第3話 大学入学まで
翌朝の和聖は六時に目が覚め高校に行く用意をして食卓に着いた。既に起きて朝食の用意をしていた貴子は母が居るからか、いつもと変わらぬ雰囲気で彼に挨拶をして朝食を目の前に置いた。一瞬、彼は拍子抜けしたような気分になり昨夜の出来事が夢だったのかとさえ思った。
昨夜のことが誰にも何も感付かれないように貴子は努めていつも通りに振る舞っていた。逆に和聖の方はなんとなく居心地の悪さや緊張感で、居た堪れなさを感じていた。
弟が入院しているので、母が何かと大変になることを予想し貴子には自宅に帰らずに我が家に泊まるように頼んだ。彼女もこの家に泊まっている方が隣の美容室に出勤するのも祖母のクラブで仕事するにしても楽なので二つ返事で承諾していた。
和聖は高校に登校しいつもだと放課後はレストランにバイトに行くが貴子が我が家に泊まってくれることがわかり嬉しくてバイトを休み、学校から真っ直ぐに帰ると母は弟の病院に出かけていた。
貴子は美容室の客の予約がないからと家に居て洗濯物を取り込み畳んでいたので、和聖はすかさず彼女の横に行き、押し倒して昨夜同様に交わった。彼女は彼の好きなようにさせ激しく突いていると、あの切なく振り絞るような声で呻き身体を硬直させて達した。
和聖も我慢が出来なくなって抜こうとした時に貴子が、「そのまま出してもいいから」と言ったので中で出すと物凄く気持ち良かったことは言うまでもなかった。その日を境に和聖と貴子は両親の目を盗んで交わった。その度に貴子は切ない絶頂の声を上げていた。
※ ※ ※
高校卒業前の休みに貴子からの提案で両親には内緒で台湾旅行に連れて行ってもらった。両親には同級生と卒業旅行に行くと嘘をついてだった。二人だけの旅で初日は観光をしたが二日目は一日中、ホテルの部屋で愛し合った。
二人は家族がいる時は何事もなかったかのように振る舞っていた。しかし体を合わす時はまさに夫婦のようで時間は自然に流れていった。高校時代のアルバイト先で三年間真面目に仕事をしていたことで、オーナーから「調理師免許を取りなさい」と言われ、試験に合格したことから和聖の進むべき道が決まった。
管理栄養士の資格が取れる大学の保険栄養学科を志望し、推薦で入学することができたことで実家から出て一人暮らしを始めることになった。両親からは疎まれ弟たちと差別されて生活して来たことから、子供の頃から念願だった実家から離れる事ができる地方都市での初めての一人暮らしだった。
大学の入学金や授業料、そしてマンション代、更には生活費に至るまで両親は出してはくれなかったが、和聖を溺愛していた祖母が代わりに出してくれた。借りた部屋は四階建てのワンルームマンションの一階だった。部屋の広さは六畳程度でキッチンが着いていて浴室とトイレがあった。
こちらで彼の新生活がスタートする事になり、三月末に実家から部屋に引っ越しすることになった。時期的に割高で予約を取るだけでも大変な引っ越し業者には頼らずにレンタカー屋で車を借りて自力で運ぶことにした。
それも火曜日の貴子の美容室の休日に合わせて、自動車免許をまだ取得していなかった彼は運転手を彼女に頼み買い揃えてあった家電などの大物類も彼一人で載せた。この頃の和聖はツードアの冷蔵庫や洗濯機ぐらいは一人で担ぐことができるほどの体力を持ち合わせていたので、貴子を持ち上げて抱きかかえることなど朝飯前だった。
貴子は作業をしやすいようにジャージ姿で運転席に座り、和聖が助手席で引っ越しをした。
※ ※ ※
引っ越し先のマンションでは和聖が車から荷物を運び、貴子は部屋の掃除や荷物の整理をしてくれて食べ物や飲み物の買い出しなども一緒にした。休憩中などの雑談の中で貴子から、何かあったらいつでも連絡してくるようにと言われ、彼女の連絡先はわかっていたので、部屋の電話番号のメモを渡した。
壁沿いの窓際に小さな台にテレビをのせ、反対側の壁沿いの隅には畳んだ布団を置いた。キッチンには冷蔵庫と洗濯機を置き、後は鍋やフライパンや食器類と衣類と祖母からもらってきた食料類など、部屋は広くないものの荷物もそれほど多くなかったので一人暮らしには十分な広さのスッキリとした部屋だった。
一人暮らしのこの初日の夜は部屋の真ん中に布団を敷き貴子を脱がして、汗を掻いたそのままでお互い、心行くまで堪能し合い、彼女もいつもとは違うシチュエーションだったことで物凄い声を上げて昇りつめた。その後はシャワーを浴び眠りにつき、明くる朝、貴子はレンタカーに一人で乗って帰って行った。
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