第5話 エイルの混乱
「おはようございます!」
「ガウッ!」
「おはようございます。ゆっくり休めましたか?」
「はい、ゆっくり休めました。エイルさん、昨日にょ今日で申し訳ありませんが、大事にゃ話があります。近日中に、時間を作って頂きたいにょです」
「どうしたんです?鑑定判定はまだ始まってもいませんが……」
用があれば、ララに言ってくれたらいいですよ?と顔に書いてある。研き…んんっ!?鑑定の邪魔になるのは重々承知なんですが、こちらもエイルさんにとっては、重大だと思うんですよ!
「エイルさんにお話があるんです。鑑定が終わった後で構わないにょで、お時間を頂けませんか?」
「私に大事な話ですか…」
敢えて、
「分かりました。では早速、この後にいかがでしょう?」
「…っ!分かりました。おにぇがいします」
まさか、すぐに時間を貰えるとは思わなかったな。でもさ、さっさと終わらせて鑑定をしたい魂胆が丸見えですよ、エイルさん!
(ふっ…あ奴はエルフで長い刻を生きているが、まだまだ尻が青い若造だな)
(なにをカッコつけて言ってるのさ。ジョウがなん歳か知らないけど、オジンなのはわかったよ)
私の念話を聞いたジョウは、苦虫を噛み潰したような顔をした。
(カッカッカッ…)
私がジョウの真似をして笑えば、お鼻にシワを寄せるジョウだった。おぉ…怖い怖い。
♢
「さて、お話とやらを伺いましょうか?ミオさん」
「はい」
朝食が終わり、私たちはエイルさんの応接室に通された。お互いが対面になるようにソファに座り、ジョウは私の膝に座った。
エイルさんの後ろには、ゼフさんが立っている。
(えっと、ゼフさん込みで話す?)
(それは、エイルが聞いた後の判断に任せる。とりあえずは人払いをしてもらえ)
(うん)
そうだよね。ゼフさんはエイルさん家の執事さんだし、私たちが決めることではない。そう決めて、口を開こうとした瞬間、「ゼフ。すみませんが、私が呼ぶまで退室して下さい」
「畏まりました」
エイルさんがこちらの意図を悟って、人払いをしてくれた。
エイル Side
「さて、これで始められますか?」
「ありがとうございます。では早速……エイルさんは鑑定が出来ますか?」
「えぇ。出来ますよ」
なんなら、昨日鑑定を行いました。見ず知らずの人物に鑑定をするのはマナー違反ですが、魔従僕の末裔などという怪しい人物には鑑定が手っ取り早かったからです。しかし、見事に弾かれたのです。彼女は、隠蔽の上位スキルを持っているに違いありません。
「今から無防備ににゃりますにょで、鑑定してもらえますか?」
無防備。言いえて妙だですね。常時隠蔽が可能なスキル保持者ですか。常時隠蔽をするほどの秘密とは、一体なにを抱えて生きているんでしょう。
それにしても、いざ本人から鑑定をしろと言われると、なにかの罠と思えて仕方ありませんね。
「それは構いませんが、急になぜそのような?」
「エイルさんは、魔従族が転生者だったのをご存知ですか?」
「なっ!?…どこでそれを!?」
彼女の口から出た言葉に、私は腰を浮かしてしまった。何故なら魔従族が転生者だったという記録は、古い一冊の書籍にしか書かれていない…ほんっとうに限られた情報だったからです。
「どこでと言われても…里で?」
「なるほど。これは、メダルの鑑定に信憑性が増す証言になります。魔従族と限られた者しか知らない情報ですからね」
多少鼻息が荒くなっているが、許してもらいたい。研究者にとっては、垂涎の情報保持者なのだ……そして、彼女が隠蔽を施している理由がなんとなく理解できた気がした。
「もしかしてですが、神の加護を持っていたりしますか?」
魔従族の七割は、神々の加護を持っていたと言われている。加護が無くても、強力なスキルを持ったものがほとんどだった。
「はい。今回の鑑定依頼は、その加護本人によるもにょすから」
「……は!?一体なにを言って『私も今でも迷っていますよ。エイルさんを巻き込んでいいにょか。でもジョウが言うには、五分五分の関係ににゃるらしいにょで思い切って頼んでいます』…五分五分って、持ちつ持たれつの関係ですか?私とミオさんたちが?」
「はい、そうです…これを読んでください」
そう答えながら、ガイア様から貰った手紙を鞄から取り出し、エイルさんに差し出す私。エイルさんは少し躊躇った後、手紙におずおずと手を伸ばした。
「……」
「……」
ガイア様の手紙を読み終えたエイルさんは、一言も喋らず、行儀悪く、ソファの背もたれへと身を投げだしていた。部屋は静寂が支配していた。
「……これは、本当にガイア様の手紙なんですか?」
「そうですよ」
「
「わ!?頭に声が…これはジョウが?」
「そうですにぇ。あまり私以外に念話で話しかけることはにゃいんですが、じれったいにょが嫌いですから、発破を掛けたんじゃにゃいでしょうか?」
谷よりも深い眉間の皺を刻んでいたエイルさんは、今は困惑の表情を浮かべていた。
「
「もう一度『嫌です』…何故ですかぁ!?」
ガイア様の手紙を何度見ても変わらないよ!それより、さっさと鑑定して欲しい。時間は有限なのだ。
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