予定は組んでませんけど?
首を傾げる私を見て、ジョウは鼻にシワを寄せて、軽く歯をムキムキ……いやん。なにをそんなに怒っているの?
「ミオ、部屋に着きますよ?二人で内緒話は構いませんが、気になりますね」
おおっ!?つい長話をしてしまった。私はハッと我に返り、エイルさんに謝る。
「案内を頼んでおきながらすみません」
「大丈夫ですよ。気にはなりますが、無理に聞き出すつもりはありませんから」
「ありがとうございます」
エイルさんのお屋敷に限らずだが、広くて迷子になるんだよね?特に、この部屋の辺りは入り組んでいる。
多分だけど、特権階級の人たちの家って、外部からの襲撃に備えて、わざと分かりにくい構造で作るんだよね?
日本では、からくり屋敷とかがその例だ。あれは、逃走用も兼ねているか。
(だけど、建築費が膨れ上がりそう。口止め料込みで)
(なんの話をしている?)
やば、念話が発動しちゃった。なんでもないよ〜の意味を込めて、二ヘラっと曖昧に笑っておく。ジョウなら意味を察するはず。
「ふふっ!ローハンが、ミオの特技は百面相だと伺いましたが、外れてはなさそうですね。合っているかは謎ですが」
私の様子を見ていたエイルさんが吹き出した。
「ローハンたいちょ!?勝手に特技を特定されるとか!?……っていうか、いつ会いました?」
街門で会ったのが最後かと思ったけど、違うのかな?
「あぁ。ミオは街門が最後でしたね?私は真贋判定の認定申請書を役所に出しに行きましたからね。その時に会ったのですよ」
「そうにゃんですにぇ」
多分、その時に駄弁った内容が
「さて、私のステータスでしたよね?ちょっと他言無用な場所は隠してますが、許して下さい。その代わり、最大限譲歩した内容をお見せしますからね?」
エイルさんも生きていれば、一つや二つぐらう柵はあるだろう。私だって秘密はあるし。誰だってそんなもん。
「では、ステータスオープン」
さぁ、お楽しみ箱の扉が開くぞ!
【名前 エイル・リュタ・ラ・マグワイア
年齢 839 歳
種族
魔力量 14000000
属性 風 土
スキル 精霊魔法 ナイフ 弓矢
ユニークスキル アイテムボックス 転移
称号 賢者 ガイアの加護 】
「……839歳?若いにょ?」
若いか老いてるか分からず、エイルさんを見上げる私。エイルさんは、なんとも言えない表情で私を見つめる。
「普通なら、若い部類ですよ?ただ私は前例がない種族なので、なんとも言えないんです。寿命は三千年くらいだろうとは言われてますけどね」
「三千年……凄っ!」
(気にするところはそこか!?)
(なによ?)
(エイルはミオが、初の種族
(え〜?それこそ、そんなことだよ?だってエイルさんはエイルさんだし。ガイア様が推薦するぐらい善人なんだから、種族なんて気にしないよ。それに種族で最初の人って、始祖っていうんでしょ?凄いじゃん!)
私が胸を張ってそう言えば、ジョウは前脚で頭を覆い、正に“絶望”になっていた。なんで?
「ジョウ、なにしてるの?」
「
「ジョウはなんと?」
エイルさんも、ジョウが毅然とした態度を崩したので気になったみたい。少しだけそわそわしながら、声をかけてきた。
「にゃんて答えたらいいの?」
「
「あっ、投げやりだ。にゃんで頭抱えてるのさ?」
「
そう
「はぁ……ジョウが言えって言ったので喋りますが、私は責任を持ちませんからね?」
「はい」
なんのこと?と首を傾げながら、了承の意を返すエイルさん。私は深く息を吸い、言葉を紡いだ。
「我輩は、お前を普通の物差しで見てはいけないのを忘れていた!我輩は情けない……と嘆いています」
「何故、そんな事態に?」
頭に疑問符を浮かべるエイルさんに、私も深く同意する。
「ですよにぇ。私もよく分からないんですよ。普通に返答しあってたんですけど……」
「ジョウがこうなる前に、ミオはなんと言ったか聞かせて頂けますか?」
エイルさんは、何故こうなったか興味があるみたい。チラッとジョウを見れば、尻尾が緩く揺れている。OKということだろうか?
「えっと、エイルさんはエイルさんだし。ガイア様が推薦するぐらい善人にゃんだから、種族がにゃんでも気にしないよ。それに種族で最初の人って、始祖っていうんでしょ?凄いじゃん!って私が言った後に、ジョウがあぁにゃりました」
「そ…う、ですか」
と言葉を出したが、それが小さくぐもっている。どうしたんだろう?
「どうしたんですか?エイルさん」
まさか私が、そこら辺の人たちと同じように嫌がるとでも思ったの?
この世界で、ダークエルフがどう扱われてるかお察しだけど、私がエイルさんにそんな事をするはずないじゃん。
「いぇ、なんでもありません。そうですね、ミオはミオですものね」
「ふふっ、にゃんですか?それ」
可笑しそうに笑う私を見て、エイルさんは眉尻を下げて、私を優しく抱きしめた。
む?モヤシかと思ったけど、意外に鍛えてらっしゃる!?私はそれを確かめるために、背中に手を回すのだった。
☆次回、「認定証の受難」をお送りします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます