【第3章】封印された感情の塔

翌日、作業場で機械を修理していると、ふと視線を感じた。誰も僕に関心を持つはずがない世界で、ただ一人リアだけが僕を見ていた。


リアはそっと近づき、小声で囁く。


「……あなたも感じてるのよね?」


その一言で、胸の鼓動が速くなった。


「感情の塔、知ってる?」


リアがまた小さな声で続ける。


「聞いたことないな……」


「ヴァルディスが作った塔よ。 そこに私たち住民全員の感情が封じられているの。 もし、その塔を壊せば……私たちは感情を取り戻せるかもしれない」


リアの言葉に、胸がドキンと音を立てた。感情を取り戻す?そんなことができるのか?リアの目には強い決意が宿っている。


「今のまま生き続けるなんて、耐えられない……感情を取り戻したいのよ」


リアの震える声に、一瞬言葉を失った。僕は一度リアの目を見たあと、小さくうなずく。このまま生き続けることは、僕にももう耐えられそうにない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る