T-0019についての報告書

 特異クラス5実体 T-0019 識別名「先触れの巫女」


下記ファイルはクラス5機密事項に指定されています。

不正なアクセスは如何なる場合に於いても終了処分の対象となります。


特別収容プロトコル:T-0019人型収容チャンバーにT-0019を収容してください。T-0019には10代と同等の教育と生活をさせます。T-▪▪▪▪▪▪のために高等教育以上の教育を受けさせます。




概要:T-0019は10歳の少女と見られるヒト型実体です。2098年4月現在の時点で身長は134cm、体重は36.4kgです。


T-0019は破滅の先触れを「歌」によってもたらすという異常性を有しています。この「歌」はT-0019-1と指定されています。その他老化の減少や「死」への耐性など通常の人間の上位互換となる異常性をいくつか有しています。T-0019はT-0019-1を発することでT-0019-1を聞いたもの(以下対象)を揺り起こします。対象は生物、非生物問わず活性化と見られる現象を起こしています。活性化状態の対象を更に活性化させる試みは失敗しました。対象へのT-0019-1の暴露時間、音量によって活性化の程度が変化することが確認されています。T-0019はそれまで対象が聞いたことのない旋律になります。


T-0019担当研究員に▪️▪️上席研究員が着任しました。


補足1:3002年時点で身長は164cm、体重は54.3kgです。また、身体年齢が14歳であると判明しました。


補足2:3002年6月時点に対象を非活性化させることが可能になりました。非活性化させる「歌」はT-0019-2に指定されています。T-0019-2を直接観測することができませんでした。聴覚以外での伝達によって影響されていると考えられています。


ーいわば、彼女の能力はそのもののスイッチのON/OFFを切り替えることなのです。ー    ▪▪上席研究員




発見経緯:サイト09-▪▪の使用されていない人型汎用収容チャンバーに2095年に突如出現しました。その後事案T-0019-aが発生しました。詳細は補遺を確認してください。またそのときにT-0019の着用していたドレス(T-0019-3に指定)はT-0019の成長と共に大きくなり、能力の効果を高めることが確認されています。




補遺1:事案T-0019-aに付いて当時の収容チャンバーの記録です。

>〈記録開始〉

>隊員a「これから突入する。実行はaとbの二名で行う。」

>隊員b「さっさと終わらせましょ。残業なんてするつもりなかったのに。」

>隊員a「無駄口を叩くな。入るぞ。」

>鳴り響く子どもの鳴き声が聞こえる。

>隊員a「発見した。確保する。」

>突如聞き覚えのない歌が響き隊員aの上半身が破裂する。

>隊員bの悲鳴が鳴り響く。

>〈記録終了〉

その後、T-0019が泣き止んだ後に再度作戦を実行。確保に成功しました。




補遺2:T-0019への実験記録は[T-0019実験記録a~r]を参照してください。




補遺3:2097年3月時点、[T-0019実験-p]によりT-0019は伝承や文献に存在していた神的実体である「▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪」に魅入られたヒト(Homo sapiens)であると考えられます。これによりT-0019をT指定しました。(記録はU-0019⇒T-0019に改定済み)




補遺4:「▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪」については伝承や文献に存在していたとされる神的実体です。様々な表記をされており、「▪▪▪」や「▪▪▪▪▪」などと記述されていました。その中でも最も多く表記されていたものが「グロース(Ghroth)」です。この実体は多数のアノマリーの収容違反を誘発する可能性があるため捜索及び対策を実行中です。




補遺5:3009年に睡眠状態のT-0019がA-1857-jp《常磐の桜》近辺の花畑で発見されました。T-0019はその花畑に固定されており、移動させる試みは全て失敗しました。花畑近辺の土地を財団フロント企業によって買い取りサイト09-▪▪とし、カバーストーリー「私有地」を流布します。







T-[花歌プロジェクト]


下記ファイルはT-0019クラス5機密事項に指定されています。

不正なアクセスは即時終了処分の対象となります。


ー本プロジェクトは破滅への道を数多く抱える我々にとって数少ない対抗の手段となりうるものである。彼女は破滅の先触れたる神の巫女である。幸いにも彼女はすべてを知っていて尚、我々に協力的なのだ。その先触れたる異常性を使うことで数多くのアノマリーを鎮めることができるようになるだろう。ー    ▪▪上席研究員




概要:3000年に▪️▪️上席研究員によって提起されました。K-クラス終焉シナリオ発生時、T-0019特別収容チャンバーに設置されている人型汎用長期睡眠ポッドに収容中のT-0019を開放します。その後状況と本プロジェクトの概要をビデオメッセージと文書によって説明します。T-0019の補助としてT-0019-AI-1の『モノ』の製造が決定しました。


補足3:3002年8月、T-0019の長期睡眠が実行されました。


補足4:3004年9月時点で、T-0019-AI-1の製造が完了しました。T-0019-AI-2以降の製造は予定されていません。




説明:世界中に設置されている神殿を模した音響拡散器(以後T-0019-K-1と表記)を用いてT-0019-1、T-0019-2の影響範囲を拡大させます。まず、T-0019-1をT-0019-K-1によって全ての対象を活性化させます。その後活性化が確認された後、再度T-0019-2をT-0019-K-1によって拡散させることで全ての対象を非活性化させます。これによりK-クラス終焉シナリオの原因の非活性化を完了させます。その後T-2000《機械仕掛けの神》によって再生を行います。プロジェクトを確実にするため、K-クラス終焉シナリオの原因の数キロ圏内で実行します。


補足5:「歌」によりT-2000《機械仕掛けの神》が非活性化されるため再起動に時間がかかると予想されています。再起動を早めるためのプロジェクトが実行されています。再起動までは他の対象は再度活性化しないと予想されています。




3016年追記

ー彼女はやってくれたのだ。我々は再生し、ここに今存在している。異常存在のヴェールは降りたままで我々の存在も公になってはいない。計画は成されたのだ。しかし、忘れてはいけない。彼女もまた収容する異常存在であり、保護されるべき少女だと言うことを。我々は研究し続けなければならない。世界の終焉を回避するために。もう二度と彼女に頼ることのないように。花について語るあの子の笑顔を二度と絶やさないように。ー    ▪▪上席研究員

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壊れた世界に花歌を、見上げた桜に終焉を。 ほんや @novel_39

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