第5話
「それにゃら、しかたにゃいね。それで、説明は終わった?」
ウルシア様の言を全部信じる訳では無いが、納得しておこう。
『えぇ、もちろん! それより、実体の形はピューマでいいですか?』
「はい、おにぇがいします!」
これから、ピューマと一緒に旅が出来ると思うと、「えへへ…」と自然と顔がにやけた。
単身者で仕事が多忙だと、どうしてもペットが飼えなかったら、諦めてたんだよね。
護衛役の獣神様だけど、見た目はピューマ。それも子供サイズ!浮かれるな、という方が無理である。うん、無理。
二ヘラと愛好を崩すミオに、私も自然と笑顔になる。
私の笑みを見たミオが、恥ずかしさを誤魔化すように、鼻をポリポリと掻いていた。
彼女の髪は黒髪で、瞳は黒曜真珠のように輝き、少し金色が混ざっていて珍しい色彩だ。しかし金の色彩は、神に関わりがある者の証拠だ。
ミオには、それを教えておかなければ。すっかり忘れていた。危ない危ない。
しかし、獣神である彼もまた、毛の色は黒で、瞳は金と茶色だ。人化をすれば、ミオとは年の離れた兄妹で通じるだろう。
『ガイア様からのお詫びの品は、これよ』
そういってピューマ(仮)を地面に下ろし、またもや谷間から取り出したのは、手の平サイズの卵だった。よく潰れなかったね。ウルシアの谷間は、四次元ポケットなの?
でも、お詫びの品を見た私固まった。だって卵なのに、虹色なんだよ?ファンタジーな物が出現したのだ。俄然興味が湧いて、疑問も湧いた。なんの卵だ? と、私は首を傾げた。
そんな私の疑問に、ウルシア様が説明してくれた。
『これは、鳥の卵なんだけど‥‥まだなんの鳥かは分からないの』
「へ?」
『迷彩卵ロストカラーエッグという、とても希少な卵なの。生まれてくる種類は、魔力で決まると言われているわ』
「魔力‥私にょ?」
思わず、自分を指差してしまう。
『えぇ、そうよ。この卵には意思があって、注がれる魔力によって、生まれる鳥を決まるの』
「にゃるほど……私の魔力ですか」
私の言葉に、頷いた女神さまはどこか不安そうだ。
「どうしました?」
『ガイア様が、お詫びの気持ちで選した物なんだけど、受け取ってくれる?』
おぉう。私がいつまでも眺めていただけだったから、誤解している。
「もちろんです!こんにゃワクワクした気持ちは、神界以来です!有り難くいただきましゅ!!」
私はなるべく不安を取り除くように、笑顔で受けとった。焦って早口になったから、噛んじまったぜ!
いや、気に入ったのは本当だけどね!?さすが異世界!不思議な卵、ゲットだぜ!?
『それじゃ私は、帰りますね。周囲の国の情勢などを簡単に記した書類を、インベントリに入れておきましたから。旅路の参考にして下さい』
「はい!色々ありがとうございました!」
私の言葉を最後に、笑顔で手を振りながら消えていったウルシア様。次に会えるのは、教会かな。
『あっ、そうそう。ミオの瞳に見える金の色彩は、神と縁ある者の証よ。かつて、この世界にも転移者がいたの。彼らは、【魔従族】と呼ばれていたわ。詳細は後ほど、獣神に預けておくわね。誰かに聞かれたら、ミオはその末裔と答えればいいから。じゃぁね』
「……は? え? ちょっ……待て〜!?」
去り際の爆弾発言に、私の口は上手く動かない。所々で漏れる音は、言葉の体を成さず、私の叫びは空へと消えた。
♢
「改めまして、ピューマさん、私はミオです。よろしくおにぇがいします」
肩につかないくらいの長さの髪が、頭を下げたと同時に揺れる。
『吾輩は、獣神見習いの
ふぉぉ!姿がカッコいいと思ったから、名前までカッコいい!私のテンションも上がるというもの。靭やかな肉体が動く毎に、筋肉が唸るぅ!キュンってする。
「影之丞さん!今日はここを拠点にしたいと思いますが、いいですか?」
『そうですね。ミオ様ではテントを張るのは無理ですから、吾輩が致しましょう』
「……?そにょ姿で?」
『確かにこの身体では無理ですが、こうすれば、容易に準備出来ますよ』
そう言うと、彼の身体は淡い光に包まれた。そして、光の中の影の陰影が増す。
「ほぉお〜」
私は、間の抜けた声しか出なかった。だって、光が収まり現れたのは、私と同じ黒髪で、短髪のワイルド系イケメンだったから。瞳は金色。
服装は唐の漢服のようなものを着ていた。鍛え抜かれた身体が、服の上からも丸わかりでえっちぃ。
肌は地黒。黄土色服がとてもお似合いです。所々にある黒の刺繍がセンスいい。
『これなら、問題なくテントが張れるでしょう?』
「うん、そう
『そうでしょうか?』
少し照れたようにソッポを向いた。だが、視線はこちらを気にしている。デレか? 最高か?
『急いでいたので向こうの服のままですが、人里に降りたら、こちらの服を調達しましょうか』
「えぇ?駄目、そんにゃにょ!?」
『そっ、そうですか?』
食い気味に迫る私に、影之丞さんの上半身が引いている。
「そうだよ!?せっかく似合ってるんだし!仕事で来てるんだし。そもそも、人化は必要な時だけでしょう?」
『えぇ…普段は人化前の形態で過ごしますね』
「それにゃら尚のこと、故郷のものは大切にしにゃきゃ!こっちにいる間は、影之丞さんも故郷に帰れにゃいし。民族衣装は大事だよ?私も着物大好きだったし……いいよにぇ!?上手く言えないけど、せっかく持参してるにゃら着るべき。いろいろと勿体にゃい!」
色々と理由を付けたが、最後が本音である。グヘヘ。しかし、滑舌が悪いせいで、いろいろと決まらないな。
『では、服の調達は無しにしましょう。それでは人化したことですし、テントを張りますね。主は、枯れ枝を拾っていただけますか?』
「うん、ありがとう!後、私の事はミオでいいよ。喋り方も硬いし、楽にしよ?」
『かしこまり‥‥分かった。では、吾輩のことは、ジョウとでも呼んでくれ』
「うん、ジョウ!」
お互いの呼び方も決まり、私たちは、野営の準備に精を出すのだった。
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