第2話 ステータス


「ミオが考えている通り、治癒魔法やポーションが主じゃ。医者もいるが、特別階級に囲われとる。いわゆる侍医という職じゃ。領都や街には薬師ギルドがあって、薬も揃っているじゃろうが…小さい町や村には、薬師の存在さえも珍しいかもしれん。じゃが、辺境や広大なもりがある場所近辺には、薬草や豊富な資源目当てに、薬師が住み着いとるかもしれんのぉ」

「分かりました。では、病気になった時に備えて、薬が作れるスキルが欲しいです」

「ふむ、確かにな。せっかくお詫びとして転生してもらうのに、すぐに死なれては困るからのぉ……よし、調薬というスキルはどうかの?」

「ちょうやく…」

「うむ。ミオの世界では、調剤師という職があるな?」

「はい、あります」 

「調薬スキルは、その職そのものと思ってもらって良い。調合レシピから薬効、更に材料の詳細情報までを網羅したスキルじゃ。スキルの上達には、調薬を繰り返し行うしかないが、そこはミオの努力に期待しよう」

「もちろんです。ここまで整えていただけたんです。後は、自分で頑張ります!ありがとうございます」

「どれ、こんなところかの?特別隠蔽と称号は、儂とウルシアからのせめてもの詫びじゃ」

「ありがとうございます。でも、特別隠蔽ってなんですか?」


 称号はなんとなくわかる。きっと創世神様や女神の加護、転生者とかでしょ?しかし、それは隠すほど物騒なものなのか?


「特別隠蔽は、鑑定上位スキルの神眼でも見破れぬ。とっておきの隠蔽じゃよ。称号は物騒ではないが、二神の加護を持つ者は、この世界の歴史で至上初じゃ。十中八九、教会の者が騒ぐからの」


 インベントリでも思ったが、やはり、スキルに上位や下位があった。しかしここでも、神が警戒するほどのヤバさなのか?教会よ。教会って、どれを読んでも良い印象がないな。


「ありがとうございます。……へんな輩は、どこにでもいますしね」

「うむ。不埒な輩は、思う存分成敗するがいいぞ!儂の世界は、やらねばやられるからな」

「しかと心に刻みます」


 地球…いや、日本の常識でいれば、あっという間に潰されるだろう。郷に入っては郷に従えだ。やられたら、やり返すという気持ちは常に持ち合わせよう。だけど同時に、情けは人の為ならず…も持っていよう。


「あっ、ガイア様。魔法属性ですが、火水風土の四属性でもいいですか?魔力量は、お城に仕えれる量があれば助かります」

「ふむ、城と同等じゃな?ならば、これくらいが妥当じゃな。他にはないか?とりあえず、これが今のスキルじゃ!」


【名前 ミオ・テラオ

 魔力量 200000

 属性 火 水 風 土

 スキル 行儀作法4 事務処理5

商談4 体術4 剣技3 語学4 MAP1 鑑定1

 ユニークスキル転生のお詫び 言語理解 インベントリ 調薬 特別隠蔽

 称号 転生者 創世神ガイアの加護 女神ウルシアの加護】


「おぉ、凄い!豪華なラインナップ!」


 人生初のステータスに燥ぐミオだったが、後に、はしゃぎ過ぎたことを痛感することになる。


「生活魔法は、五歳の祝福の儀で授かるからの。後のレベルアップは、ミオ次第じゃて」

「ありがとうございます!」

「よいよい……おぉ、そろそろ時間じゃな。細かい事は、手紙にしたためて送るから、向こうで読んでくれ。では、気を付けてな」

「行ってきます!」


 周囲が淡く光りだし、私の意識は静かに沈んでいった。必死に追いかけてくるウルシアの姿があったことなど知らずに。



「しらにゃい空だ」


 チチチッ、チュンチュンと平和に囀さえずる鳥たちが舞う空を見ながら、独ひとりごちる。


 地球にある月は、昼は白く遠くにあった。触れる距離にはなかった。

 だがこちらの月は、「本当に触れないだろうか」と思わせる近さだ。惑星が間近に迫ってくる臨場感だ。体験するには、映画館の3Dで、鑑賞してみることをお勧めする……映画の種類では酔うこともあるので、注意が必要だ。


 臨場感がある3D映画とかで、納得できる様な景色である。


 木々が視界を邪魔しているが、神秘的な輝きはそれを物ともしていない。寧ろ木々に陰影がついて、視覚の美術的感覚に一役買っている。


「綺麗だにゃ。こんにゃ月が二個もあるにゃんて、贅沢だにゃあ」


 異世界転生は成功した私は、余韻に浸っていたけれど。なにか違和感がある。舌っ足らずなのは、もちろんだが。


「私の声、高くにゃいか?」


 私は、寝転がっていた身体を起こす。するとそこには、小さいあんよとお手々があるじゃありませんか。


「まぁ、にゃんと可愛らしいぷくっとまるっとしたお手々でしょう?……」

 と現実逃避をするが、悲しいかな。現実は、なにも変わらない。


「‥‥にゃんで、若返ってるんだろ?というか若返るにしてもやり過ぎだろ~!?…もしかして、スキルが多かった?それに、身体が耐えれんかったとか?もしそうにゃらば……仕方にゃいか?」

 ガイア様も乗り気で付けてくれたから平気かと思ったけど、やっぱり駄目だったか。最悪、消滅があり得たかもしれないな。四歳くらいで済んで良かったと思うべきだろう。


『そうですよ!私のおかげなんですから、感謝してくださいね!』

「脳内に直で聞こえるとか、嫌にゃ予感しかにゃい」 

 時々、呂律が回らないのはご愛嬌だ!気にしてはいけない。

『もぉ~、嫌な予感とか失礼ですね!ウルシアですよ、女神です!』

 と姿を現した女神は、頬を膨らまして『調整が大変だったんですよ!?』とオコ気味な女神様。

「分かってますよ。ちょっと巫山戯ふざけただけよ」

『それにしても、ちっちゃくなりましたね?』

 ププッと口に手を当て、笑いが零れそうになるのを堪える女神。


「にゃんで、幼児化したか知ってますか?」

 多分、想像した答えで合ってると思うけどね。

『そうですね。ミオが考えた通り、欲張りも原因の一つです。ガイア様にも苦言を呈しましたけどね』

「にゃはは~、やっぱり?耳が痛いですわ〜」

 嫌な想像が当たったか。ガイア様もウルシア様に怒られたみたいだし、私も甘んじて説教を受け入れよう。


『ミオは加減が分からないのに、ガイア様ってば、神界の物差しでスキルを授けちゃうんですから!ミオが四歳にまで幼児化したのは、スキルに馴染む身体がその年齢だったからです!………まぁ、他にも原因はあるんですけどね』

「まぁ、にゃっちゃったもんは仕方にゃいよね。にゃが生き出来るにぇん数が増えたと思えば儲けもんだし」


 ポソッと呟いたがウルシアだが、ウンウンと頷いているミオの耳には届いていないかようだ。


「でも、それで慌てて降りてきてくれたにょ?」


 それだけで外界に降りてくる理由にはならないだろう…と、私は小首を傾げて問う。そうすれば、彼女は微妙な表情になった。私はそれを見て嫌な予感を覚えたのだった。

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