第27話 保証人ゲットだぜ!

「なにを企ん…んんっ!? なにか頼みごとがあるんでしょうか?」


 失礼な!企んでなんていません! あくまで協力し合いましょ? っていう提案じゃん? ジョウに言わせれば、Win-Winの関係みたいだし?


 まぁ、単刀直入はっきり言わないこっちも悪いか。だから、エイルさんが気づいてくれた機を無駄にしない。

 いっくよー! (o⁠(⁠(⁠*⁠^⁠▽⁠^⁠*⁠)⁠)⁠/)


「というわけで、私にょ保証人ににゃって下さい!」

「は?」


 エイルさんの鳩が豆鉄砲食らった顔。貴重だなぁ。カメラ欲しい。玄関に飾れば、ローハン隊長が喜ぶ大爆笑だよ。きっと!


「私に、薬草にょ知識全般をお授けください! 次いでに、鼻にょ効く有象無象にょ盾ににゃッて下さい!」

「え?」


 調薬釜があれば、ポーションの作成は容易だ。たくさん卸せば市場が混乱するから、ちょっとずつ浸透させていくつもり。それに、私には試してみたいことがある。この実験には、現場を知る人の協力が必要不可欠!


 エイルさんは、私の突然の言葉に戸惑っているが、彼なら、そういう知り合いも多いはず!


「私にょお願いを聞いて下さった方で、先着一名様に、ガイア様の加護をプレゼント! 『はぁあ!?』……予定!」

「「………」」


 顔を引き締めて、キリッとしてみたけど無駄だった。どうするよ? この沈黙。だってガイア様が『儂の加護を授けんこともない……』って断定してなかったんだもん。

 だから、苦情もしくは詳細については、ガイア様までお願いします。

 

「そんにゃ目で見つめちゃいやん」

「……確証がなければ、ご協力は致しかねます」


 ツーンとそっぽを向くエイルさん。先ほどまでの狼狽が嘘のよう。立ち直りが早い。多分、私のノリに慣れきたね?


「じゃあ、教会に行こ! そこで、ガイア様に会って聞けばいいよ」

「おいそれと……いやいや。神に会うなど、天地がひっくり返らない限りありえません」

「にゃんで? 加護を貰っていたら、教会で会えるんじゃにゃいの?」

「ミオさんは、その様に言われたんですか?」


 私が首を傾げれば、エイルさんは信じられない表情で聞き返す。いやいや、私が聞いてるんですけど?

 ジョウはジョウで、あちゃーと言いたげに、額を前脚で押さえている。反省の姿勢か? なにかやったの? ジョウ。


ガウガウッやったのはお前だ!」

『やったのは、お前さんじゃ!』

「うぉ!?」


 内外から聞こえた二つの声。あの。もうちょっと声量を下げてくれません? 頭がくらくらする。


 ジョウの突然吠えた声に、エイルさんもビックリ。目を瞬かせてこちらを見ている。


「なにかありましたか?」

「どうやら……教会で神様に会えるにょは、私だけだったみたいです」


 キャンキャンと吠えるジョウの内容からして、秘匿情報だったらしい。


「それはそれは……」


 エイルさんは、ここぞとばかりにほくそ笑んだ。なぁに?今までの仕返しでも考えてるの?


『エイルに聞くのじゃ! 聖域の立ち入りの許可はいらぬのか? とな』

(えぇ〜。そもそも、ガイア様が手紙で断言してくれてたら、こんなことにはならなかったんですよ?)

『だから聞くのじゃ! 奴には、喉から手が出るほど欲しい利権のはず。何故【加護】と聞いて、一番にこれを思い出せんのじゃ!? 加護を持つ者だけの特権じゃぞ!?』

(は〜い)


 さては手紙をくれた時点で、協議中かなにかだった? ガイア様でも、即決出来ない事あるんだね?


「エイルさん。ガイア様が一つ聞きたいことがあるらしくて……」

「え? なんですか?」


 ガイア様と言った瞬間に瞳を輝かせるとか、現金か?


「ガイア様が、聖域の立ち入りの許可はいらにゅのか? と仰っています」

「…っ!?」


 私の言葉を聞いたエイルさんは、これでもか!と言わんばかりに目をかっぴらく。


「そうでした! 驚きがありすぎて、すっかり失念していました! 加護と言えば、聖域の立ち入り権!」 

『そうじゃそうじゃ! 加護の特権じゃ!』


 机に乗り出し、目をキラキラさせるエイルさん。その様子に、ガイア様の機嫌も上昇中だ。何故か、扇子を手に舞い踊る姿が見えるんだけど。


(我輩にも視えるぞ)

(思考を読まないでってば)

(顔に書いてある)


 二人? の盛り上がりとは別に、私たちは空気と化していました。あのぉ……私の保証人のお話でしたよね?


(諦めろ)


 ジョウの無情な宣告が、心に沁みた。


「はい! 私は、ミオさんの保証人をやりますよ! ミオさんの特殊さに群がる魑魅魍魎共を薙ぎ払います!」


 やる気に満ち溢れたエイルさんの目は、穏やかではない。正気に戻って! ……っていうか、特殊ってなにさ!?

 

『うむ!よく言うた!では、儂の加護じゃ!』

「…おぉ!? なにか力が漲ってきます! もしや、もう加護の効果が発揮しているんでしょうか!?」

『フォフォフォ』

 

 言葉は聞こえていないはずのエイルさんと、何故か通じ合うガイア様。


「異議あり! 特殊さってにゃんですか!? 私は普通ですよ!」 


 盛り上がる二人に、私は俄然抗議をする。


「ミオさん……いえ、保証人になるのですから、ミオと呼ばせていただいても?」


 私が渋々頷くと、彼は抑揚に頷き、言葉を続けた。


「いいですか?第一に、普通の方は、身分証明に褒章メダルは使いません。もちろん、ミオが必要に駆られて使用したことは存じています」


 だったら、言うんじゃねぇ。

(例えばの話だ。気にするな)

 そうやって他人事みたいに笑ってるけど、私とジョウはワンセットだからね! 死なば諸共だ!


「……第二に、普通の方は、加護を持ち合わせていません。この時点で貴方は、この世界のヒエラルキーの上位に君臨しています」


 私は! 普通の幼児!

(中身は三十二歳。ダンダンダダンダン♪ レッツゴー)

(なぁにがレッツゴーじゃ!)

「カッカッカッ!」

『フォフォフォ!』

 私の怒りの声に、ジョウとガイア様が一緒に笑いを披露する。


「第三に、普通の方は、神具を所持しておりません」


 「カッカッカッ!」

『フォフォフォ!』

 エイルさんの更なる追従に、もはや床で笑い転げるジョウとガイア様。

 くぅ〜!?

 どれも本当のことだけに、反論の余地がない!地団駄を踏む私に、エイルさんは満面の笑みを浮かべた。


「ふふっ!隠しごとをした罰ですよ」 


 パチンッとウィンクするエイルさんだが、隠しごと? と私は顔を歪める。だって、もはやどれが隠しごと分からないんだもの(汗)。

 エイルさん、どれを言ってるの?

 それとも、私を揺さぶる罠ですか?

 

 



 


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