第19話
【・ジョウの役目は、ミオ・テラオの護衛のみであること。
・契約者エイル・リュタ・ラ・マグワイアの易になることはないこと。
・契約者が、ジョウに命令は出来ないこと。
・街に滞在中の期間、契約者の不利益になる行動はしないことを誓うこと。唯一の例外は、ミオに危険が迫った場合のみとすること。
・契約者に不利益な行動を起こし、契約者に損失が生じた場合、その補填を義務とすること。
・補償金として、金貨50枚を預け金として前払いをすること。
・街を滞在を問わず、契約を解消する時に、預け金の返金を遂行すること。】
こんなものかな?
私はリード紙に書いた条件を再読しながら、羽根ペンを机に置いた。
「おっ!?書けたか?」
「はい。こちらからの条件はこんにゃものでしょうか?後は、エイルさんの条件を詰めてもらえれば……」
と、静かなエイルさんに視線を向ければ、彼は真剣な眼差しでメダルを
「ありゃあ、どうやら本物で間違いないな」
「……ですにぇ」
まぁ、そうですよね。むしろあの様子で偽物と言われたら、エイルさんの正気を疑いますよ、わたしゃ。
「それとだな。色々あって忘れていたが、街に入れるみたいだからな。書類も作ろう。それと街に入る者は、この水晶に手を置く決まりなんだ。手を置いてくれないか?」
「はい」
キタコレ〜。
占い師が持っていそうなデカイ水晶を目の前に、テンションが上がるわぁ〜。
でもこの世界の水晶は、なにを感知するのかな?
「犯罪歴、偽証ともに問題なしだな。もういいぞ」
見事、通過出来ました!……え?魔従族は詐称だって?いやいや、魔従族のご先祖様公認だし!
♢ ♢
「これはこれは、ルイ様ではないですか!どうされましたか?」
ルイ様は、旦那様のお友達であるローハン様の部下だ。
そんなルイ様の兵士姿に、私はなにかあったのかと少しだけ慌てた。
「ご安心下さい。特に火急の件は発生しておりません。私はローハンの命で、こちらの手紙を貴方に届けに来ました」
「私に?」
不思議そうにしながらも、両手で恭しく受け取るセブ。
「ローハンからの言伝です。ご確認下さい」
私は、その返事を持ち帰らなければならないから。
「畏まりました」
ペーパーナイフを懐から取り出し、ザッと切る様は慣れたものだ。職業柄というべか、華麗な手捌きだ。
「ローハン様の言伝をしかと承りました。我が主が保証人となるならば、使用人一同、心よりお待ちいたしております……と、ミオ様とジョウ様にお伝え下さい」
手紙に視線を走らせ、読み終えたのか。丁寧に封筒に終い、懐に忍ばせたゼフ。彼からの返事は単純明快。簡単に言えば、お嬢さんと魔獣を受け入れる。ただそれだけ。
「確かに、承りました。それでは失礼致します」
「お勤め、ご苦労様でございました」
ゼフの一礼を背中に受けながら、俺はエイル様の屋敷を後にした。
♢ ♢
「リード紙の条件ですが、本当にミオさんが考えたのですか?大変良く出来ています」
「だろ?この歳で、かなりの教養の高さが伺えるんだよ。お前の屋敷にいる間に、学園の試験でも試してみたらどうだ?」
エイルさんに、いたずら心で囁く悪魔のローハン。
だが、ごめん被る。なにが楽しくて、異世界に来てまで試験を受けなければいけないのか。なにか、必要に駆られてとかの試験ならまだしも。面白半分に受けるなど、真っ平ごめんだ。
「私は真贋判定で忙しくなりますから、そんな暇はありませんよ」
エイルさんは通常運転だが、至極まともな理由で却下していた。いいぞ、もっとやれ。
「とりあえず、私もこの条件以外に浮かびませんし、これでスキルを行使してしまいましょう」
「ありがとうございます。お世話ににゃります」
「がぅ!」
「こちらこそよろしくお願いしますね」
再度の挨拶の後、エイルさんにより、契約は手早く行われた。
彼の手から出た光が、ジョウの身体が光に包み、だんだんと収束していく。
「……はい。これで契約は完了ですね。今のジョウの主は私になっていますが、契約通り、ミオさんとジョウは今のままで構いません。ジョウには、後ほど従魔の印を渡しますね」
「分かりました」
光が完全に消失したのを機に、エイルさんの説明が行われた。
「真偽判定は、最低でも一週間は頂きます。その間、我が家に逗留して頂きます。ルイがまだ戻っていませんが、恐らく大丈夫でしょう。滞在中は、自由に過ごして下さって構いません。なにか分からないことがあれば、家の者に聞いて下さい。家の者は、後ほど紹介しますね」
「はい、分かりました」
認定証が貰えるまでは、お屋敷に缶詰だと聞いている。
お屋敷にいる間は暇だろうし、ガイア様にせっつかれた調剤スキルの鑑定を行うとしよう。
ガイア様の加護については……しばらく様子を見てからでも遅くないだろう。
私とエイルさんは、今日であったばかりだしね。いきなりガイア様の加護だのなんだの言っても、怪しまれるか、混乱させるかのどちらだ。
ただでさえ、魔従族のメダルを手にして恍惚な表情を浮かべた危ない人に成り下がっているのだ。
是非とも、冷却期間を置くべきだろう。
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