第16話 鉄板焼き(お好み焼き)

 注文していた鉄板ついた食器、前世でいうところのステーキ皿のようなものが仕上がって来た。

 学園終わりにウキウキと帰り支度をしているのを目敏く見つけてくっついてきたフェリクスを「私、今日は特別気分が宜しいの」と大目に見ていそいそと居酒屋「花結び」へ裏口の扉を開いた。

 暫く前から若い衛兵や騎士、さらには文官の方々から男女問わずリクエストされていた「ボリュームのあるもの」それが解決しそうでアデルハイドはご機嫌だ。

 「これは、皿?にしては……」

 「ステーキ皿とかそんな呼ばれ方をしてるわ、鉄板を温めておけば乗せた料理が冷めにくいのよ」

 キャベツを取り出しながら話すアデルハイドをフェリクスはカウンター席に座り覗き込む。

 

 アデルハイドはキャベツを千切りにして、長芋をすりおろした。

 鰹出汁にすりおろした長芋を加えて混ぜ、小麦粉を加えて溶いていく。

 一枚分を取り分けたっぷりの千切りキャベツと卵を一つ、紅生姜加えて混ぜ合わせタネの完成。

 熱したフライパンに油をひきタネを入れる、ふつふつと縁が焼けて固まり出したら円形に整えていく。

 上部に薄く切った豚肉を乗せ焦げ色が付いたらひっくり返して蓋をする。

 コツは叩いたり箸やフライ返しで突かないこと、内包する空気が抜けるとふっくらと焼き上がらなくなってしまう、ハノイに説明しながら蓋をとり更にひっくり返してこんがりと仕上げていく。

 この間にステーキ皿の鉄板も温めておき、そこに焼き上がったお好み焼きを置いて中濃ソースを塗り、マヨネーズをかけて青のりと鰹節を乗せたら完成だ。

 ボリューム感もあるはずと大人しく座って見ていたフェリクスに最初の一枚を渡す。


 「いいの?ありがとう」

 と、嬉しそうに笑うフェリクスが一口頬張る。

 ごくんと飲み込んで目を見張りキラキラと目を輝かせる。

 「美味しい!キャベツの甘みにフルーティなソースとマヨネーズの滑らかさが絶妙だね、サクサクした表面のふっくらとした生地も鰹出汁の香りがしっかり効いていてすごく複雑なそれでいてたっぷり入ったキャベツで食べ応えもある、これはビールが進みそう!」

 アデルハイドが言いたいことを全て言い切ったフェリクスは紅生姜のアクセントを褒めちぎっている。

 「紅生姜が気に入ったなら、今度天ぷらにして差し上げましょうか?」

 ふふふと笑いアデルハイドがビールをカウンターに置きながらフェリクスに言えば眩しいくらいの笑顔で顔をあげたフェリクスがコクコクと頷いた。

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