第22話 ガイアのフォロー
(そんな呑気なことを言ってる場合か?)
私の様子をジト目で眺め、苦言を呈するジョウ。なにか呑気なことを言ったかな?神様でも失敗することはあるでしょ?現に、ここにいる私が証拠だ。
「え?にゃんで?」
(とにかく、調薬釜を鑑定してみろ)
さっきから呆れっぱなしのジョウは、それ以上言うつもりはないみたい。伏せの状態でそっぽを向いた。
「うん。鑑定」
調薬釜に意識を強く当てれば、鑑定結果が浮かび上がる。
鑑定〚調薬釜〛
創造神ガイアの新神具。その名を調薬釜。薬の製作と知識を搭載した道具。ガイアが年甲斐もなく、神力全開で、自重なしで製作した神具。
素材の抽出・分解・合成・製薬ボタンがあり、所持者の負担なく製薬も出来る優れもの。
「え?これじゃ、いざという時に自分で作れにゃいじゃにゃい」
『スキルの上達には、調薬を繰り返し行うしかないが、そこはミオの努力に期待しよう』
またしても、ガイアさまの言葉が繰り返される。ガイア様の勘違いが始まりとはいえ、これは困ったぞ。焦りにも似た焦燥感が、私を襲った。
「全てが機械任せじゃ、自分の経験に
この調薬釜は有り難い。有り難いが、身に余るのが正直な所だ。
スキルの成長は経験値が糧だ。練習や経験を積まないと、レベルは1のまま。
魔道具だって万が一のはある。いざという時に使えない事態は避けたい。そんな時に、自分の手で薬は作れませんとか笑えない。なにか解決策……はっ!?こんな時の鑑定だ!
「鑑定!」
【名前 ミオ・テラオ
魔力量 200000
属性 火 水 風 土
スキル 行儀作法4 事務処理5 商談4 体術4 剣技3 語学4 MAP1 鑑定1
称号 転生者 創世神ガイアの加護 女神ウルシアの加護】
「え?……New??調薬釜を鑑定!」
鑑定〚調薬釜〛
転生者が確認終了の為、調薬から調薬釜に更新しました。調薬釜は自動充魔の不壊が付与されている為、未来永劫可動が可能です。製作したい薬の名前をメニューから選び、後の作業は、調薬釜の指示に従って下さい。
「うわぁ、やっぱり全自動だ。しかも不壊が付与されてるにょか。神様の付与だから、絶対領域だ」
これを見た私は、とりあえずホッと肩の力を抜く。焦ったのが馬鹿みたいだが、予想を超える事態は、私の範疇にはない。だがそうか。神様の力。絶対的確信があれば、安心だ。
だけど、素材の採集には行かなくちゃいけないし、やっぱり勉強は必要だね。
「でもにゃあ……誰に習う?この世界には来たばっかりで、そんにゃ当てにゃいんだけどにゃ」
(いるではないか。とっておきなのが)
頭を上げ、毅然とした口調で諭してくる。なんか、自分だけ分かっているみたいでズルいんですけど。
「ん?ジョウ、どういうこと?」
ヒントプリーズ!
(いるだろう。今。現在進行形で、一番手っ取り早い身近な奴が)
「もしかして、エイルさん?」
ハッと我に返る。そうだ!私は今、国一番の賢い人の家にお邪魔している!今日会ったばかりだから、うっかりしてた。
(そうだ。ガイア様もそのつもりで、手紙に
↓
『賢者エイルは善人じゃ。とんと世話になるがよい。褒美といってはなんじゃが、ミオの世話を引き受けてくれた暁には、儂の加護を授けんこともない……と、賢者に伝言よろしゅうに。
きっとエイルの知識・経験が、ミオの肥やしになるじゃろうて』
↑
皆様(←誰)、覚えておいでだろうか?ガイア様の手紙に、こんな内容があったのを。
(エイルから学べと書いたのは、自分の失態に対してのミオへのフォローだろう。その対価に、エイルへの加護の付与を示した。聖域への出入りが自由に出来るとあれば、奴は両手を上げて喜ぶさ)
私はジョウの話を聞いて、「それでだったにょかぁ」と呟いた。
(なにがだ?)
ジョウは、なんだかとっても不思議そう。つぶらな金の瞳が可愛らしい。
「ガイア様が、突然エイルさんにも加護を与えるとか言いだして、不思議に思ってたんだよにぇ。私は、ウルシア様たちの事故で転生することににゃたから、お詫びに加護を貰ったけど。エイルさんは私にょ世話をするだけで貰えるにょって?」
ちょっと不公平だよね?決して驕っているわけじゃないけど、なんかこうね……得も言われぬ違和感というか。加護を貰えるハードルが違いすぎないか?
(そうとも限らないぞ。多分、ガイ ア様はその先も考えているんだろうな)
「え?どういうこと?」
私、どういうこと?ばかりだな。自分の頭で考えろって話だけど、何故か頭がとっても重たいの。
(考えてもみろ。人権というものが確立していない中世の異世界だぞ?後ろ盾もなにも持たない四歳児が、ある日いきなりポーションを売りに行っても、追い返されるのが目に見えている。それどころか、その稀有な力に目をつけた欲深い奴に捕まって、監禁される未来しか見えん)
「いやぁ〜」
ジョウの妄想だが、大いに現実味のある話に、私はムンクの叫びを披露する。
(ガイア様は、自分のミスで調薬釜を作ってしまったばっかりに、ミオに余計な迷惑がかかることを憂いた。だから、ミオが相手をすべき面倒な事柄の全てを引き受け守る対価として、エイルに加護を授けると仰った。まぁ、ガイア様が断言したわけではないから、我輩の想像論に過ぎんがな。ミオがのびのびと異世界で暮らすために、ガイア様が取り図ってくださっていることは、感謝しなければならないぞ)
「そうだにぇ」
私は、自分の思慮の浅さが嫌になった。ガイア様の提案は、なにもかも私の為だった。私は心の中で、ガイア様に深く感謝した。
「ただ……エイルさんにょ研究時間が割かれるにょは心苦しいにゃ。研究室に引きこもるほど、研究が大好きにゃんだろうし」
私が眉尻を下げ、エイルさんに告げるべきか悩んでいると、ジョウはその背中を押してくれる。
(なに。本人がよければ、ミオの意思は関係ない。これは、ガイア様とエイルの目的が一致したwin-winの関係だ)
「えー……良いのかにゃ、そんにゃ考えで」
(大丈夫だ。とにかく、エイルに話さんことには始まらん。奴に時間を作ってもらえ)
「はぁい」
私が渋々納得すれば、扉をノックする音が響いた。
「ミオ様。起きておられますか?夕食のお時間です。お迎えに上がりました」
「ララさん!起きてますよ」
ララさんの声に、私はベッドから飛び降りて扉に向かった。
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