【第4章】運命の決戦
リアと僕は決意を固め、感情の塔へ向かっていた。夜が明ける前、冷たい空気が肌に刺さる。無表情の住民たちの目をかいくぐりながら、僕たちは静かに進んだ。
「感情の塔を壊せば、ヴァルディスの支配は終わる」
リアの言葉に、僕は静かに頷いた。でも、胸の奥で思考が渦巻いていた。感情を取り戻せば本当に救われるのか?それともヴァルディスが言うように、感情は再び混乱を招くだけなのか……?
感情の塔が目の前に現れた瞬間、背後に冷たい気配が迫った。振り返ると、遠くにヴァルディスが立っていた。
「感情はお前たちを破滅に導く。 平穏を手に入れるためには、感情を排除するしかないのだ」
ヴァルディスの声は冷たく、まるで感情を捨てたことを正当化するための呪文のようだった。
「違う! 感情がなければ、生きている意味がないんだ!」
僕は反射的に叫んだ。感情こそが僕たちを動かす原動力だ。それがなければ、ただの機械だ。
「リア、二手に分かれよう。 僕が奴を引きつける。その間に、塔を壊してくれ」
リアは一瞬迷ったが、すぐに強い決意を込めた目で頷いた。僕はヴァルディスに向かって駆け出した。ヴァルディスの手から凍りつくエネルギーが放たれ、地面に叩きつけられた。体が重く、動かせない。全身に痛みが走り、視界がぼやけ始める。
こんなところで……もう終わりなのか……? このままじゃ……リアも……みんなも……
息が苦しい。もう立ち上がれない。その時、胸の奥で再びノクスの声が響いた。
(ハーフィ……起きろ)
「あなたは誰なんだ……?」
(ノクスだ。 私の力は、お前の感情によってのみ解き放たれる。 だが、その代償は――)
ヴァルディスが再び手を上げ、次の攻撃が迫ってくる。
リアや仲間たちが幸せそうに笑っている顔が浮かんでくる。
(感情を解き放て。 それが最後の力だ)
胸に手を当てた瞬間、全身が燃えるように熱くなり、胸の奥でノクスの力と感情の力が完全に融合する。全てが一つになった瞬間、僕の体に溢れた感情が暴走し、体が勝手にヴァルディスに向かって動き出す。
「ハーフィ!!!! やめて、お願い!!!!」
リアの叫び声が遠くで響くが、僕はもう応えることができない。
「うおおおおお!」
ノクスと共に解き放たれた感情の力が僕の体から光のように放たれ、ヴァルディスの体を飲み込んでいった。ヴァルディスは驚いたように目を見開き、その体が黒い影となって崩れ落ちていった。
「……終わったのか……?」
視界が揺らぎ、体が重くなっていく。ノクスの力が僕の体から消え始めるのを感じた。
リアが塔に到達し、全身の感情を装置に叩き込んだ。塔が軋む音を立て崩れ始めるのを見届けると、僕はその場に崩れ落ちた。
「ハーフィ!!」
リアの叫び声が遠くで響く。僕の視界が次第に暗くなっていった。
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