第20話 エイルさんのお屋敷

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本文。


「ここが、私の家になります」


 そう言って立ち止まった場所は、ドデカイ屋敷が建っていた。

 屋敷だと聞いていたが、ここまでとは。賢者って儲かるの?この規模は、貴族と言っても不思議ではない。

 堅牢な煉瓦造りの二階建て。

 お庭も広く、中庭を囲む様に、コの字に建てられている。


「旦那様!おかえりですか?」


 私たちがいる門から遠く離れた玄関で、誰かの声が聞こえた。

 旦那様って、エイルさんかな?


「なにを騒いでいるのですか?ゼフ」 


 おぉ!この人がゼフさんか。ローハン隊長が言っていた、エイルさんの執事さんか。

 シルバーグレイの髪を後ろに撫でつけ、オールバックだ。出来る執事みたいでかっこいい。日本で見たことがある執事服を着ているが、私は不思議な点に気づく。前から見ただけであるが、服にシワが一つもない。


(すげぇ!髪型もそうだけで、服からもやり手の匂いがする!)

(ふむ、隙がないからな。戦闘も得意だろう。しかし、良い家ではないか。庭も広そうだし、ストレスなく過ごせそうだ) 



 前脚で顔を拭いながら、満足そうに念話で話すジョウ。チャリチャリと、首元に掛けられた従魔の印が鳴る。


(それなら安心だけど。一週間は、短いようで長いから)


 東門の詰所を出る際に渡された従魔の印は、水色のガラスで出来ていた。長方形の形をして、真ん中には✡の金色のマークが彫られている。 


「お日様にょ光に輝いて、キラキラしてるよ。きれぇにぇ綺麗ね

(ふんっ!邪魔くさくて敵わん!)


 そっぽ向いてるけど、尻尾は嘘つけないからね?無駄な抵抗は止めて、素直に認めたまえ。


「ルイ様から連絡を受けまして、準備は整えてございます」

「ありがとうございます。さぁ、詳しいことは中で話しますから。ミオさんたちも、中へどうぞ」

「お邪魔します!」

「ガゥ!」

「ようこそ、マグワイア邸へ」


 アプローチの部分を歩きながら、庭に咲くたくさんの花を見る。

 きっと腕の良い庭師さんが手入れしているんだろう。花と花が喧嘩すること無く、程よい位置に植えられている。


「花が気になりますか?」

「はい。とてもいい香りで癒されます」

「ふふふ。まだ四歳なのに、既に疲れているんですか?」

「ここ三日程は野営だったので、フカフカお布団が恋しいです。お庭の芝生に転がりたいです。お日様ポカポカ」


 お布団のフカフカ手触りを想像して、手がワキワキと動いちゃう。


「ふふっ。では今日は、ぐっすり寝る前にお風呂に浸かって、疲れを取って下さいね」

「はい!ありがとうございます!」

「さぁ、こちらからお入り下さい」

 

 開け放たれた玄関を潜ると、そこは別世界。


「うわぁ~」


 二階へと続くのは、優雅な曲線を描いたサーキュラー階段。この階段は、広い敷地があるからこそできる設備。

 玄関も広く、コツンっと鳴る床は、大理石が一面に敷かれている。中二階から降り注ぐ日光を浴びて、燦然と輝きを放っている。


「うひょ〜」


 中二階にある踊り場は、多角形の形をして両側の建物と繋がります。

 天井までを吹き抜けにしており、とても開放感がある造り。

 

「綺麗な所ですにぇ」

「ふふっ、ありがとうございます。元々は、誰も住まなくなって放置されていた邸宅なんですよ?頑張って、リフォームしたかいがありました」

「ほぉ〜!ではこのお屋敷のセンスは、エイルさん好みにゃんですね!私は好きです」

「ふふっ。庭の花同様、屋敷も気に入っていただけてなによりです。落ち着いたら、散策して頂いて構いませんからね?」

「ありがとうございます!」


(研究を抜きにすれば、穏やかないい人なんだけどな)

(我輩も、煩いのは苦手だ)


 ジョウは聴力が良いもんねぇ。でもエルフもいいはずなんだけどな?


「ミオ様、お部屋にご案内致します。夕食までに、お風呂で身体を休めていらして下さい」

「はい、ゼフさん」

「ゼフとお呼び下さい」

「歳上の方ですし、私はさん付けが安心です」

「ではその様に」

「旦那様」


 ゼフさんの茶色の瞳に、否の色が宿る。


「ミオがそう言っています。過ごしすいほうが良いでしょう。慣れれば、自然と敬称は取れるでしょう」

「畏まりました」

(そうかなぁ?)


 内心で首を傾げる私に、エルフさんは微笑んでいた。


「ララ。ミオさんのご案内と沐浴の補助を」

「はい。こちらへどうぞ」

「はい!」


 私はララさんというメイドさんに誘われ、、二階へと足を踏み入れたのだった





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