第11話 インタロゲーション
ミ〜〜〜〜、ミ〜〜〜〜。
地下のスロープを出て、本校舎と部活練に囲まれた中庭に出ると、豹かチータのような子猫が鳴いている。
「おや、、、、」
なんでそんなモノが学園、いや、関東地区にいるのか、あらたには理解できなかった。
「イリオモテヤマネコですね。めずらしい。」
どんよりとした瞳が疑問符を投げかける。
「リ、、、、リンさんのネコちゃん、、、ですわ!さ、、、さあ!いらっしゃい!!」
変なテンションの副会長が、子ネコの前にしゃがみ込み、何とか機嫌を取ろうとしている。
「お散歩でちゅか〜〜いい子でちゅね〜〜」
眉目秀麗、才色兼備、学園トップ、いろんな超がつく、美少女お嬢様、
瀬里奈Sフィールズ、なのだが、あまり衆目に晒せない姿だ。
「あ〜〜〜〜〜〜!」
絶望の悲鳴が上がる。
ヒョイ、と彼女をかわし、後ろのイケメン男子に抱き上げられる、子ネコ。
「ヤママヤーですね。ボクも初めて見ますよ。」
書記の椎名 葵だ。
方言呼びからすると沖縄の方の出身なのだろうか。
どうもこの二人、身元がハッキリしない。アルカ生徒会には、正体不明の者が多い。
まあ、自分もそうなのだが。
地下多目的ホールの、備蓄調整の意見書のため、データを取りに来たのだが、彼女にとって、それらはもう、念頭になさそうだ。
「はい。お嬢様。」
「ありがとう〜〜〜葵〜〜〜〜!」
子猫を渡されて、ふにゃふにゃになっている。
確かにヌイグルミのようだが、平和なものだ。
特別天然記念物を無許可で飼うのは、犯罪だ。違法取引の犯罪組織も、絡んでいる可能性もある。
いや、直近だと、遺伝子操作による、絶滅種の売買をやろうとした事件があった。
「そういえば、リンさんは、いつ頃からその子を飼っているのですか?」
リンは学園のカレッジハウスに住んでいる。Bクラス以上は望めば、、個室を与えられ、ペットも飼える。学園には、動物病院。ホテルも完備されていて至れり尽くせりだ。
応対不能になっている瀬里奈に代わって、葵がこたえる。
「つい最近です。確か。」
「そうですか。」
ひどく楽しそうに笑う、あらた生徒会長。
あまりの不気味さに、少し不安になった葵だが、まずは瀬里奈を正気に、戻さなければならない。
「ほら。お嬢様。この子、リンさんに届けてあげないと。」
首輪はGPS装備だろうが、念のためだ。かなり活発な子のようだ。リンの部屋か、ペットホテルを抜け出してきたのだろう。
「へゃ〜〜い。」
変な生返事が返ってくる。聞いてるのだろうか。
「今日はもういいですよ。後はやっておきますから。」
手を振って行ってしまう、あらた。
「そうだ!この子、ウチで飼いましょう!どうかしら葵!!」
なにか、素晴らしい名案が閃いたように迫る瀬里奈。
「ダメに決まってるでしょう!リンさんが困りますよ。」
「それじゃあ!リンもウチに来てもらって!!私の妹になってもらいますわ!!!」
本格的におかしな事を言い始めている。
これ以上のキャラ崩壊はマズイ。イロイロアチコチオカシクナル。世界の法則。運命の不文律に突き動かされて、夕日さすカレッジハウスに、瀬里奈を引きずっていく事になる葵だった。
同時刻、部室練前、本校舎の廊下。
遠くに見える天文部準備室を見つめる、風紀の活動帰りの、プラチナショートの少女が
、一人、立っていた。
その向こうには、超研部がある。
見つめる淡い瞳は、日暮れとともに、暗い暗い闇に閉ざされていく。
翌日、
「う〜〜〜智由姉〜〜〜人を見捨てて〜〜〜〜。」
泥のように爆睡した野川那智は、姉にも起こしてもらえず、トボトボと学園の並木道を歩いていた。観念して、2限目から授業に紛れ込もうと思う。
正面昇降口に入ると、授業中にもかかわらず、数人の学生が行き来している。風紀委員達だ。
「あ、、、、野川さん!」
先輩の風紀委員が情報を教えてくれる。
「化学部が荒らされたって。部室メチャクチャのようだよ。」
一連の騒ぎの一環だろうか。部室練は右の突き当たりまでいけばアクセスできる。
急ぎ向かう。
「え?天文部だよ。ひどいって。」
ツーマンセルのバディが口をはさむ。
トクンと心臓が早鳴る。
「あの、、、準備室じゃないですか?」
二つの間にあるんだ。ろくでもない部が。
「そういえば、、、」
「そうそう!」
ビンゴだ。
「え、、、野川さん?」
天真爛漫を絵にかいたような少女が、苦しそうに足を早める。
フワリとした、ブラウンのロングソバージュヘア。よく見知った、白衣の保険医が合流する。
「那智!重傷者が出てるって、報告が!」
姉、野川智由の切迫した声が、届く。
だから!言わんこっちゃない!!好き放題やって!みんなに迷惑かけて、恨まれないと思ってんの!!
猛烈なスピードで、景色が千切れ飛ぶ。
いつの間にか、部室練3階、化学部前だ。
二つのドアを吹き飛ばすように抜ける。
「このバカーーーーーーーーー!!!」
叫ぶ那智。
「なんだ?泣きたいのはこっちだって。」
グチャグチャになった部屋の中、ほうきをもってかがむ、白衣の少年がいる。
「な、、、、な、、なんで!」
慌てて振り向き背を向ける。
ゴシゴシと顔をこする。
少女が叫ぶ。
「なんで生きてんのよ!!」
突然やってきて、何、物騒なこといってんだ、この女。
「ざっっっけんなよ!朝来てみれば、部室はメチャクチャ!パソも見ろよ!中まで粉々だぞ!どーーーすんの!特注だぞ!!ああああああ!」
おかしい、友樹のパソは被害が少ない、八つ当たりで壊しておこうか、、、
「だって、重傷者が出たって、、、、、!」
「出たよ!出ましたとも!見ろ!この粉々になったパソコン!オレの大事なヨメ達のデータが!サルベージできるかわかんね!治療不可能なんだよおおおおおお!」
ドン、
少女の圧力が跳ね上がる。巨大地震の前兆のような、細かい振動が部屋を覆い尽くす。
「パソコンの、、、エロデーターだと、、、、」
「あれ、、、」
これは、あかんやつだ。
全然わからんが、本気で怒ってらっしゃる。そもそも、心配して来てくれたのは本当のようだ。
スッ
と正座からの、ジャパニーズ DOGEZAに移行する。一点の躊躇、迷いのない形式美さえ感じさせる日本の無形文化財。ユネスコにも認定されている。(嘘)
「謝罪つかまつる!野川殿!!貴殿の憂慮、心くばり、感謝、望外の極み!その思いおもんばかるなら、わが命、末代にわたって、共に冥府、極楽浄土、何処までも付き従いましょうぞ!!!」
「う、、、、うるさい!」
何とか怒りを押さえつける、炎熱の少女。
スーハー深呼吸している。心配した自分が悪かったのだ。よりもよって、こんな、、、、
「あ〜〜〜!いいわ!」
「なにが?」
もう、何事もなかったようにゴミの仕分けを開始している少年。
「しずくも、友樹くんも、誰も怪我人はいないのね?」
「おーよ。部室の備品類だけ、器物破損だな。」
腕を組んで、首を少し傾ける。少女。
「放課後、落ち着いたら、風紀室に来なさい。詳しく事情聴取します。」
中々どうして、堂に入っている。さすが、風紀、期待のエース。
「は〜〜い。」
手を振る少年
きびすを返し出て行こうとする、野川那智。
振り向いて釘を刺す。
「逃げんな!」
すでにボロボロのドアがでかい音を立てて閉められた。
同じく、授業中、生徒会室。
ひとり、クッションの効きすぎるイスに座り、4階の窓から、川崎側のキラキラ輝くみなも
を眺める、ヒョロ長ノッポの不知火あらた。
どんよりとした瞳が、うつろに揺れている。
「そうか、やっと制定部隊が動くのか。」
右耳のヘッドセットで、会話している。
「おう、うまいこと、理事長が食いついたぞ。順調だな。」
黒人のジノ フィッシャーだ。ちいさな丸いサングラスが特徴。今日は二つの丸い耳が頭にのっかっている。
TD Lに遊びにっているらしい。電車内のようだ。
「リゾートラインですか?」
(おう!中々こっちの奴も楽しいぞ!シーリゾートが見えてきた。)
(ねえ、あらた!あの変な子の経歴、わかったって?ほらシン ヤマシタ!)
赤いジャケット、黒いショートボブのエイダが割り込んでくる。
あらたからはわからないが、山のようなキャラクターグッズとヌイグルミを抱えて、彼女もTDLを満喫している。
やれやれと思いながら説明する。
「科学者の父と共に、全国各地を転々としてますね。後、母親の元でしごかれたりね、」
(鬼の海条流!)
楽しそうなエイダ。
「海外もアチコチ回ってますが、興味深いのは、スーダン、ソマリア、パキスタンでそれぞれテロ組織に、拉致監禁されてます。」
口笛が聞こえる
(なんてまあ。よく生きてるな。あの坊や。)
(身代金?お金持ちなの?)
「違いますよ。どれも単独で逃げ出してます。」
向こうの声が、途切れる。
「幼い子供が、テロリストの集団と渡り合い、出し抜き、高いサバイバリティを発揮し何日もかけて紛争地帯から、ヒョッコリ帰ってくるそうです。」
笑い声が聞こえてくる。
(そりゃあ傑作だ!間違いないな。そいつ、こっち側の人間だ。)
ジノ フィッシャーのお墨付きがつく。
(あらたの本質、いきなり、指摘したんでしょ?)
笑うエイダ。
(気づいてる?たぶん、その子、あなたに近い人間だよ。本質は)
「、、、、、、」
珍しく悩むあらた。自分の本質などわからなかった。
シーリゾートに着いたようだ。
(じゃね〜〜〜。お土産、楽しみにね!)
言うだけ言って切れる通話。
ヘッドセットを外して、目をつぶるあらた。
計画には、何の支障にはならない取るに足らない要素だろう。しかし、心の隅にいつまでも消えない、小さなシコリが残っていくようで、気持ちが悪かった。
放課後、本校舎、3階、風紀委員室
ひどい騒ぎだ。となりの、会議室まで人だかりが溢れている。苦情、盗難の届け、暴力事件犯人の拘束。ひどい場合、風紀の裁量で中央警察署に届ける。
異常事態だろう。
「お〜〜い。那智〜〜〜」
こりゃあダメだ。帰ろうかと思う少年。
数人の風紀委員が立ち上がる。
「野川さーん。来たよー。」
「どうぞ、こちらへ!」
あれよあれよと、準備室に連行される。
「どーも!部屋、使います!」
どこからか、ヒョッコリ現れる那智。
「虐めちゃダメよー」
「お気をつけて!」
アチコチから声がかかる。
「さて、、、、何ニヤニヤしてんの!」
本棚、コピー機、ダンボール、雑然とした準備室が、取調室に使われているらしい。
二人きりだ。思いのほか皆の信頼が厚いらしい。
ある意味、実力第一主義の総本山のようなとこだ。一年生だろうと力があれば評価される。
し巻八重のいない今、彼女は思いのほかここの重要なポジションにいるらしい。
「大人気だに〜〜なっちゃ〜〜ん〜ん?」
「黙れ〜〜〜!」
バシンと長テーブルの端を叩き、窓際のイスに腰かける。
「それで?犯人の心当たりは?」
「那智ーーカツ丼ーーーー。」
「だ、ま、れ。」
向かって左のイスに座り、彼女の持つタブレットを覗こうとするが、見せてはくれなかった。
「じゃあ、憎まれる心当たりは?」
なんだろう。この一生懸命背伸びしてる感、満載で、たまりませんな。
「山の数ほど。」
「具体的に。」
「おもに女子だな。靴やカバンを隠したり、着替えがボロボロになったり。」
「え、、、?」
なんか、重そうな話が出てきて、たじろぐ少女。
「中々、愛情表現が過激でさあ」
「は?」
何を言い出すんだコイツ。
「でもなぁ、ツメが甘いというか、、、指紋とか残ってんだよ。アダムのサーバーにアクセスして、身元称号するだろ。後は24時間監視して、事あることに、行動ログをメールしてあげるんだよ。」
「怖いわ!!」
いつの間にか目の前に身を乗り出してる少年。
目付きがおかしい。
「ダメだよ。那智。愛には愛を。ちゃんと返さないと。ねえ。」
「わ、、、」
思わず身を引いてしまう。
「でもな、すぐ学校、来なくなるんだよ。寂しいなあ。」
ションボリ席に戻る少年。
「お前か!最近やたら増えてる不登校者の原因は!!」
絶望する那智。やっぱり、まともじゃない。いや、わかってたけど。
今の話、どっから突っ込んだらいいのか混乱しそうだ。
何とか席に戻る。
「それ、嫌がらせだろ!どっちも!」
「違うよ。那智。愛と増悪は同じものだよ。表裏一体。変わらないんだよ。」
「近寄るなああああ!!」
身を乗り出して来ると、マジ怖い。
後ろにひっくり返りそうになる。
それに、しれっとトンデモない事を言っていた。
「アダムのサーバーって!」
詳しくない自分でもわかる。アダムにハッキングなど絶対にできないのだ。それで無ければ、世界中のセキュリティとして、普及などしていない。
「破れるんだよ。表層ならね。最近、裏口を仕掛けられたんだ。」
面白そうに笑う少年
「どうする?那智。」
「報告するに決まってんじゃん!その気になったら、あんた犯罪やり放題って事でしょ!!」
「ほむ〜〜〜〜、」
イスに深く寄りかかる、しん。
「そこまで便利じゃね〜けどな。那智。お前失格な。」
「なにを、、、、」
硬くなる少女。意味不明だ。
「なんでこんな話、してると思ってんだ。風紀として、オレの使い方わからんの?
犯人探し、データ照合、何でもござれだぞ。」
「手を組めと、、、、」
「ほれ、ほれ、優れたリーダーは全体の利益を考えにゃーー」
ガタッ、
一瞬で宙吊りになっている、眼下にブラウンのセミロングが揺れる。
「バカにすんなああああああああああああーーーーーーーーー!!!
私ら風紀はそんなん無くても!そんなの、、、誰一人だって、必要なんて思うもんか!!!」
マアそうだろう。この少女にそんな腹芸ができるとは、誰も思わないさ。
だからだろう、彼女がみなに愛されるのは。
うらやましい話だ。
そして何故オレは、ホッとしているのか。
「悪かった。ゴメンって。那智。」
「、、、、、、」
ストンと席に戻される。
「今度言ったら、、、、ぶっ飛ばす、、、」
困った。うつむいたっきり、動かなく少女。
何をやってるのか。
好きな子にチョッカイかける、アホな小学生か。
「なんか飲む?」
コーヒーくらい奢るべきだろう。廊下に自販機があった。
コクリとうなずく少女。
風紀委員室を通らずに廊下に出て、コーヒーを買う。
ため息が出る。ホントに何をやってるんだか。
閑話休題
「しかし何だねー。最近の事件。切れやすい若者っての。物騒だねーーー」
「ウン。」
「でも、おかしいよね。いくらなんでも。」
「うん。」
「なんか、原因あんのかな〜。ね〜野川さん。」
「知らないわよ!」
「こっちだって、色々調べてるけどね。」
やっと普通に話してくれる、那智。
「瀬里奈副会長じゃあるまいし、こんな大規模な精神操作できる人、いないし、何が目的かもわからない。」
「ん?一人いるぞ。」
「誰?」
「リンだよ。そんな強制テレパスがあったら、一発でわかるだろ。」
左右に揺れる、フワリとしたブラウンのセミロング。
「リンにも感知できてないの。だから、能力かの断定もできないし、、」
変な話だ。
原因が無ければ結果はでない。
別に名探偵でなくてもわかることだ。
「校内のテレパス能力者は調べてんだろ?」
「アルカ全域レベルでやってる。」
ガクリと天井を見上げる少女。
「正直、手詰まりなんだ。このままじゃいずれ、、、、」
片腕で顔をおおう。
いずれ、取り返しのつかない事故が起きる。
やっと、彼女の状態がわかった様な気がする。
「で?どーすんの?」
「どうしよう、、、、どうしたらいいの?しん、、、」
天を仰いだまま絞り出される声。
「それでいいんだ。」
「、、、、、?」
ポカンとこちらを見る少女
「人に聞けって事だ。他の風紀でも、姉貴だっていい。お前はオレの嫁だ。もちろんおれでもいいって話だ。」
「よ、よ、ヨメ????」キョドル那智
「ネットスラングだ。聞き流せ。」
「ともかくだ、一番強いからって、誰かに頼ってはいけないってこたねーんだ。それとも何か、お前の周りはそんなに頼りない連中ばっかか?」
「違う!私は、、、、そんな事、、、、!みんな、、、、」
意地の悪い言い方だ。しかし、一人で何でもできると思うのは、やはり傲慢な事だろう。
周囲に恵まれた彼女は、特にだ。
期待され、期待に応えて、なまじ応えられるから、さらに頑張って。自分でも気付かずに無理を続ける。
部室でダダをこねる少女。
そうでなければ、ああはならないだろう。 知らないけど。 多分。
「わかったわよ、、、」
言われてみれば、思い当たる様な気がする。
心配そうな、姉の、みんなの顔。自分は強がってばかりだ。
「言いたい放題言って、、、、覚えてろ、、、、」
何かブツブツ言っている。
「あ?あんだって?!」
「すみません!反省します!ごめんなさい!」
ペコリとおじぎする那智。なかなかに、いい気分だ。
「それで?どうしたら?」
「さあ?」
ヒロインがしてはいけない顔して、胸ぐらを掴む少女。
怖いから。やめて。
しょうがないので、考えてみる。
「事件が、起き始めたのがいつかわかるな。それを境に何か変わった事は?」
「ん、、、、、、、、、」
タブレットを操作する那智。
「どんな細かい事でもいい。桜の開花でも、ネコの出産でも。」
「ああ!」
指を鳴らす。
「リンが子猫を飼い出したんだ!、、、、なんてね。」
「ネコ、、、?」
「ほらほら〜〜〜ヌイグルミみたいでしょ〜〜〜」
タブレットの画像データをスワイプしていく。
「お前な、、、、」
「ジョーダンだって!」
「これ、イリオモテヤマネコだぞ。天然記念物。」
「え?なんか、まずいの?」
「ちょい、かせよ。」
らちがあかんので、タブレットを奪う。
「なるほど、ちょうど、あのバイト先が潰れた翌日からじゃん。」
「返せ!」
あわてて、風紀の備品を取り戻す那智。
「ネコはともかく、生物化学センターのデータを洗い直した方がいい。あそこ、違法能力開発もやってたんだ。怪しすぎだろ。」
「う〜ん。」
「知り合いが四課に、いるんだろ?」
牧さんの事だろう。確かに色々、手詰まりなのだ。ダメ元で聞いてみよう。
「わっかた。聞いてみるよ。ありがと。しん。」
「あ、、、ああ。」
やはり、素直に笑顔を向けられると、ときめいてしまう美少女だ。
「それと、それにオレのアドレス入れといたから。進展あったら連絡しろよ!」
タブレットを抱く少女
「え、、、、メール、、、とか?」
「何でもいいから!今回は全面協力してやる!!パソの弁償!ヨメ達のデータの仇!
タタじゃおかねーーーーーーぞ!!ウハハハハハーーーーー!!」
なぜか、おとなしくなってしまう少女を残し、笑いながら去っていく、しん。
ガチャリ、
と本室に続くドアを開けると、雪崩をうって、風紀委員達が飛び込んで来る。
「だ、大丈夫ですか!野川さん!」
「那智!顔赤いよ!何かあった!」
「な、何でもない!」
「ほら!ファブリーズ!!」
てんやわんや、である。まあ、仕方ないだろう。ただの事情聴取といっても、相手は、、、
「ちょっと!待てコラ!まだ話が!!」
みなに囲まれる、少女に手を振る。
もういーだろ。オレは感動しているのだ。
相手は
前回とっ捕まったトンデモない犯罪人だ。
それでも、彼女は、こんなおかしな人間を、拒絶はしないようだ。
それは多分、とても幸運な事だと思う。
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