第9話



 翌朝。

 簡単な朝食を済ませた私は、加護について鑑定していた。


「まず、ガイア様の加護を見てみよう」


【創世神ガイアの加護…ユーザフェースを創造した神・ガイアの加護。

 効果は、加護を授かった者の守護者を創造(チャンスは一度のみ)

 やり方:魔法紙に姿形を描き、能力の詳細を書いて、「クリエイション」と唱えれば、加護は発動する】

 

「これは、ホムンクルスの神族版?幼児化のお詫びで、迷彩卵を貰ったのに、ちと大盤振る舞いじゃにゃいかにゃ?……次、ウルシア様」


 あまりに膨大な内容に、私は気が遠くなるが、まだウルシア様が残っている。気を取り直して、鑑定を進めることに。


【女神ウルシアの加護……ユーザフェースを管理する女神・ウルシアの加護。 

 効果は、女神の祝福。経験値五倍。(グループメンバーは1.5倍)←メンバー登録は、五名まで可能。


「これが、ウルシア様の加護の効果。グループメンバーって…あぁ。にゃるほど」


[ グループメンバー 登録欄

  1.____________ 登録/削除  

  2.____________ 登録/削除

  3.____________ 登録/削除

  4.____________ 登録/削除

  5.____________ 登録/削除 ]

 

 

 グループメンバーに意識を絞れば、鑑定が更なる仕事をしてくれる。これは、私が仲間に入れたいと思えば、登録出来るんだね。


「しかし、削除ボタンが怖い。登録が一名に固定というわけじゃないのは良いけど、削除はにゃるべく使いたくにゃいにゃ」


 これに登録する時には、相手に事情を話すよね?加護をバラす覚悟が出来た相手ということだ。だから、そんな相手を削除?……使用することがないように祈ろう。

 

『どうだ?加護の効果を見たか?』


 ジョウが、朝の運動会から帰ってきた。引き締まった体躯から忍び出す足が、悩めかしい。


「見たけど……ジョウも、ウルシア様の加護を貰ってたよにぇ?」

『うむ!我輩の加護の効果は、経験値十倍と女神の励ましだ!』

「励まし?私のは祝福だったけど……」

『個々によって、少しずつ違うぞ?我輩は、自身に強化効果がある。ミオの祝福は、相手にバフを付与する効果がある。効果は、15秒間の100%上昇だ。注意すべき点は、クールタイムが15秒あることだ』

「ゲームみたいだにゃ」

『確かにそうかもしれんが、ミオにはこれ以上のスキル追加は危険だからな。加護や卵、我輩で、周囲の守りに徹した結果だろう。神々は、ミオを大切に思っているという証拠だ』

「有り難いけど、こそばゆいにぇ。私はにゃにもお返しは出来にゃいんだけどにゃ」


 私は、頬をポリポリ掻きながら、曖昧に笑う。手厚すぎても、反応に困るのだ。遠慮の気持ちが湧いてくる。さすが元日本人。

 私のそんな気持ちを知ってか知らずか。ジョウは、きっぱりと告げた。


『なぁに。ガイア様たちは、そんな気持ちは欠片もないぞ。ミオが異世界を楽しめるように、精一杯手を尽くしてくれたんだ。感謝こそすれ、遠慮することはない』

「…そうか、そうだよにぇ。ガイア様は、生活用品にも気を遣ってくれるぐらいだもん。本当に、有り難いにぇ」

 

 心が満たされるのを感じながら、私はだらしなく愛好そうごうを崩す。


『ふっ、ミオの自然な表情は可愛いな。普段から、そうやって素直にいればよい』

「どういう意味!?私は、普段からすにゃおよ!?」


 ジョウの誂いに、私はプンスコと怒る。


『ははは』


 私の怒りなど、どこ吹く風と言わんばかりに笑い飛ばすジョウ。


「遊ばれた……。気晴らしに、フリータール王国への行程でも調べよ」

『フリータール王国まではどのようになっているんだ?』


 何事もなかったように参加してきたジョウ。おにょれ!……今日の晩ごはんは、少なめにしちゃる。


「ちょっと待ってにぇ。MAP、オープン」


 なるほど…と、私は枯れ枝に手を伸ばす。朝は、露に濡れて湿った枝が多いから。地面に書くには、ちと不向き。

 私はMAPの地図を見ながら、ガリガリと地面に地図を書き写す。

 

「ここが、私たちのいる浮島。その下が聖国。で、隣がクリーク連合共和国。ここが、様々にゃ人種が集まって作られた国だにぇ……で、その隣がフリータール王国だよ。各国の内側の辺境に接する巨大にゃ丸は、深層の森と言って、広大にゃ森だよ」


 私は、ザーッと大きな大きな丸を描く。


『ふむ。これが、この世界の未開地だな』

「うん。この浮島と同じように、天然資源がガッポガッポだと思う」

『言い方はどうにかならんのか?まぁ、ミオの言うように、そう上手い事はいかんがな』

「なん……魔物?」


 ジョウの言葉に、私は直ぐに原因が思い浮かぶ。


『そうだ、魔物の存在だ。この深層の森の深部には、高ランクの魔物が跋扈しているだろうな』

「そんにゃのいたら、危険を冒してまでは、採取には行けないにぇ」


 残念…と、私が項垂れていると、ジョウは言う。


『そんなことはない。我輩と一緒なら、容易く採取が出来るぞ?』


「そりゃ、獣神見習いのジョウだもん。その辺の魔物にゃんか、目じゃにゃいでしょ?ラノベによく出てくるエンシェントドラゴン古竜がいい勝負じゃにゃい?」


 ジョウがどれくらい強いか知らないが、最上位の魔物ならば、容易いことはないだろう。


『異世界の竜か。地球にも龍はいたが、攻撃は違うのだろうか?是非一度、手合わせをしてみたいものだ』

「地形が変わりそうだから、勘弁よ」

   

 避けられない戦闘以外は、断固拒否である。巻き込まれるのも嫌だが、争うのはあまり好きではないのだ。

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