【4万PV達成!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

吉野 ひな

第1話


「ふぅ~、今日も疲れた~」


 私、寺尾美桜てらおみおは、労働を終えて、コンビニで調達したビールとオツマミを手に、ご機嫌で帰路を急いでいた。


ズガァーーン!?!?

ゴギャガガガッッ!?


「なんの音!?」


 突然響き渡った不可解な音に、私は狼狽した。だがその音は、私が歩いていた歩道が原因だった。亀裂が入り、裂けたのだ。私の足元で。


「…は!?」


 あまりの非日常な出来事に、反応が遅れた私は、亀裂の裂け目に呑まれたのだった。


「うわあぁ〜!?」



「‥‥ださい。起きて下さい!」


 なにか聞こえるが、すごく寝心地が良いお布団は離したくない。


「だめ‥もうちょっと‥‥」


「お願いですから、起きてください!」


「あと5分‥「起きてください!」‥おっとぉ!?」


 微睡みの中で感じた不穏な殺気に、私はその場を飛び起きた。

 眠りから覚めた私の目に映ったのは、わたわたと慌てているゴージャス美女だった。

 金髪にエメラルドの瞳は、とっても綺麗。服はキトンみたいなやつを来ているが、もしかして、ギリシャにトリップしちゃった?


「殺気したんですけど!?っていうか、ここはどこ?」

「ここは、神界。私は女神ウルシア。貴方がいた地球とは異なる異世界です」

「なんでそんな場所に!?」

「亀裂に飲み込まれたことを覚えていませんか?」

「……」


 なんて恐ろしい事を言うんだ、この人は。亀裂に飲み込まれたら、生きていられな……あ〜、そういうことか。


「地球のとある神と喧嘩したのですが、手加減を間違えてしまいました」


 テヘッと舌を出す女神。ほんと、いい加減にして欲しい。人一人の人生を終わらせておきながら。反省しているのだろうか?


「…また、地球の神と喧嘩かのぉ?」

「ひっ!?創世神様!!」


 しわがれた…だけど威厳で深みのある声に、美女は怯えた。あれ、またなんか増えた??しかし創世神様とは…いったい、なにが起きてるの?


「‥説明するのじゃ、女神よ」


「はぃぃ!!」


 女神と呼ばれた女性は、背筋をピンッと伸ばし、身振り手振りで必死に説明をしていた。私のことは、完全空気である。ついでだから、一緒に説明を聞いたよ。


 女神が話した内容はこうだった。地球神の誰かさんと喧嘩をしたまではいいが、つい力加減を間違えて放った神気がスパークしてしまい、地割れ発生。そこへ私が落ちたらしい。はは。そりゃ、一発KOだわ。


「すまなかったのぉ。お嬢さん」


 説明を終えた女神に背を向けて、こちらを振り返った老人は、私に頭を下げてきた。

 仙人みたいな杖を持つお爺ちゃ…創世神様。お口に蓄えたお髭は、喋る度にモコモコと動き、可愛い。

 

「‥え?いやいや、悪いのはそちらの女神さまですよね?創世神様は何も悪くないですよ!」


「‥それでもじゃ。儂には、こやつの監督責任があるでの。儂は、この世界の創世神ガイアという。管理は、そこの女神に任せとるがな」


 その表情には後悔の色が強く現れ、沈痛な面持ちになっていた。瞳は、立派な眉毛に隠れ気味であまり分らないけど、声音が沈み気味だ。

 女神?バケツを持って、立たされてますね。昭和かよ!?


「‥‥そうですか。私は寺尾美桜といいます。それで私は、元の世界に帰れそうですか?」


 駄目元で、ガイア様に聞いてみる。死んでるから無理だと思うが、流れ的にはお約束だよね!


「すまんが、お主の身体は地割れの底に飲み込まれてしもぅた。今は、魂だけの存在じゃ」


 はい、キタコレー!!

 異世界あるある殿堂入り「神様のドジで異世界転生or転移しちゃった!」の状況にワクテカしながら、神妙な顔つきを作る。雰囲気作りは大切である。


「お主も好きじゃな‥‥」


 しかし、先程の表情とは打って変わって、今は呆れた表情を隠すこともせずに、私をジト目で眺めていた。


「え?なにがで‥‥あ~、心の声がだだ漏れなんですね」


 神界あるあるじゃん!忘れてたわ。

 私は自分が思っているより、興奮しているらしい。ラノベを読み漁り、いつか私も異世界に‥なんて夢を見てはいたが、ほんとに訪れるなんて思わないジャナイカ!!


「その異世界あるあるバイブルの知識があれば、今後の展開は分かるじゃろ?さぁ、世界の転生を望むか?また、スキルなどの希望はあるかの?」


 そんなガイア様の言葉を皮切りに、ブォンッ!と音を立てて現れた、透明なボード。


 フゥ~!選択タ~イムッ!などと舞い上がっていた私は、後に訪れる悲劇など知る由もない。


「さてさて、私のスキルをどうやって決めようかな?」

「うむ!これが、現在のお主のスキルじゃな」


 パチンッと、指を一鳴らし。なにやら、文字が浮かび上がる。


『スキル 行儀作法4 事務処理5 商談4 体術4 剣技3 語学4』


「お主は魂の状態だからの。スキルのみの表示にさせてもらったからの。ちなみに1が初心者、2が初級、3が中級じゃ。お主が一番多い4は上級じゃな。5が達人じゃのぉ。お主は商会向きか?」

「そうですね。日本では、多忙な会社員でしたし。異世界ではどこかに定住して、たまに旅をしたいですね。そうすると、冒険者か商人ですかねぇ?‥兼業もありかな?」

「ふぉふぉふぉ!夢が広がるのぉ」


 私がこれからの生活を想像して模索していると、ガイア様は、威厳ある長い長い顎髭を撫でながら声高らかに笑った。

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