不眠に冷たい金木犀を

 疲れて疲れて、自室にある窓際の椅子に座ったとき、どこかのお宅から季節の香りがしてきた。

 毎年、この時期の夜、窓を開けて月を見る。私のささやかな楽しみのひとつだ。


 体力的な問題でなく、精神的の疲弊が酷い。

 相談したが母を病院に入れることは出来なかった。


「…むくいだから甘んじて受けろってか」


 自分が、お世辞にも褒められた人生を送っていない事など百も承知だ。

 もう何もかも投げ捨ててしまいたい。

 金木犀のいい香りだったのに、突然正体不明の異臭に変わって一気に気持ちが切れた。

 泣くのも不満を持つのも、お前には資格がないと、癒やされるのも許さないと言われているように感じた。


 だとして何の手の打ちようがない。


 取り敢えず窓を閉め、ファブをした。

 びっくりするほどユートピアは必要なかろう。夜中だし。

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