おやすみなさいなどと言いたくもない
昼間いたみんなはどこに行ったの?
みんな夜になるといなくなる。
ベッドに横になりつつも起きていたらしい母が聞いてきた。
就寝時間の暗い家の中、母の部屋の戸が開いていて、私は廊下から目をすがめ、首だけこちらを向いた母の顔を見ていた。寝ているならこの戸を閉めたいと。
普段、睡眠薬を使用している相手なので、無駄に声をかけ起こしたくないのだ。
瞬きしないし目瞑ってる? 寝てる? あれ? 目開いてる? 開いて、と、凝視しているうちに声をかけられ、母が起きていた事が分かったところだ。
瞬きしない目とずっと見つめ合っていたらしい。
台所の常夜灯が、暗闇の中の目玉に反射し光っているように見えていたのは間違いなかったようだ。
その顔は何度見ても死人の顔に見える。化けて出る幽霊の顔はこんな顔だと思うのだ。
だらりと口の開いた生気のない瞳。
「誰の事? 誰かいた?」
「誰だか分かんないんだ」
「じゃ、お化けじゃない? お母さん今、お化けみたいな顔してるし」
「んじゃお母さんお化けなんだわ」
「そっか、成仏してね」
さよーなら。
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