第9話 最強魔王、認識を変える
「――というわけで、そろそろ女を相手に戦えないことを誤魔化すのが精一杯でな」
「それを何故私に相談なさるのですか!? 私、敵ですよ!?」
地下牢にやってきた俺は、マリアリッテに相談していた。
マリアリッテは目を瞬かせて驚いている。
地下牢は俺の命令で最低限の設備を整えさせているため、あまり不便はないはずだが、やはり疲労は溜まるのだろう。
ツッコミを入れるマリアリッテの目もとにはうっすらとクマがあった。
ベッドをもう少しいいものに変えてやろう。
などと考えていると、マリアリッテは俺に掴みかかってくる勢いで巻くし立ててきた。
「聞いているのですか、魔王!!」
「んあ? あ、うん。聞いてた聞いてた」
「それは聞いてない人の台詞です!!」
なんだろうな、マリアリッテって実家で飼ってた全く懐かない猫に似てるんだ。
可愛い。
「で、お前はどうすれば俺のおっぱい狂いを直せると思う?」
「私に聞かれても困ります!! というか、配下の皆さんに知られたくないんですよね!? 私がアルメナさんに話したらどうするつもりなんですか!!」
「平気平気。言っても誰も信じないだろうし、そもそもマリアリッテはシスターだろ? 人の悩みを大っぴらにしたらダメじゃん」
「うっ!? な、なぜそこまで詳しいんですか……」
元人間だからね。
この地上でもシスターがそういうものという常識が通用するかは分からなかったが、適当に言ってみたら当たるもんなんだな。
マリアリッテは呆れたように、あるいは疲れたように溜め息を吐く。
そして、真剣に俺の悩みについて考え始めた。
「そう、ですね。殺すことができないんですよね?」
「ああ、そうだ」
「なら発想を変えて、殺さないようにするのは如何でしょう?」
マリアリッテは名案と言わんばかりに手をポンと叩いた。
「殺さないように? どういうことだ?」
「殺すのではなく、追い払うとか、倒すとか、そういう感じで戦うんです」
「なるほど。さりげなく人類に被害が出ないよう誘導する交渉術、流石だ」
「それほどでも……はっ!! い、いえ、今のは違いますから!!」
慌てて弁明するマリアリッテ。
しかし、彼女のしてきた提案は一考の余地があるものだった。
「たしかに殺そうとするから身体が拒絶反応を起こすんだもんな。マリアリッテの言うように、一度殺さないで追い払うつもりでやってみるか」
「え?」
「ん? 何を驚いている?」
「い、いえ、まさか本当に採用するとは思っていなかったもので……」
「元々ダメもとで相談に来たからな。何か良さそうな案がないか聞いたら、思った以上によさそうな案が出てきた。なら試してみるべきだろう」
思い立ったがなんとやら。
早速試したくなっていつ誰が俺の首を狙ってきてもいいように大広間へ足を運ぼうとして――
地下牢の隅に何かが落ちていることに気付く。
「なんだ、これは? ペンダント?」
「そ、それは!!」
テーブルから何かの拍子に床に落ちたでろうペンダントのようなものを拾い上げると、マリアリッテは慌てて俺から奪い取った。
「む、すまんすまん。大事なものだったか」
「……も、申し訳ありません。母の、形見なのです。どうか没収だけは……」
「別に取り上げたりはしない」
「え? よ、よろしいのですか?」
「取り上げる必要がないからな。それを使って脱走でも考えているなら別だが」
「そ、そのようなことは!!」
「だったら構わん。大事にしろ、そういうものは」
俺がそれだけ言い残して地下牢から立ち去ろうとすると。
マリアリッテが小さな声で言った。
「ありがとう、ございます……」
さて、肝心なマリアリッテの提案だが。
彼女のしてきた殺さずに追い払うつもりで戦うという作戦は効果があった。
戦闘中におっぱいが気になってポカをやらかすことはままあったが、ダメージを一切与えられずに負けることはなくなった。
……稀に無意識でおっぱいを揉みに行ってしまうことはあったが……。
それでも女を相手に戦えるようになった。
最近ではおっぱいを揉ませてくれるなら命までは取らないと言ってタダ揉みまでできるようになる始末。
最高っすわー!!
そうこうしているうちに半年が経ち、アルメナからの小言が増えてきた頃。
魔王軍は再び連合軍と真っ向から激突することになった。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「マリアリッテは清楚。で、チョロい」
バル「清楚チョロインいいよね」
「マリアリッテかわいい」「落ちたか?」「清楚チョロインは最高」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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