第一節 SCENE-002


 伊月のような、血の通った肉体を持つ徒人ただびととは生き物としての在り方が異なっている、人外ひとでなしの類い。

 伊月が生まれ育った文化圏――〔やまと〕の庭では妖魔と呼ばれている、〝徒人に害を及ぼす人外〟の一匹を始末して、年若い討滅士とうめつし見習いはやれやれと息を吐く。


「ふぅ……」


 物言わぬ魔力の塊と成り果てた妖魔の残骸を見下ろしながら息を整え、額に滲む汗を拭っているうちに、夏の夜のじっとりとした暑さが追いついてくる。




 風のない夜に、ぬるい湿気と、既に事切れている妖魔が残した魔力の匂いが滞留していた。



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