第二節「八坂の双子」
第二節 SCENE-001「魔術師、禊ぐ」
〔
こなすことが当然の〝お勤め〟として日常に組み込まれていた。
夜狩が終われば、御神木――枝分けされた〔倭〕の末梢を祀った社の霊泉で身を清め、境内の清掃を済ませてから家へと帰ってようやく朝の食事にありつけるというのが、いつものルーティンで。
八坂の地に根付いた、〔倭〕の末梢――その根の及んでいる範囲が〝八坂の里〟と見做される御神木。
じんわりと滲み出すような魔力の輝きを放つ霊樹が茂らせた枝の下に広がる、深く澄んだ霊泉――御神木から滴る
水際からすとん、と深くなっている霊泉に爪先から頭の天辺までをくまなく沈めて。水底までゆっくりと沈んでいく間に、伊月の体や着衣からは、夜狩で受けた〝穢れ〟と見做される物理的な汚れや妖魔の残留魔力が魔素――万象を構成する最小単位へとほどかれ、取り除かれていく。
魔力濃度が高すぎるあまり人を溺れさせることはなく、冷たくも温かくも感じない液体をたっぷりと肺の奥まで吸い込めば、御神木が生み出し、誰の
肉体という〝器〟を満たす
ある種の〝汚染〟と言っても間違いではない。
そんな感覚に対して覚えた生理的な嫌悪感を、伊月は努めて呑み込んだ。
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