第3話 不動産屋が内容証明書を無視、裁判はできる?

第2話までのおさらい


賃貸契約した部屋にGが繰り返し出るため退出し、

2024年6月に内容証明書を不動産屋と家主に送付。

https://kakuyomu.jp/my/works/16818093087293193970/episodes/16818093087371246009


2024年11月にようやく簡易裁判をします。

今回は害虫が出た場合、家賃を返してもらう裁判はできるのか?

裁判を決意するまでの話です。


 *


「e内容証明書」を不動産屋と家主に送付して1ヶ月。

わたしのソニー銀行口座にはお金が振り込まれることはなかった。


それどころかメール1本もなかった。

完全無視

それが彼らの答えだった。


 *


思い起こせば退去を申し出た際、

「申請はサイトでやってください」と案内された。


サイトには退去申請をするアパート名の選択肢が一覧表示されていた。

3,4ページあった。

そのとき同系列のアパートがたくさんあることを知った。


おそらく各物件の家主は別々にいて

管理をこの不動産屋が任されている。


ある物件でトラブルが発生した際は

不動産屋から家主に連絡をして、

家主が対応しないといえば

不動産屋から入居者にできませんと返事がくるのだろう。


わたしが借りていた部屋は

学生・外国人・社会人と入居者1名までの物件だった。

トラブルが発生しても

内容証明書を出したり裁判をするほどの

時間や労力を割くことができない人が多かったのではないだろうか。


同じ物件の住人に話を聞くことができた。


 *


某号の住人:

賃貸料も安いし、この建物では仕方ない。

4月に入居したばかりだが別の部屋を探して出てゆくつもり。


 *


もし同じような管理体制であれば、

他の地域でも同じような物件がたくさんありそうだ。


わたしが裁判をして入居費や家賃を取り返せた場合、

何十人もの入居者が続いて裁判をした場合

どれほどの金額が不動産屋と家主に請求されるだろう。


想像するのは私だけではなく不動産屋や家主も同じだ。


であれば、裁判があれば弁護士を雇って

本気で戦ってくる可能性もある。

簡易裁判は相手方の希望で普通裁判に持ち込むことが可能だ。


そうすれば、少額訴訟を希望している訴える側が

高い弁護士費用を払って普通裁判に応戦しなくてはいけない。

それができなければ、少額訴訟を取り下げるしかない。


こうしたことも考えて泣き寝入りした住民も多いのではないだろうか。


 *


ひとりで戦うのは無理があるのではないだろうか。

不安になった。

こうした裁判では不動産屋に非があることを

先に民意に証明してもらう必要があるのではないか。


わたしは考え事をするとき迷走する癖がある。

「どうすれば民意を・・・」

と数日考えていた。


世界最大の署名サイト「change」に登録してみた。

https://www.change.org/ja


ひとりも民意を得られなかった・・・。

 ※この話題はまた機会があれば


ダメだ。このままではいつまで経っても裁判ができない。


 *


まずは勝てない裁判なら諦めなければならない。

害虫はないとしても、類似の裁判例がないかをネットで調べた。


賃貸物件に関わる裁判の判例はたくさんあったが

以下のものが多かった。

 家主:家賃などを払わない住民への支払請求

 借主:過剰に請求された退去費用の返還請求


退去費用の減免や返還についてはマニュアル本が出版されている。

よくあるトラブルなのだろう。


 *


ネットで弁護士事務所に行きあたった。


弁護士法人 ALG & Associates

https://www.avance-lg.com/


ホームページを見せて頂いたが、かなり本格的な弁護士法人。

強そうだ。

『リーガル・ハイ』の弁護士・古美門研介がいっぱいいそうだ。

うらやましい。


どうやらここが一般向けに出しているニュースレターが

検索に引っかかったようだった。


最近は弁護士法人では判例もデータとして販売している。

IT革命後、弁護士業務も他の企業と同様に

業務の幅が広がったり

オンラインでできることが増えているんだなと思った。


ありがたいことに害虫に関する裁判の情報を得られた。


 *


『ALG & Associates Newsletter 2016 Jun 不動産業界 Vol.20 7月』

https://www.avance-lg.com/news/news_vol20_fixed_property.html


以下、要約して引用する。


 *


不動産業界:害虫が発生した場合の賃貸人の責任


 要約:専門家に依頼して駆除を行わせれば

 完全駆除を達成できなくても債務不履行にならない。


 東京地裁平成25年12月25日判決参照


 物件内の全ての部屋に害虫が発生し、

 専門家による駆除をしてもまだ発生する場合は

 義務が果たせていない状態


以上、要約して引用した。


 *


わたしのケースの場合、

入居時の清掃は清掃費用を3万円ほど払ったが

害虫駆除はされていなかった。

なんなら掃除も適当だったので

別途、わたしが頼んだ清掃員さんから「汚すぎる」と報告を受けた。


害虫が発生してから

都度管理会社に連絡をしたが

ホウ酸団子を置く以外の対応はしてくれなかった。


ホウ酸団子を置くこと

害虫駆除は入居者がやると、管理会社が決めていることを

「専門家に依頼して駆除を行わせる」と裁判で判断されれば負けてしまう。


だが、なんとか勝ちたい。


 *


他にもRETIO.というサイトがヒットした。

「一般財団法人 不動産適正取引推進機構」のことだそうだ。

ここにも幾つか事例を読むことができた。

https://www.retio.or.jp/


タイトルのみ引用させて頂く。


RETIO. 2013. 7 NO.90    コバエの発生による損害賠償請求

RETIO. 2015. 1 NO.96    害虫の発生と中途解約

RETIO. NO.119 2020年秋号  害虫と管理責任


 *


団体の見解が出ているというのは心強い。


完全に合致する判例はみつからなかった。

やはりケースバイケースであることと

どのような被害が生じたかを証明できることが大切だということが分かった。


必要なのは証拠集めだ。


ALG & Associateの記事を頼りに、簡易裁判を決行することを決意した。


 *


ある日、わたしは害虫駆除を手伝ってくれた

保健所の相談員さんのところへ話をしに行った。


毎月1回、家族のことで相談に来ている。

家族から自由になれないわたしに一人暮らしを進めてくれた。


一度、家を出てみて自分のやりたいことをしてみてはどうだろうか。

そう背中を押してくれた。

まずは仕事場として部屋を借りてみて

気持ちの整理ができたら移り住むという計画にした。


しかし、結果は害虫に怯え

住むことが叶わぬままアパートを出ることになってしまった。


 *


相談員さん:もう少し頑張ればよかったのに

わたし:わざわざ足を運んでいただいたのに(退出して)すみませんでした。

相談員さん:いや、いいんだけどね。

わたし:またお金を貯めてチャンスがあれば家を出てみたいと思います。

こうして害虫が出てしまうのは、安い部屋を借りてしまったからなのか、

賃貸相場ってあるんでしょうか。


 *


賃貸には相場というものがある。

一般に賃貸物件を探す場合

都会か田舎かなど立地に対する相場を確認するが

保健所の人は職業柄

どういう人が居住するかという視点でも相場を見るそうだ。


例えば、生活保護を受けている人は

各地域で入居できる賃貸物件の金額が決まっている。

そのため、その金額以上の部屋は働いている人が住んでいるということになる。


 *


相談員さんが言ったわけではないが、

低所得者を目当てとした賃貸経営があるのかもしれない。

安い土地に、適当な部屋を建てて、適当な管理をして

家主からも、居住者からも契約金や管理費を取る。


部屋が気に食わなくて出て行ったとしても

契約金の他にも保険料、保証会社との契約金

鍵会社から清掃会社まで

バックマージンは数が多ければ多いほど

儲かる仕組みになっているのではないだろうか。

また、関連する会社をグループ企業に持てば更に儲かる。


すげーな、賃貸経営・・・


 *


わたしが借りた部屋の隣の入居者は外国人の人だった。

壁の向こう側から聞こえてくる言葉も理解できなかった。

掃除に来ていたとき、ときどき大きな笑い声がしたが

この部屋が怖かったわたしにとっては逆に安心材料だった。

チャンスがあれば友だちになりたかった。


彼などきっと、文句すら言えなかっただろう。

様々な思いが去来した。

勝訴したら、あのアパートの住民たちに報告したい!


 *


つづく


 *


次回:簡易裁判をするための証拠を揃える

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