第8話 最強魔王、相談する





 俺は魔王城に戻り、アルメナに連合軍の一部を除いて殲滅したことを伝えた。



「流石はバルディン様にございます」


「あ、ああ」


「……何か気になることでも? 顔色が優れないようですが……」


「……も、問題ない。大したことではないからな」



 アルメナに相談しようか少し悩んだ。


 しかし、おっぱいのせいで負けたとか情けない話を配下にできるわけがない。


 そう思っていたところでアルメナが言う。



「大したことではないならば、尚更私がどうにかすべきことです」


「え?」



 俺は思わず首を傾げてしまった。



「バルディン様は大局を見据え、我らを勝利に導く御方。であれば、バルディン様の言う些事を取り除くはメイドたる私の務めです」


「……むぅ」


「どうぞ、気になることがあるなら私に。全身全霊を以って障害を取り除きます」


「そう、だな……」



 ぶっちゃけ判断に悩む。


 アルメナとの付き合いは長いから、相談したら真剣に解決策を考えてくれるだろう。


 人間だった頃の記憶を思い出して乳狂いになってしまったことは隠し、悩みを打ち明けてみるべきか。


 負けたことが露呈するのもまずいため、そこも上手く言葉を濁して……。


 俺はアルメナに事情を話した。



「ふむ。おっぱいが気になって戦いに集中できず、不要な怪我をしたと。……結構大した問題なのでは?」


「だから言うつもりはなかったんだ」



 アルメナが何故か微笑む。



「では、バルディン様の信頼に全力でお答えせねばなりませんね」


「……笑わないのか」


「少し前から様子がおかしかったですし、何かあるだろうとは気付いていました。支配者たるバルディン様が安易に相談できないと考えていることも」



 うちのメイド、察しがいいな。


 下手したらそのうち俺の前世が人間だったことまで察せられてしまうのでは……。


 いや、それは流石にないか。


 などと考えていると、アルメナが首を傾げて疑問を口にした。



「しかし、なぜ急に女性の胸を気にするようになったのでしょう? 不老不死であるバルディン様は以前から色事に興味はなかったはずですが」


「そ、それは、分からん……」



 いきなり核心を突いた疑問をぶつけてきたな!!


 心臓の鼓動がバクバクしているのを感じながら、俺は知らんぷりする。


 本当に心臓に悪い。



「……まあ、悪いことではありません」


「む」


「支配者は得てして子孫を残すもの。むしろ今までがおかしかったのです」


「そ、そうか。言われてみれば、そうかもな」



 そうしてようやく本題に入る。



「で、どうすればいいと思う?」


「……慣れるしかないのではないかと」


「慣れる?」


「はい。勝手な推測ですが、女性の胸が気になるのであれば、それが当たり前のものになればいいのです」


「なる、ほど?」



 淡々と話すアルメナ。


 しかし、何故だろうか。あまりにも治療法がパワープレイな気がしてしまう。



「しかし、慣れると言ってもどうやって……」


「簡単なことです。揉むのです。おっぱいを」


「ぷふっ……あ、ご、ごめん。真面目な顔で言うから面白くって……」


「それを言うなら、私もおっぱいが気になって戦闘に集中できないというバルディン様の悩みを笑いたいのですが」


「いや、ごめん。本当にごめん。笑わないで」



 今のは完全に俺が悪いな、うむ。



「話は聞かせてもらったよ、バル様!! 超絶可愛いボクの出番だね!!」


「うおっ、びっくりした」



 急にクリューネが現れて、ニヤニヤと楽しそうに笑っている。


 これは何か企んでいるな……。


 俺が若干警戒していると、クリューネはいきなり抱き着いてきた。


 柔らかいおっぱいがぐいぐいと押し当てられる。



「お、おい、クリューネ」


「えいっ、うりうり~。ボクのおっぱい、どぉ? ふわふわで柔らかいと思うんだけど」



 たしかに柔らかい。



「バルディン様、微力ながら私も協力致します」


「お、おお……」



 正面からはクリューネ。


 そして、背後からはアルメナがおっぱいを押し当ててきた。


 ちょっと息子が大変なことになる。


 しかし、なるほど。たしかにこれならおっぱいを克服できるかも知れない!!



「そう思っていた時期が俺にもありました……」



 あれから何度か、腕試しや英雄願望持ちの冒険者が魔王城まで突撃してきた。


 ほぼ全軍を地上攻略のために出撃させていたこともあり、また魔王的プライドにかけて勇敢な奴にはできるだけ一人で応対したのだ。


 男ならまだいい。


 女がいても男がいるならそいつを見せしめにすることで戦意を挫けるからな。


 しかし、たまーに女だけの挑戦者が現れる。


 そうなったらもう殺せないので、上手いこと誤魔化してアルメナやクリューネをけしかけているのだが……。


 最近ちょっと、女との戦いを避けていることがバレ始めてしまった。


 どうしたものか。


 魔王軍に相談する相手もいないため、俺は何を血迷ったのか地下牢で捕えている人間の少女――マリアリッテに相談するのであった。






 

―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「話の展開が思いつかないから短めで終わらす」


バル「え?」



「パワープレイ治療で草」「クリューネかわいい」「短めなのか……」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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