第2話

 私は改めて、対面に現れたボードを眺めた。すると、転生する予定の異世界の説明書きに気付いた。


「えっと…剣と魔法のファンタジーな世界。中世の時代の文明寄りだけど、トイレなど魔道具の性能が高い一面もあるよ。不便さもある情緒ある生活と、文明の機器が混ざり合う世界。戦争もあるけど、平和な国も多いから、そこがオススメ!…かぁ」

「どうじゃ?転生出来そうかのぉ?」


 ヒョイッと覗き込んできた創世神様に、私は笑顔で頷いた。


「はい!異世界は、戦争以外にも危険な事はたくさんありますが、それは地球も一緒なので。戦争地域を除いた場所で、暮らしていきたいと思います」

「そうじゃな」


 創世神様は、私の意見に賛同してくれたようで、にこやかに頷いてくれている。


「さて、スキルはなにが欲しいかのぉ?」

「そうですね。まずは、初心者三点セットは外せませんね」

 と、人差し指を立てた。


「三点セット?」

 と、首を傾げて不思議そうに聞く創世…言いにくい。名前で呼んでもいいかな?


「構わぬよ。ガイアと呼んでくれ」

「ありがとうございます!…それで、3点セットなんですが、言葉は通じない・土地勘はない・菌には耐性がない…ということで、言語理解、MAP、鑑定なんです」

「MAPとは、地図でよいのか?」

「そうですね。ラノベでは、言った場所と、その周辺の表示しかでないこともあるんです。私は拠点を決めた中心地と、その周囲を動く予定なので、その辺りを出してくれると助かります」

「なるほどのぉ。ならば、ミオのいる国を中心として、 360℃の周囲の国々までの地図表示とするかの」

「ありがとうございます。その地図は、指で伸縮操作する機能を付けれますか?」

「伸縮操作とな?」

「はい。こうやって、見たい場所を拡大したり、縮小したりして操作する機能のことです」

「ほうほうほう。便利じゃな!是非付けよう。他にはあるかの?」


 とても意欲的なガイア様を見て、私は首を傾げ疑間に思った。だが、のり気になってくれるのはとてもありがたい。


「アイテムボックスが欲しいです」

「ふ~む。ちなみにアイテムボックスは、どういう理由かの?」


お髭を撫で付けながら聞いてくるので、私の説明は続いた。

 

「自慢ではありませんが、仕事はデスククークで万年運動不足の体力無しです。そんな私が、急に大荷物を持って移動するのは無理があります」


 私は、非力な現代人なのだ。友達のバックパッカーみたいに、20kgや30kgもある荷物を背負っての移動は無理である。

 それに、降ろされる場所にもよるが、森では、魔物や動物の襲撃にも気を配らるければならない。とてもではないが、無茶である。


「商人も視野に入れてます!馬車移動は構いませんが、日本人にとって、食は命の次に大事!鮮度抜群な食品も諦められません!」


 ドッパーン!と、坂本龍馬よろしく、桂浜の波が背後を盛り上げるほどの力説だ。


「生鮮食品を望むなら、時間停止付きのインベントリかのぉ。アイテムボックスは容量に制限あるが、インベントリは容量にも制限はない。ミオにはもってこいじゃろ?」

「インベントリ!…こちらの世界では、そのような設定なんですね!」

「設定というのがよく分からんが、アイテムボックスは百人に一人。インベントリは、一万人に一人のスキルにしておる。どちらが貴重かは、一目瞭然じゃろ?」


 スキルにも、差があるんだな。きっと、人気なのとそうでないのがあるぞぉ…。これが、追放ざまぁのストリーリーの始まりか?


「それは、明確な差ですね。アイテムボックスの収納量は、個々の魔力が大きいですか?」

「うむ、そうじゃ。魔力量で、容量は決まるぞ」

「なるほどぉ…」

 

 ラノべのいいところは、似たようなストーリーでも、こういう細かな設定の違いに楽しさを見出だせるところだ。そんな違いや、キャラクターの魅力にワクワクした人たちも少なくないだろう。


「後は、なにが欲しいかの?」

「インベントリに、あちらの服と下着を数日分、水、ナイフ、調理道具に食器や食料、アイテムバッグと見せかけた鞄、一ヶ月くらいの生活費が欲しいです!それと質問ですが、これから行く世界は、医療はどうなっていますか?」


 私は、生きる上で無視出来ない問題を、ガイア様に尋ねた。


 様々なラノベでは、やはり治癒魔法やポーションの類の存在感が大きく、正しい治療などの知識に乏しい傾向がある。

 怪我は治せるが、病気は緩和治療しかない…という小説もあった。


 ガイア様の返事次第では、私が希望するスキルは増えることになるだろう。


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